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第15話

最近ルールを守れていない方々がいます。

ちゃんとルールとマナーを守って読んでください

第15話


いきなり側近登場ってひどくない!!


俺の予感は的中してしまった。ただ、こいつならあの可能性があるからまだマシではあるか……


「なぜ、あなたのような大物がここにいるのですか」


エリーゼが情報整理のためかリデルに聞いている。


「情報とは重要なものであるのはご存じでしょう。異界より勇者が召喚されるという噂があったのでどんな人物なのか拝見しようと思いましてね。この森で騒動を起こせばやって来ると思っていましたが、予想よりも早く来てくれて助かりましたよ。私が来た理由は単に、私の方が動きやすいからですよ」


「なら、なぜ兵士達が来たときに襲撃をしなかったの……言っては何だけど、勇者が目的なら兵士達を襲った方が城にいる勇者を呼びやすくなったはずよ」


リリーが言うようにひどい話だが、勇者を拝みたかったら城を襲撃すれば確実に会えるだろうし、それができるほどの実力の持ち主だ。わざわざ、まわりくどいことをする必要はない。


「それはそうなのですが、もし兵士の皆さんに手を出してしまうと私を倒すために1中隊いや、それよりも大勢の方が押し掛けてくるでしょう。そうなると後始末するのは大変なのですよ。私は自然が好きでして森を傷つけたくなし、お城に乗り込んで確認しようにも、城の周辺には感知魔法が張られてまして、バレないようにするのも一苦労で、条件次第ではできないんですよ。その点、こうやってここへ来る旅人や冒険者達を消し去ったり稀に証言者を残したりした方が噂を聞きつけた勇者だけをおびき寄せますし、現にこうやって勇者が来てくれたじゃないですか」


リデルが両腕を広げ楽しそうにそう言うがこっちは全然楽しくねーよ!


「あいにくと俺は異世界人だが勇者なんかじゃないぜ。勇者はまだ城で修行中だ」


「そうですか?まあ、異世界人に変わりないのなら収穫ありですよ。あなたの実力を垣間見ることができたのですから。それに私の見立てでは、循環している魔力から判断すると魔王様以上であるから、これ以上の確認は私の身が危ないですからね」


循環している魔力というのはおそらくレジスト用の体を覆っている魔力のことだ。人には感知できないものだが魔人ならできるのか。魔法を防御するにあたって、魔法どうしぶつけ合う他に体から発せられる魔力により相手の魔法を相殺する。やり方はさっき言ったように魔力をオーラのように体に纏わせる。これは常時行われているし、意識すれば魔防を上げることもできる。しかし、これでは魔法は相殺できても魔力差が大きくないと衝撃を抑えきれず吹き飛ばされるのであまり多用できない。もう一つは魔力を放出させ盾を作る方法だ。これはシールド系の魔法とかを思い浮かべてもらうとわかりやすい。この方法はやり方によってはオーラよりも少ない魔力コストで行うことができるし自分以外の仲間を守ることもできる。当然、魔防を集めるので、それを貫かれると大ダメージをくらってしまう。どちらも、まだ試したことがないからちゃんとできる保証もない。たたかうにしても、攻撃魔法も使ったことがないから周囲にどんな悪影響が出るかわからん。


「なら、とっとと退散してくれ。お前がおとなしく魔王のところに帰るなら何もしない。お前と殺し合う(やりあう)とこの森がなくなってしまうからな」


「この男を見逃してしまっていいの!?倒せるのならここで始末するべきよ」


リリーがそう言うが俺は首を振る。


「残念ながら、どうせこいつは分身だ。本体は魔王のところにいるだろうから、こいつを殺しても本体はピンピンしてるよ」


リデルの能力は分身を作りだすことができる。動きやすいと言っていたから分身を使っていろんなところに散らばって情報収集をしているのだろう。分身だけあって本体よりかは弱いが、それでも普通の魔人よりも強い。


「ご名答、私は分身です。私が死んだら全ての情報が本体に伝わりますからより早く情報が渡りますね。それと私が死んでしまったら本体にも多少の痛みを伴いますので案外平気ではないんですよ。しかし、どこでそのことを知ったのか気になりますね。でも、教えてくれるはずもないし、聞き出すしかありませんかね」


リデルは目を尖らせ殺気を放った。そのせいで空気が一転し、俺達は息を呑んでしまい、一触即発な状態になった。


「そうか、なおさら手を出すわけにはいかないな。お前に手を出して魔族の敵対対象になんかなったらメンドイ。俺は適当にこの世界で生きていくだけで魔王退治なんかやりたくねーよ。あんな王さんの言いなりなんか絶対になりたくないしな」


せっかくリデルとの戦闘回避できそうだったのに――この世界に来てまだ4日目だぞ!?いきなり大ボスとか、最速クリアやってんじゃないんだぞ。あいつの言う全ての情報が痛みや恐怖といったことも含まれるのであれば、思いつく限りの拷問をしてから殺すのもありだ。しかし、その確証がない。多少と言っていたことが本当なら、逆効果になる。だったら、ここでの戦闘は相手に情報をあたえることになるから回避が一番の正解のはずだ。


しばらくにらみ合いになったが、リデルの方が折れてくれた。


「そうですか。お嬢さん方を盾にするなど手段を選ばなければ、聞き出せるとは思いますが、そんなことはしたくありませんしね。では、ありがたく退散させていただきます。そうでした。最後に君の名前を聞いておきたいのですが」


にこやかな顔に戻してそう聞いて来る。案外簡単に回避できたな……もう少し話し合いが続くかと思ったんだが、気にしても仕方がない。正直、名乗るなんて馬鹿げているが、今は名乗った方がよさそうだ。


「吉晃だ。名前を教えたから俺に面倒をかけるなよ」


「ヨシアキさんですね。覚えておきましょう。それではヨシアキさん、それにお嬢さん方またいずれ」


リデルが翼を広げ空高く飛んで行った。姿が見えなくなりようやく安全圏になってふたりは臨戦態勢を外した。


「依頼は達成したし、とっとと街に戻ろうや」


「そうね、早く帰りましょう。あんな大物と出会って気疲れしちゃったわ」


「無理もありません。あれほどの実力者を前に、威圧に臆せず普通に話していらっしゃったヨシアキ様はともかく、わたくし達のような一般人にはその場に居合わせるだけでも辛いことです」


王女と王女専属メイドが一般人ってなんだよ――そりゃ戦闘においては、俺は化け物扱いされるかもしれんが……


「帰るなら試してみたいことがあるからちょっと肩を触るぞ」


「何するつもりか知らないけど、変なことではないわよね」


「事が発生次第、容赦なく手を出させていただきますが、よろしいでしょうか」


昨日のあれはなんだったのか、ふたりからそんなことを言われる。


「んなことしねーよ。じゃ街まで飛べるか試すぞ」


そう言って、ふたりの肩に手をのせてワープを使ってみた。最初は別の大陸まで一気に飛べるかな?なんて思い使おうとしたが、ゲームみたいにアイコンなんてないから場所を思い浮かべるしか方法がない。どんな風景だったか、いちいち細かく覚えていないからそんな状態では使えないと思い今まで使わなかったが、今日はちゃんと覚えているから大丈夫なはずだ。


「無事とうちゃーく」


問題なく森から街の入り口にワープできた。これからは拠点になりそうなところくらいは覚えるようにした方が便利だな。


「私達――森にいたはずよね……」


「はい……さきほどまでユルカの森にいましたが、ここはどう見てもユルカの街です」


ふたりは疲れているせいでもあるだろうが、驚きを通り越して呆れている。


「もう疲れたから何も突っ込む気になれないわ。時間はあるけど、急ぎの要件でもないから今日はもう宿に行って、マスターのところは明日にしましょう」


「そうですね。朗報ではありますが、逆に早すぎて信憑性がないので明日でも問題ないでしょう。明日でも早すぎるところではありますが……」


それもそうだよな。昨日の今日で魔人相手に『終わりました』なんて信じてもらえないだろうし、明日なら聞かれたとしても、『野営中に遭遇した』とでも言えば、それなりに信憑性が出てくるだろう。


「そうだな。俺もそんな気になれないし、明日でいいだろ」


「それじゃ。宿に向かいましょう」


こうして無事、魔人との接触を終えた。

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