283列車 高野
11月13日。今日、2年生は高野山に行くということになっている。水曜日は毎年授業数が多い。それを他の曜日とつりあわせるために休みの日か、こういうふうに遠足になる日がある。今日高野山に行くため、僕と萌はいま南海電鉄の難波にいる。
「ナガシィ。」
「んっ。」
「はい。飲み物。ナガシィ今日飲み物持ってないでしょ。有ったほうがいいよ。」
「あ・・・。ありがとう。」
僕はそれを受け取ったら、また小説を読みふけった。今まで読んでいた八八艦隊の2巻は全部読み切ったため、月曜日から3巻に変わっている。もう100ページを優に超えているため、今日にはこの艦の4章を読み切るだろう。
「そう言えばさぁ、ちょっと調べてみたけど、「紀伊型戦艦」とかって実際にはなかったんだね。」
萌はそういうふうに言った。電車のこと以外言ってくるって珍しいかな・・・。でも、調べたって言ってるんだから・・・。
「うん。八八艦隊の中で実際にできたのは「長門型」だけだから。他のは、空母になった赤城と加賀ぐらいだよ。土佐は進水させてすぐに魚雷で処分したしね。それに天城は関東大震災で建造中に大破して、そのまま処分したし。46cm砲つけてるこの中で言えば「石鎚型」は計画だけだしね。」
「えっ。何か「土佐」の扱いひどくない。」
「まぁ、本当に不運だったんだよ。「ドサ」って言われるぐらいだから。」
ドサっていうのは死体のことらしい。そう言われるのは進水式で薬玉が割れなかったからだそうだ。ただし、インターネットの中の情報だし、もうすぐ70年ぐらい前になる話なので、それが本当なのかはわからない。
「二人とも早いって。」
そういう声が聞こえた。今時刻は8時10分ぐらいだ。ここの出発時間は9時00分。50分も前に来るとなると、
「なぜもうちょっと遅くこない。」
そう聞くのは草津だ。
「いやぁ、地下鉄が混むのが嫌だったから。少しぐらいは座れたほうがいいからね。だから、7時前に家を出たよ。」
「はいはい。あんたらにとってはいつものことだな・・・。」
そう言って草津は僕の隣に荷物を置いた。
それからしばらく時間が経って高槻が来た。他の人はまだ来ない。他の人が集まり始めたのは8時40分より後だった。一番遅く来た人は8時55分に来た。今日高野山に行くのは萌、草津、高槻、木ノ本、留萌、暁、今治、長万部だ。
9時00分に難波を発車する極楽橋行きの「特急こうや」の3号車に乗る。南海電鉄高野線は途中の橋本駅までは皆さんが通勤・通学で使っている電車でも走ることができるが、橋本~極楽橋間は山岳用に特化した電車でなければ走ることができない。また、この間は4両を越える電車は乗り入れることができないようになっている。僕たちが乗った「特急こうや」は8両編成。しかし、前述の理由から後ろ4両は途中の橋本行きとなっている。
「こうや」に揺られて1時間25分。終点の極楽橋に到着。ここからケーブルカーに乗り高野山まで上がっていく。高野山にケーブルカーで上がったらそこから走るバスに乗って、高野山の中へと分け入っていく。バスは奥の院口で降りた。
「わっ。寒い。」
今日は平地でも冬の寒さと言っていた。高野山は標高900メートルぐらいの高さにある。へいちの日ではないほど寒いということは覚悟していたけど、堪える寒さだ。
「わっ。ホントだ。」
全員言うことは同じみたいだ。バスを降りたら、全員防寒対策としてマフラーとかジャンパーとかを着込んだ。全員マルマルになっている。あんまりマルマルになっていない人も中にはいるけど・・・。
「ナガシィ。温めさせて。」
「ヒャッ・・・。」
頬に萌の冷たい手が付けられた。空気の冷たさもあってか、普段よりも冷たい。
「ナガシィ。相変わらず温かいなぁ・・・。」
「やめて。冷たい。手袋して。」
「・・・分かったよ。」
萌はそう言ってから手を話した。ハァっと息を吐くとくっきりと白くなる。こういうもの普段は面白がるけど、今日は寒すぎる。あんまり楽しみたいとは思わないなぁ・・・。
「みんないるよねぇ。」
草津がそう声を掛けた。
「ああ。いるよ。」
高槻がそれに答えた。でも、明らかに数が足りない。
「待って。あっちでタバコ吸ってる人がいるんだけど。」
たばこを吸っているのは長万部だ。暁ってタバコ吸えたっけ・・・。まぁ、吸っているっていうことは20歳越えているってことだよねぇ・・・。それはそういうことでいいだろう。
「まぁ、いいじゃない。ここからどうするのさ。」
僕はそう草津に聞いた。
「ああ。こっから奥の院っていうところまで歩いてく。それで、お参りしてからだと多分お昼ぐらいの時間になると思うから、そこからお昼食べて、金剛峯寺とかをまわって帰るって感じだよ。多分3時ぐらいになるんじゃないかなぁ。」
「3時ぐらいかぁ・・・。」
「ごめん、ごめん。」
そう言いながら、長万部が戻ってきた。
「よし。これで本当にみんな揃ったね。」
草津がそれを確認して奥の院のほうへと歩きはじめた。
奥の院にはいろんな人のお墓がある。中には企業様のやつもある。企業のやつはかなりバライティがある。奥の院口から奥の院まで行く間にあるものはふつうの感じのものが多かったが、奥の院から奥の院前まで戻ってくる間には人の像とか、ロケットの形になっているものとかがあった。他にも戦争殉職者のお墓とか。でも、中に高野山航空隊のものもあった。こんな山奥の中に航空隊の基地があったのだろうか。飛行場はあるはずないから、何のための航空隊基地なのだろうか。そういうのが頭の中を離れなかった。とっても気になるのだ。まぁ、そのことはあとで解決するからいいか。
奥の院に参ってくるのは全員ゆっくりと歩いてきていたから、お昼になっていた。
お昼は二班に分かれた。長万部たちの班はカレーとかおいてあるところに行って、僕たちはそばを食べることになった。お昼を食べ終わって二班が合流したら、奥の院前から金剛峯寺の前までバスに乗り、金剛峯寺を見る。金剛峯寺からはちょっと歩いてお土産屋さんまで戻ってきた。
「ハァ・・・。立疲れたね。」
僕はそう言って、お土産屋さんにあるストーブが置いてあるところに来た。ここにはストーブを囲むようにしてソファーが置いてある。ここには今人がいない。僕が初めてここに座っている。
「そうだねぇ。」
そう言って萌が隣に座ってきた。
「ナガシィ。暇があったら本読んでない。」
そう言いながら、萌は僕の顔に手を当ててくる。ちょっと前まで手袋の中にあった手だけど、外気が冷たいから、全く温かくない。
「ヒャッ・・・。だからやめてってば。」
「いいじゃん。たまには。」
「・・・ねぇ、萌。」
「何。」
「いや、さっきから高野山に航空隊があったことが気になるんだよね。」
「飛行場もないのに。」
「うん。なんでだろうねぇ・・・。陸軍とかだったら納得するんだけどさぁ。中隊だか連隊だか知らないけど、そういうものあったし。だから、なんでだろうなぁって。」
草津たちはお土産を選んでいる。だから、僕たちからは離れたところにいる。
「あとで調べてみれば。」
「まぁ、調べるけどね。気になるし。」
(・・・ナガシィって電車に興味持たなくなったら、船とかに興味持ちようになっちゃうのかなぁ・・・。でも、そんなことないよねぇ・・・。)
ちょっとそのことが心配になる。ナガシィが昔から好きなものだ。嫌いになる理由はあってもそう簡単には全部の興味を喪失することはないだろう。そこは大丈夫だろうね。
草津たちがお土産を買い終わったら、お土産屋さんの前にあるバス停からバスに乗って高野山駅を目指した。高野山駅に着いたらケーブルカーに乗り、それに接続している普通列車に乗って途中の橋本駅まで行く。橋本駅から先は急行難波行きに乗り、難波まで帰っていった。
なんばに到着したら、犀潟が来ていた。犀潟は今日も就職活動で学校に行っていた。それが終わったからこっちに来ていたのだろう。ちょっとだけ挨拶がてらで犀潟にあった人もいた。帰った人を除いて、僕たちはちょっとの間犀潟と話した。そのあと萌、草津、高槻、留萌、木ノ本、僕、犀潟でカラオケに行った。そのカラオケが22時ぐらいまでやって、家に帰ったのは日付が変わってからだった。
今日も長い間外に出ていたね。
高野山の航空隊は座学を専門に行う場所だったみたいです。他実践はまた別のところでやっていたみたいです。




