第10話
第10話
エリーゼに連れられ、お目当てのギルドに到着した。
「ここがギルドになります。受け付けはあちらのようです」
朝一ということで、まだほとんど人がいないようだ。
「リリー達も登録するのか?」
「ええそうよ。さすがに国の身分証明を使うと王女だとバレるし問題になるから」
後半の方はさすがに聞かれるとまずいからか耳打ちしてきた。
「まあ、自分が王女だなんて公表したら厄介事しか起こらんだろうしな」
俺も同じように耳打ちで返事をした。ばらして厄介事に巻き込まれるのは嫌だし。
「おはようございます。冒険者ギルド、ユルカ支部へようこそ」
朝から元気にギルドの受付嬢がそう言ってくる。
「ギルドに登録をしたいのだが」
「はじめての方ですね。ではご説明いたします。ギルドは世界各国にあり、その中でも冒険者ギルドは討伐や採取、護衛や雑務などの依頼を引き受ける場所です。冒険者ギルドに所属する人にはSからFにランクが付けられ依頼をこなすことでランクを上げることができます。依頼はランクごとに受けられる範囲があり、自分のランクの1つ上までの依頼受けることができます。また、チームで受ける場合はメンバーの最下位ランクの1つ上となっております。ランクは自分と同等のランクをこなすことで1ポイント、1つ上をこなすことで2ポイント、合計で20ポイント稼ぐとランクがあがります。しかし、自分のランクより低いものはポイントが入らず、依頼を失敗するとマイナス3ポイントとなり、自分のポイントが0を下回るとランクが下がってしまいます。また、失敗が3回ごとに一定期間の受付拒否となります。それと、連続で3回の失敗、ギルドでかばうことのできない大きなミス、または3カ月間依頼をこなさないと冒険者ギルドから除名となりますのでご注意して下さい。何か他にご質問はございますか?」
異世界の物語でよくある話だな。
「特にはないな」
「それでは、カードを発行いたしますので、こちらに必要事項をご記入していただきこの宝玉に血を垂らして偽造していないか確認させていただきます」
「では、ヨシアキ様の分はわたくしが代筆をいたします」
さっそく、エリーゼにお世話になる場面になった。俺は用意された針で指を軽く刺し血を垂らす。ふたりも同じようにして問題なく終了。
「3人とも新規の方で問題ないようですね。カードには発行に銀貨20枚必要ですので、もしお手持ちがなければ半年以内にお支払いしていただきます。また、再販には金貨1枚かかりますのでなくさないようにご注意ください」
なんだ、銀貨20枚程度か問題…………あったわ。俺の持ち金、白金貨5枚しかない。前にも思ったように、ゲームなら、なんの問題もなく使えるが、こんなところで白金貨なんかだしてもお釣りがなくて受け取れないと言われてしまう
「これはわたしと彼女の分です。あなたの分は私が立て替えましょうか?」
リリーがそんなことを言ってくれるが、すぐに返せるといっても借金をするのは抵抗がある。
「いや、いい。それよりここで魔物の素材を引き取ってくれるのか」
「はい、依頼以外にも魔物の素材を扱うのが冒険者ギルドの役目ですし、討伐の報告方法が魔物の指定された素材というのもあります」
よし、なら俺の手持ちの素材を売って金にするか。
えーっと、エンシェントドラゴンの爪、フェンリルの牙、麒麟の角……
ダメだ、高級素材過ぎて買い取り拒否されそうだ。リストコンプしたから邪魔だからってほとんど捨てたせいで下位素材がみつからない。かといって消耗アイテムなんか出したところで道具屋に売りに行けと言われるのが落ちだ……
ん?これならギリ下位素材だから問題ないかな。
「すまないが、これを買い取ってくれ」
そういって、俺はワーウルフの毛皮を出した。
「こちらですね。はじめて見る素材です……わかる者に確認いたしますので少々お待ち下さい」
イスに座ってしばらく待っていると、白ひげを生やしたおっさんが俺達の前に来た。
「おめえがあの素材を持ってきた新人か」
お偉いさんか?おっさんはいかにも厄介事を持ち込みやがってみたいな顔をしている。
「そうだが何か問題あるか」
「ああ。こいつはヘイムダルの魔物で群れで生活していやがるから魔物自体はDランクだが、実際はCランクぐらいだ。そして、ギルドにも所属していないし、おめえの名前だが聞いたこともない。だからギルドとしてでは買い取ることができん」
「どういうことですの」
リリーが不思議そうな顔をして質問した。
「理由は『わからねーのか?にーちゃんがぬすんだものを売ろうとしているって疑われてんだよ』またお前らか、朝っぱらから何の用だ!」
声が聞こえる方に振り向くと小悪党の下っ端みたいな、でこぼこコンビがにやけながら近づいてきた。
「そうつれねーこというなよマスター。マスターの仕事を片付けてやろうとしてんだよ。ほら、アンちゃんそいつを俺達に渡しな。役所へ届けてやるよ」
「一緒にいる嬢ちゃん達もこんなさえないにーちゃんよりも俺達と一緒にやらないか」
お決まりのセリフを言ってくるとはどこの世界にもいるもんだな。そこのチビ、やらないかって何をだよ。
「あいにくと、あなた達のような人は信用できないのでご遠慮させていただくわ」
「お嬢様がそうおっしゃるのですから従者のわたくしはそのようにいたします。そうでなくとも決してあなた方にはかかわりたくありませんが」
リリーとエリーゼは当然のごとく拒絶。こんなんで引っかかる女性がいるなら見てみたいもんだ。
「そうつれないこというなよ。俺達は先輩だぜ」
「そうそう。先輩の言うことには素直に従った方が身のためだぜおじょうちゃんたち」
そういって近づいてくる野郎ども。身のためって、よりにもよってマスターの前で問題発言を……
「お前ら、また新人潰しの真似事をしてみろ。すぐさま除名と役所送りだ。お嬢さん方こんなバカにはかまわんでいい」
マスターが止めに来るがそれよりも気になることがある……こいつらを利用するか。
「おい、おっさん達。こんなつまらんことをする暇があれば仕事でも受けたらどうだ。まあ、こなす仕事があればの話だけどな」
俺は試しに嫌み全開で言ってみた。
「なんだと!新人が俺達ベテランに対していい度胸だな」
「マスター、これはにーちゃんがふっかけてきたから俺達の責任じゃねーよな?」
随分と安い挑発で期待通りにしてくれるとは、ほんとにこいつらベテランか?
「この男の実力が分からんが今回のはこいつの責任だ、ギルドに迷惑がかからんのなら今回だけは目をつぶってやろう」
マスターは了承した。俺としてはありがたいが普通なら問題になりそうだ。
「アンちゃん、多少の痛い目にはあってもらうからな」
「にーちゃん、泣いて謝るなら今のうちだぜ」
テンプレありがとうございます。逆にここまでテンプレだと仕込みだと疑うぞ。
「んなことはどうでもいい、いつでもかかってこいよ。せ、ん、ぱ、い」
「やろー」
さすがに武器を使うのは問題になると思ったのか、のっぽが殴りかかってきたがこんなわかり切った攻撃受け止められるが、わざわざ触る気もない。足払いをしてのっぽをすっころばした。
「てめー!よくも相棒を」
そう言ってチビが剣を抜いて切りかかってきた。沸点低いなー。チビの腕を掴んでのっぽの方に投げ飛ばした。強めに投げたから、ふたりともまとめて吹っ飛び、気絶している。ついでにギルドの机やイスが壊れたがこれでいい。
「ギルドに迷惑をかけるなと言ったろうが!!お前ら二人は除名、ついでに役所送りだ。あんたはワシ自ら説教をしてやる。お嬢さん方も監督責任だ。部屋に来い!」
マスターは当然のごとく怒っている。さてと、予定通りに事が進んだ。
でこぼこコンビはギルド員に縛りあげられ護送。俺達はギルドの奥へと連れられマスターの部屋でイスに座るよう言われた。
「わざわざ、こんなことをさせて悪かったな。おまえさんのおかげで怪しまれずに部屋で話ができる」
マスターはほっとした顔で言ってきた。やっぱり俺の思った通りだったか
「なるほど、そういうことでしたか」
「どういうことなの?さっぱりわからないわ」
リリーはわからないようで質問しているが、エリーゼは気がついたようだ。
「ネタばらしは俺からした方がいいか」
「そうだの。おまえさんがどれだけ理解しているか確認も含めて話してやるといい」
「んじゃ、話すぞ」
さてさて、ネタばらしのはじまりだ。
次回ネタばらしです。先に感想でネタばらしはしないでください