272列車 別の話
7月13日。夏休み前の学校は昨日が最後であった。そして、今日は名古屋市営地下鉄の試験がある日だ。だから、名古屋に行かなければならない。場所は名古屋から少し離れたところにある大学だった。
(そう言えば、栗東は就職決まったからこの試験には来ないんだよなぁ・・・。)
大学に向かっている最中に思った。栗東も名古屋市営地下鉄の履歴書を一緒に名古屋まで出しに来た。だから、土佐電に決まっていなかったら、今日受けに来ていたはずである。
(まぁ、あいつはあいつ。僕は僕だ・・・。人のなんか関係ないかぁ・・・。)
という考えに行きつく。今までもずっとそうだ。人の就活がどうなろうと僕の知ったことではない。関係のないことだ。
「少しだけまだ時間あるねぇ。どっかで時間でもつぶす。」
隣の萌が自分の腕時計を見て、そう言ってきた。時間は8時45分を少し過ぎたころだ。試験の開始は9時30分ごろからとなっている。15分ぐらいだったらまだ時間に余裕があった。
「ああ・・・。じゃあ、さっきコンビニがあったし、そこで少し時間つぶす。」
と聞いた。
「いいよ。」
そういう了承はあっけなく出る。
9時ぐらいまでコンビニでほんの立ち読みをした。お化けは苦手だけど読むのはホラーマンガ。こういうの呼んで夜に寝れないとかっていうオチがありませんように。明日も早いんだからね・・・。というのは試験がこの土日に重なっているからである。今日はこの名古屋市営地下鉄の駅係員の採用試験。明日は都営地下鉄の車掌の採用試験があるからである。どっちも午前中から始まる試験だから、また「のぞみ200号」にお世話になるのかなぁ・・・。まぁ、元よりこっちはそのつもりだし。だから、今日は早く帰って寝るのが先決である。
名古屋市営地下鉄の試験会場に入るとスーツを着た人と私服で来ている人。それに明らかに30代ぐらいで年の行った人がいる。まぁ、それもそのはずだ。名古屋市営の今回の募集は中途採用。新卒も一応とるっていうぐらいだ。主に採りたいのは少々経験がある人で、新卒はそんなに当てにしていないって感じだろう。それにプラスして、雇用形態は契約。簡単に切るのが難しい新卒よりは中途のほうが都合がいいって考えてるかもしれないなぁ・・・。それにしても、試験会場に私服で来るっていうのはどうかなぁ・・・。さすがに、私服で来ていいですなんて受験票にも書いてないし・・・。バカにもほどがある。バカバカしくてお話になりませんね。これだと受からない理由がよく分かりますね。まぁ、バカどもはさておき、今日の試験に来るのは僕と萌と今治である。その今治も9時20分ぐらいには試験会場に入って来た。
9時30分になって監督官が入ってきて試験の説明をした。やるのはクレペリン検査っていう鉄道おなじみの検査とマーク式の筆記試験。筆記試験には名古屋のICカード「manaca」のこととか、地下鉄と市営バスの乗り継ぎに関係することとかが中心に出た。地元民しか採らない気ですかっていう感じがモロに出ているのは気のせいか・・・。
これらの試験が終わると時間は12時を少し過ぎたころだった。ここから大阪に帰るわけだ。ここから一番近いJRの駅は鶴舞。そこから、名古屋まで出て新大阪まで新幹線で帰ってもいいし、在来線でコトコト帰ってもいい。僕としては早く帰りたいところだけど、今治が依りたいところがあるらしく、それに付き合ってから在来線で帰った。正直、新大阪と名古屋の間を在来線で移動するのは久しぶりのことである。まぁ、時間はかかるけど、たまにはいいかぁ・・・。
翌日。7月14日。今日は前述通り都営地下鉄の試験。都営地下鉄も試験会場は池袋近くにある大学。そこを借りて行うようだ。試験の内容はクレペリン検査とマーク式の筆記試験と作文。これら全部行って終わるのは15時ぐらいだ。筆記試験はこっちのことが多く出た。こっちのシステムとかよく分かってナイト理解できない問題が多い。そもそも、今年東京で開かれたスポーツ大会の名前なんて、興味が無かったらかなりどうでもいいものまで問題になるんだなぁ・・・。そこまで周りに関心を持っている人がえらいかい・・・。ただ、都営地下鉄の試験を受けに来た人の中にも私服で受けに来ている人たちがいた。ハァ、1400mlあるはずの脳が全く働いてないっていうことがよく分かる。学習する人は少ない代わりに、お金の学習だけに貪欲だから、変な方向に頭が回るんだねぇ・・・。よく分かるよ。バカってことが。
試験がすべて終わったらさっさと帰るだけである。新大阪止まりの「のぞみ」に乗って新大阪に帰った。今住んでいるところに戻ったら、さっさと寝た。することがないからだ。
翌日。7月15日。
(ハァ・・・。あっ。今日は祝日かぁ・・・。学校行かなくていいんだなぁ・・・。)
寝返りをうった。
(ずっと携帯いじってたら目悪くなるしなぁ・・・。どっかでるかぁ・・・。)
そう思い立って、僕はパジャマから着替えて、部屋を出た。
部屋を出てから、近くの緑地公園に歩く。別に公園にあてがあるわけじゃない。無意味に公園のほうへ歩く。講演の中を一回りしてから、部屋に戻ろうとする。でも、このまま戻っても部屋で暇なことには変わりはない。江坂にでも行ってみるかぁ・・・。と自分の中でなったら、江坂のほうに歩いていく。江坂にはいろいろ時間がつぶせる場所がある。本屋さんとかで時間をつぶせたら最高かぁ・・・。そう思ったから、江坂にある本屋さんに入った。思いのほか時間がつぶせた。それで戻ってくると、部屋の前に人がたっていた。
「父さん。」
「ああ。なんだ。どっか行ってたのか。」
そう言った。
「なんで。呼びの鍵持ってるんじゃないの。」
「まぁ、中で待っててもよかったんだけどな。こっちに来るってことはお前にも言ってなかったから、脅かすようにもなると思ったんだよ。」
父さんはそう言ってから、僕に鍵を開けるようにっていうジェスチャーをした。それで鍵を開けて、狭い部屋の中に人が二人入った。一人でも狭いのに、二人は言ったら余計狭くなる。自分でもこんな狭い部屋に良く暮らしていると思う。都会のふつうっていうのは頭がおかしくなりそうだ。
「ああ。そうだ。最近どうなんだ。」
と聞いてきた。僕としてはあんまりついてほしくない所だ。
「まぁ、ぼちぼち。昨日は都営地下鉄の試験受けに行ったし、一昨日は名古屋市営地下鉄の試験だったから。」
「なるほどなぁ。で、手ごたえはどうなんだ。」
「・・・まぁまぁだよ。」
というのは僕にとってはふつうの回答だ。このときは落ちる気しかしないか、受かる気しかしないのどちらか。そういうところを曖昧にする。
「そうかぁ。」
父さんがこれをどういう意味に取ったのかはわからない。恐らく前者はないと思う。
「ところで、お前。遠江急行は受ける気ないのか。」
「えっ。」
父さんの発言にはびっくりしたけど、それはすぐに包み隠す。
「どうして。」
「んっ。まだ鉄道会社に入って運転士になりたいって思ってるんだろ。だったら、チャンスは少ないより多いほうがいいんじゃないか。遠江急行だって立派な鉄道会社なんだし、運転士になれないわけじゃないだろ。」
「確かに。そうだけど・・・。」
「そうだろ。締め切りは8月の2日。試験が始まるのは9月の上旬からだから、まだ間に合うぞ。どうする。」
「待ってよ。父さん受けるなって。」
「そうは言ったけどな。」
父さんはそう言ってから立ち上がった。
「でも、今この時期まで来て会社は選んでられないと思うんだよ。それに、今はいくら今の政権のおかげで景気がよくなってきているとは言っても就職っていうのは厳しいままなのには変わりはない。だったら、そういうことは言ってないで、素直に受けたらどうなんだ。それで受からなかったら受からなかったでまた次に頑張ればいい。」
それは・・・そうだけど・・・。
(いや、この話って・・・。あんまり乗らないほうがいいのかも。コネとかそういうことじゃなくて、父さんは僕に受けるなって言った。それって「遠江急行」受けるぐらいだったら、他のところに受かれってこと。ここで遠江急行頼ったらなおさら、いけないじゃん・・・。)
「いいよ。」
「いいのか。」
「うん・・・。父さん受けるなって言ったんだから、他の鉄道会社に受からなきゃ。」
「そうか。」
そう言ってから父さんはあたりを見回した。
「ちょっと止まってっていいか。ホテル取ってないし、今この時間から帰れないこともないけど、帰るものしんどいからな。」
ということで、今日父さんは僕の部屋に泊まることになった。
お父さんの言うことが違うのはなんで・・・?




