第14話
作者はトウフメンタルのド素人です。
このことを忘れずにルールとマナーを守って読んでください
第14話
知らない天井……でもないか。
気がつくとベッドに寝かされていた。外は明るく朝の時間はとっくに過ぎているだろう
「おはよう、って時間でもないわね……あの後、全く目を覚まさなかったけど大丈夫?今、エリーゼは食料の買い物に行ってもらってるわ。それとエリーゼにあのことは禁句だからそれに触れない限りいつも通りになっているわ」
声のする方へ向くとリリーが心配そうにしてくれた。起きてすぐにエリーゼがいたら俺はおびえていただろう。エリーゼの逆鱗には絶対に触れません。
「たぶん大丈夫だ。森に入るんだったな。戦闘になっても問題なく動ける」
俺はそう言いつつ立ち上がって動けることを見せつけるように力こぶをつくった。
「よかったわ、でも無理はしないで。今日のところは様子見だから、明日以降動けませんなんてならないようにしてよ」
リリーの言うとおり、1日目に無理に動いてダウンしたら意味ないな。
「お嬢様、ただいま戻りました。おや、ヨシアキ様もおはようございます」
「お、おはようございますエリーゼさん。昨日の後遺症もなくいつもと変わらぬ元気なわたくしでございます」
昨日のせいで口調がおかしくなってしまった。それについ、昨日の話題を出してしまった……
「おかしなヨシアキ様ですね。わたくしのことは呼び捨てで構いませんし、謙るようなことをする必要はございません。それに昨日何かありましたか?昨日は何事もなくお話をして眠っただけだったはずですが」
エリーゼは昨日のことをなかったことにしている。触らぬ神にたたりなし、もう下手する前に終わらせよう。
「いや、起きてすぐだったから夢と現実がごっちゃになって変なことを言っただけだ。それよりも準備ができたのなら今から森へ行こう」
そそくさと扉の方へ移動するが、
「あなたまだ、ご飯を食べていないでしょ。ちょっと早い昼食になるけど今から下で食べて、それからすぐに行きましょう」
「そうでした」
「ヨシアキ様は随分と気合が入っていらっしゃるようで」
リリーがコントのように突っ込んでくれ、立ち止る俺。エリーゼはほほえましい顔をしているので、たぶん昨日のことはもう大丈夫だろう。
~~☆~~☆~~
昼食を終え、宿から森の前に来た。
「これから森へ入るけど、確認したように、移動中、前はヨシアキ、後ろはエリーゼ、横は私が担当。戦闘は前衛がヨシアキで後衛は私とエリーゼ――といっても基本的には全員前衛ね」
「問題ないが俺が先頭でいいのか?迷子になるぞ」
地理に全く詳しくない俺が先頭はちょっと不安になる。
「問題ありません。道なりに進みますし、分かれ道の場合はお嬢様がご指示を出しながら進みますので、ヨシアキ様は前方からの敵に注意を払ってください」
「そうか、それにしてもそんな装備で大丈夫か」
ふたりの格好は変わらず装備はリリーは剣、エリーゼはナイフ2本のみ。鎧や兜、籠手などの防具をいっさい身につけていない。
「ええ、この服はミスリルで編みこんであるからそこらへんの鎧より丈夫だし軽いのよ」
「わたくしのメイド服も同じ素材で、軽くて丈夫な上に汚れにも強いと大変高価なものですが便利な服でございます。ヨシアキ様の服もそうではないのですか?」
なんだ、その超便利な防具は!!ミスリル系防具があるのはわかるがミスリルで服を作るってゲームになかったぞ!?
「――帰ったら店を紹介してくれ。すぐに作ってもらう」
「かしこまりました。王国御用達の店で大変高価になりますが、ヨシアキ様なら問題ございません。依頼が終わり次第、ご紹介いたします」
「それじゃ、気をつけて行きましょう」
そんな話の後、しばらく森の中を歩いているが全くモンスターに出くわさない。
「モンスターの数が多いんじゃなかったのか」
「報告では数が増えたということで兵士達が多少の狩りをしながら帰還したので、魔物の数が減ったのではないのでしょうか」
俺の感想にエリーゼが答える。
「それならいいのだけども、魔人がいるかもしれないと思うと油断はできないわね」
リリーの言うとおり魔人と出くわすかもしれないんだよな。どっかのゲームで放置自動レベルアップ対応に倒せない敵が出るシステムがあった気がする。
「どうやらお出ましのようです」
エリーゼがそう言うと草影から何か飛び出てきた。
「「「 ピギィー 」」」
ファンタジー定番モンスター、ゴブリンだ。ブタのような顔つきで、こん棒を持っている。
「ゴブリン3匹か、――ちょっと俺の実力がどれくらいなのか試させてくれないか」
人間相手に全力でやると殺してしまいそうだったからマルサスの時は攻撃を当てることができなかったが、モンスターなら気にすることなくやれる。
「あなたは魔物との戦闘ははじめてなのよね。問題ないとは思うけど、すぐにフォローする準備はしとくわ」
「ヨシアキ様、下位の魔物とはいえ、初陣ですのでご注意を」
「じゃ、頼んだ」
剣を構えてゴブリン達との距離をはかる。
「ピギャー」
1匹のゴブリンが接近してこん棒を振り下ろしてきた。ゲームじゃない、はじめての命のやり取り。足がすくむことはないし、ゴブリンの動きはハッキリ見える。俺はゴブリンの攻撃をかわし、一度距離をおく。今度は3匹まとめて襲いかかってきた。3匹の攻撃でもちゃんと見える。見えているなら反応できるはずだ。そう信じるんだ。俺はゴブリン達の攻撃を紙一重でかわすように心掛け問題なく実行できた。
ゲームでやっていた時と同じように動ける。これなら問題なくいける。そう確信して俺は素早くゴブリンに近づき、3匹を斬りつけた。
はじめての魔物退治は、問題なく戦闘終了と言いたいが、力を入れ過ぎたか、胴体真っ二つになってしまっている。切り口から見えるグロもののせいで吐き気がした。それにゲームではなかった腐臭も漂ってくる。
「さすがヨシアキね。ゴブリンを真っ二つとは、すごいちからだわ。なんかようすが変だけど大丈夫?」
「お疲れ様です。ヨシアキ様、顔色が悪いようですが大丈夫でございますか」
ふたりが心配してくれるが全然大丈夫じゃない……おぇ
「ヨ、ヨシアキ様!!」
~~☆~~☆~~
「うへぇー。気持ち悪りぃ」
あらいざらい終えたが、まだ気分がよくらない。
「大丈夫?」
「お気分は戻られませんか」
心配そうに俺を見ているが、なんでこのふたりは大丈夫なんだ?
「なんで、あんた達は平気なんだよ」
「これでも魔物と戦うことは何回もあるわ」
「専属は護衛の役割も持っていますので、魔物や人との戦闘経験は豊富でございます」
随分と頼もしいことで。ちょっとステータスあげるから、そのかわりその経験値を俺にわけてくれ――
そんな願望を抱きながら調子を整えていると、
「そこの君、大丈夫?」
突然、男の声が聞こえ、俺達は周りを見渡すが、どこにも見当たらない。
「こっちですよ、こっち。木の上です」
そう言われ声のする方向の木の上を見ると一人の銀髪の男がいた。ただ、それを普通の男と言っていいのかわからない。背中にはコウモリの翼がついている。
「よっと」
男は翼を広げ着地した。その光景から、あの翼は飾りではなく本物であることがわかる。男はこちらに近寄ろうとする。
「魔人!?」
リリーとエリーゼが戦闘態勢をとった。
「いやー、ゴブリンをショートソードで切り裂くなんてすごいですね」
のんきにそんなことを言っているが、こっちはそれどころじゃない。銀髪碧眼のコウモリのような翼を持つ20代くらいのイケメン魔人って俺の予想が正しければ最悪だ。
「我が魔力にて、敵を撃つ!ストーンショット」
「我が魔力にて、敵を撃つ!アクアショット」
鋭利な岩石と水流が勢いよく魔人に向かう。水の勢いで岩のスピードを上げる。ありきたりな連携だが有効な手段だ。しかし、魔人は翼でふたりの連携魔法を空高く弾き飛ばした。
「初級魔法とはいえ、いとも容易くはじかれるなんて……」
ふたりの顔に焦りが見える。ふたりの魔法じゃ太刀打ちできないと感じてしまったのだろう。
「手荒い歓迎ですね、お嬢さん方。まあ、攻撃されるとは思っていましたが、これ以上のオイタはいけませんよ。もしするつもりならこうです」
魔人は手を銃の形を作り、指先から魔光弾を放った。これは魔族だけが使える能力で、魔力をそのまま弾にして打ち出す技で、使う者によって威力が大きく変わる。当てるつもりはないだろうが、万が一と思い、とっさに剣でリリー達の方へ放たれた魔弾を地面にたたきつけた。魔弾は本来の軌道から大きく外れ、地面を貫き地中深くへと消え去った。
「やはり、あの程度では弾きますか……随分といいショートソードを持っているんですね」
できるかどうか不安だったが、できてよかった。魔人は悔しがる様子もなく逆に楽しそうに言ってきた
「あなたは何者なのですか」
エリーゼが魔人に聞く。
「これは失礼。はじめまして、私は魔王ザーク様に仕えるリデルと申します。魔王軍では、3将軍、知恵のリデルとも呼ばれています。以後お見知りおきを美しいお嬢さん方」