270列車 「つばさ」の楽しみ
6月29日。今日も早く目が覚めた。目が覚めた時間はまで5時にもなっていない。目的はただ一つである。私服に着替えて、少しだけ荷造りをした。財布の中に入っているお金の量も確認する。まぁ、これは昨日少しだけATMから引き出したものだから、これだけあれば足りるかぁ・・・。その足で駅に赴く。
(ここに行く事実は誰も・・・。誰も知らなくていい・・・。)
駅員から配られた切符を見て、心の中でそう言った。
乗る列車は6時00分新大阪発、東京行き「のぞみ200号」。普段就活で東京に行く時によく使うようになった列車だ。使用車両は今日もN700Aではなかった。まぁ、そう簡単に当たるようなものでも無いかぁ。鉄道雑誌によれば、JR東海がやろうとしている既存N700系Z編成のN700系1000番台か改造車がすでに登場しているらしいけど、80編成あるうちのZ編成の中でそれにあたることのほうが今は難しいと思っているから、そんなことは考えてもいない。まぁ、まずはこれに乗ることだ。
6時00分に新大阪を発車する「のぞみ200号」は東京に8時26分着。新青森には2分後に発車する「はやて25号」があるが、接続していないので、「はやて25号」の28分後に出る「はやぶさ7号」が新大阪から新青森まで行くための最速チャンネルとなる。しかし、今日は新青森に行くために、この時間に東京に来たわけじゃ無い。今日はまた別のところに行く。新青森、秋田と行って、次に東北に行くときは新庄に行こうとしていた。その新庄に行くためである。
この時間から新庄に行くためには9時24分発の「つばさ131号」までない。1時間ぐらい待つことになる。しかし、そんなバカをやるためにこんな早い時間に来ているわけじゃない。ここからは8時40分発の「やまびこ53号」に乗る。「やまびこ53号」は東京発盛岡行き。途中上野、大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台に止まり、仙台から終点盛岡までは各駅停車になり、この「やまびこ」にあてられる車両はE3系とE2系の16両編成である。僕は当該列車の16号車に乗り込んだ。特急券はすべて自由席だし、新幹線は途中乗り換えを行っても「特急料金は一つの列車として扱う(乗車区間内)」という規則がある(在来線特急の場合特急から特急に乗りかえると基本2つの特急料金がかかる)。そして、「やまびこ」から「つばさ」への乗り換えは同等列車(快速から快速への乗り換え)と同じなので、ややこしくはならない。まぁ、そんな乗り換え、バカ以外のすることではないが・・・。
東京を発車するとすぐ上を覆う構造物が見えてくる。今建設中の東北縦貫線である。現在上野で止まっている宇都宮線・高崎線系統の列車を東京へ直通させることと並走する京浜東北線・山手線の混雑緩和のために作られている。その下をくねくね曲がりながら、やがて新幹線の地下へと潜っていく。しばらく走ると景色が明るくなり、上野に到着する。上野からそこそこの乗車が自由席にあり、すぐに発車。大宮までの間はカーブが連続して、スピードが出せないため、大宮までは新幹線でも時間がかかる。大宮からは本領発揮で、新幹線本来のスピードを出す。
新幹線本来の高速が3度目にゆるむともうすぐ福島に到着する。一度、ここで下車する。次に乗るのは10時35分発の「つばさ129号」の予定だが、来るのがE3系2000番台だったら、諦めて次の「つばさ131号」まで待つつもりでいる。そこは、今日の運用と相談ってところだ。
「ふぅ・・・、福島かぁ・・・。」
ここに来るのは高2の時以来である。すぐの先頭車のほうへ歩いていって、ここまで来た編成を確認した。R25であった。
(ああ・・・。だから静かだったんだ。)
乗った時の静かさに違和感があったからなぁ・・・。R25であるなら仕方ないかぁ・・・。
E3系R25編成を先頭にした「やまびこ53号」は福島で5分停車する。この間に東京8時56分発の「スーパーこまち7号」・「はやぶさ7号」が通過する。ダイヤ改正の前は仙台で待避を行っていたのに・・・。320キロにスピードアップするとこんなところで詰め寄られるんだな・・・。数分後。E6系を先頭に「スーパーこまち7号」とE5系「はやぶさ7号」が320キロで福島を通過した。それを見届けてから、今度は「やまびこ53号」が発車する。そのすぐ後には東京行きの「つばさ」が「やまびこ53号」の向かいのホームに入線する。
(さて、来る「つばさ」はどっちかなぁ・・・。)
新幹線ホームにアプローチしてくるE3系を見る。間もなくシルバーの車体をとらえた。じっと見ているとヘッドライトの形が笑っているようにとらえた。てことは、最近新造されたE3系2000番台だなと確信する。ホームにそのE3系が入ってくるとゆっくりと連結されるホームの中間ぐらいに向かった。新幹線の連結派は東北とか近いところに住んでなきゃそうそう見れるものじゃないからね。でも、歩きだすのが遅かったから、見れなかった。でも、発車する前にはその位置に行けた。
「えっ・・・。」
そこには少々目を疑うものもあった。新幹線の連結器があるところにはどっちが「つばさ」で、どっちが「やまびこ」かよく分かるように、看板がある。その看板、明らかに「やまびこ」はMaxの黄色い帯から下にピンクのテープを張っただけである。
(いや、いくら応急って言ってもひどいだろ。これ。もうちょっとましな方法はなかったの・・・。)
他のところに回すお金でこっちに回すお金でもなかったのかなぁ・・・。まぁ、そんなとこ。どうでもいいけど。
その看板を気にしながら、「つばさ129号」を待った。来たい―3系は何と待っていたほうであった。新庄延伸の時に製作されたたった3編成しかないE3系1000番台だ。「つばさ129号」は山形行きだけど、さっきのこともあって、「つばさ131号」がこれで来るっていう保障はまずされていない。僕はこれに乗り込んだ。編成番号は乗る前に確認したところL51であった。
「つばさ129号」は意外にも混んでいた。自由席には着席することは不可能であった。次に止まる米沢までは立っているしかなさそうだ。発車してすぐに新幹線用の線路から離れて、在来線にアプローチする。そこは前に乗った秋田新幹線の「こまち」と同じ雰囲気だ。それと同じ感じで、しばらく待ちの中を走ると深い山中へと分け入っていった。
カーブが連続する山中の奥羽本線。右に左に連続するカーブを難なくやり過ごしていく。たまにトンネルっぽいところに入る。中は目を凝らすと車が通れるような道があったりするところもあった。奥羽本線で板谷峠の中に設置されている駅の中には豪雪を防ぐためにシェルターが作られている駅がいくつかある。たまに通過するトンネルっぽいところはそこである。人家が多くなってくると間もなく米沢に到着するというアナウンスが流れた。
米沢ではデッキにまであふれていた人。座席に座っていた人。それの30パーセントぐらいは降りただろうか。デッキの近くに座っていた家族と思われる団体の人たちもここで降りたので、僕はそこに座ることにした。米沢を発車し、隣の駅の置賜を通過・・・せずに停車。もちろん時刻表では置賜には停車しない。旅客扱いを行わない運転停車っていうやつだ。
「反対列車の待ち合わせをいたします。発車しばらくお待ちください。」
車掌のアナウンスが入った。
そのあとしばらくして、反対列車が3分ぐらい遅れているとアナウンスが入った。アナウンスの後しばらく外を見ているとその遅れている列車が現れた。来たのは719系の通勤電車だった。
(ハハハ・・・。特急待たせてたのかよ。)
「お待たせいたしました。信号変わり次第、すぐに発車いたします。」
とのアナウンスが入った。
置賜を発車して、隣の高畠を通過。次の赤湯に停車する。赤湯を発車すると次の停車はかみのやま温泉。その次は終点の山形である。この列車は終点の山形に11時42分着。どうやら、さっきの普通列車の遅れっていうのは想定の範囲内だったのかは知らないが、こっちに影響はほとんど出ていないようなので、つく時間には影響がないだろう。山形から新庄に行くためには11時50分発の「つばさ131号」に乗る必要がある。この列車が着いた8分後に山形を発車するのだ。
山形には定刻着。かなりのお客さんが「つばさ」から降りた。すぐに来る「つばさ131号」をホームで待っていると、またもきたのはE3系1000番台。ああ。これは運を使い果たしただろう。自由席に乗り込んだが、これまた混んでいる。そのお客はデッキにまであふれている。当然、今ここで座れないと思ったから、また立っていることにした。ここから先は山形新幹線の停車駅に各駅停車である。その間に座れないことはないだろう。
外はのどかな風景が流れている。
(こういうところいいなぁ・・・。)
そう思う。東京も大阪も、せわしない。いつも、いつもどっか忙しそうにしてる。あんまりせわしないのも好きじゃない。のんびりとしてこういうゆったりとしたところのほうがいい。まぁ、もちろん「鉄道でそこで働く」となれば、そこは割り切るが・・・。
さくらんぼ東根を通り過ぎたところで、ようやっと着席できた。その後しばらくウトウトしながら過ごしていたみたいで、あまりはっきり覚えていないところがあった。
新庄に到着後は、しばらく待ちの中を歩いた。6月の下旬ともあって、太陽の光は東北でも強い。
(こういうところいいなぁ・・・。こういう静かなところ。騒がしくないし、せわしなくもないし・・・。浜松みたいなところ・・・。)
自分の家の近くを重ね見た。
前回の活動報告の告知したとおり、現状での最終話とさせていただきます。
続きは来年3月までの間に再連載開始します。それまでご迷惑をおかけしますが、これからも本作並びに永島光をよろしくお願いします。




