262列車 日動
4月21日。今日は日曜日だが、昼間まで寝ているわけにはいかない。今日は東京で企業説明会がある。そのために、早く起きなければならない。しかし、起きた時間も時間だった。時計を見ると4時30分だった。
(萌は起きてるかなぁ・・・。)
眠たい目でベッド側の壁を見た。何も聞こえない所を見ると、まだ起きていないのかなぁ・・・。まぁ、いいかぁ・・・。「のぞみ200号」に乗るってことはもうすでに言ってある。新大阪を6時00分に出る最初の東京行きだ。いつもなら6時03分に新大阪を発車する「のぞみ202号」があるが、あれは休日運休だから、日曜日である今日は走ることはない。
4時50分ぐらいになると、ベッドから起き上がって、スーツに身を包み、カバンの中身をチェックして、家を出た。乗るのは5時11分に緑地公園を発車する最初のなかもず行き。千里中央から来る最初の列車は必ず北大阪急行8000系「ポールスター」だ。
「おい。」
コーポの入り口のところまで来ると後ろからつつかれた。こういうことするのは一人しかいないよねぇ・・・。
「おはよう。」
「おはよう。」
「ねぇ、ナガシィ。こんなに早く出て、どうするの。京王電鉄とか乗るって言ってたけど。」
「そこは大丈夫だよ。調べたから。」
「そう・・・。で、どう回るの。」
「えっ・・・。うん。横浜線で八王子まで行って、そのあと京王八王子から、京王電鉄に乗って、新宿行って、都営地下鉄新宿線に乗ってから、三田線に乗って、三田で降りて、浅草線に乗り換えて、横浜まで行くって感じなんだけど。」
「そう。じゃあ、横浜から東京急行に乗って、元住吉まで行くって感じでいいの。」
「うん。」
平日のこの時間から、駅に向かって歩いていく人がチラチラいる時間である。しかし、今日はそういう人影はほとんどない。暗く、まだ日の見えない空の下、僕たちは駅に向かって歩いていく。
「ハァ。でも、元住吉って不便じゃない。普通しか止まらないって。」
と萌が言った。確かに、不便だ。元住吉駅は日吉駅と武蔵小杉駅の間にある。止まる列車は前述の通り普通のみ。特急は菊名から武蔵小杉までノンストップ。急行は隣の日吉と武蔵小杉には停車するが、元住吉は通過する。渋谷から行くにしても、横浜から行くにしても、東横線のほぼ真ん中にある元住吉に行くには普通に乗らない限り、乗り換えが必要となる。
「まぁ、特急一本で行けないっていうのは面倒だよねぇ。」
しかし、今日特急が臨時停車します、なんてことはあり得ない。面倒なのがなくなるのは天地がひっくり返ってもあり得ないことであるのは分かっているから、これは受け入れるしかないだろう。
新大阪に着いたのは5時20分ぐらいだ。ここで大きなバッグを持っている人、スーツに身を包んでいる人が降りた。この人たちも遠くに行く用事があるのだろう。
「ヒュゥゥゥゥゥゥ。パワァワァワァワァワァワァン。」
まだ静かな町に向かって、「ポールスター」の特徴的な声がこだまする。ここまで乗ってきた「ポールスター」はモーターとヘッドライトを新しくした8003F。もしかしたら、夜も乗れるかもしれない。そう思いながら、新幹線の駅に向かった。しかし、この時間に新幹線改札口に行っても、まだ改札口は開いていない。多分、始発の新幹線を使おうとするお客で、改札の前には人が多いことだろう。
行ってみると中央改札口の前にある柱や、改札の反対側にある窓口にはまだ切符を買っていない人たちの列ができている。僕たちはあの15人から20人ぐらいならんでいる列の一番後ろに並ぶ必要はない。僕たちは改札口が開くのを待てばいいだけなのだ。
5時30分。改札口が開いて、切符を持っていたお客がだんだんと改札口の中に入っていく。またこの時間から窓口も切符の販売を開始する。窓口の閉まっていたカーテンも上がって、待っていた人が中に入っていく。
「行こうか。」
萌に一言そう言って、改札口を通り抜けて、中に入った。「のぞみ200号」が発車するのは26番線。「のぞみ200号」の次の「のぞみ」は6時13分に27番線から発車する「のぞみ204号」だ。だが、今日「のぞみ204号」に乗ると間に合わなくなるので、これには乗らない。
「「のぞみ200号」ってN700Aかなぁ。」
萌がそう言った。
「だったらいいね。」
とだけ僕は言う。期待はしているんだけど、その期待もそこまでではない。N700Aはまだ6編成ぐらいしかない。多かったとしても7編成ぐらいだ。さらに3月16日のダイヤ改正から、N700Aは山陽新幹線にも乗り入れるようになった。そのため、あえる確率はとてつもなく低い。それにN700Aは86編成中の6本。43回見るN700系の中で3本来るかもしれないっていうレベルだ。
ホームに上がって26番線に止まっているN700系を見た。N700Aの特徴は奇数号車についている大きなAを模したマーク。それが側面での見分けるポイントとなる。しかし、それ以外でN700系とN700Aを見分けれるところはない。ドアを閉めているN700系は大きなAのマークのない今までのN700系だった。東京側のドア左についている番号を見ると、「JR 786-32」と書いてある。JR東海のN700系Z32編成かぁ・・・。ここまで詳しく知る必要はないのだけど・・・。
6時00分に新大阪を発車した「のぞみ200号」は新横浜に8時08分に到着する。しかし、今日は新富士付近で急病人発生ということで臨時停車をしたため、新横浜到着は8時11分となった。8時15分に新横浜を発車し、八王子方面に向かう列車には間に合い、そこから先は予定通りに事が進んでいった。というよりも、地下鉄での所要時間を多く見積もっていたため、予定よりも早く横浜に着いた。
「どうするの。まだお昼食べても、結構時間余っちゃうよ。さっさと元住吉に行く気もしてないでしょ。」
「まぁ、そうだけどさぁ・・・。どうしようかなぁ・・・。目黒線とか、みなとみらい線とか乗ってる。」
と萌に聞いた。目黒線は東京急行所有の日吉から目黒までの区間。日吉から田園調布までの間は並走する東京急行東横線との複々線区間が続いている。また、都営地下鉄三田線と東京地下鉄南北線とも相互直通運転をしており、三田線は終点の西高島平まで、南北線は終点の赤羽岩淵を越えて、埼玉高速鉄道の浦和美園まで乗り入れる。この路線には急行も運転されているが、目黒線内のみ急行運転のため、直通先では各駅停車となる。みなとみらい線は東京急行東横線が乗り入れる、横浜の「ランドマークタワー」があるみなとみらい21へと延びる地下鉄路線。東横線を走るほとんどの列車は横浜が終点ではないため、みなとみらい線の元町・中華街まで直通する。他みなとみらい線には西武鉄道、東武鉄道、東京地下鉄の車両が東京急行の車両に交じり乗り入れている。
「じゃあ、お昼食べたら、どこかまた乗りに行こ。」
小さくうなづいて萌に促されるまま、横浜地下街にあるカレー屋さんに入った。入った後で、チョイス間違えたと思ったけど、もう遅いかぁ・・・。まぁ、心配してたこともなくてよかったけど。
お昼を食べ終わったら、東横線ホームに向かった。東横線のホームは地下にある。これは全区間地下になっているみなとみらい線への接続をさせるためだろう。ホームは島式。ホームが線路に挟まれているためにそう呼ばれる。だが、駅の電光掲示板には普通、急行、特急がひっきりなしに来ることが表示されている。僕たちは特急に乗って行こうと決めたが、その特急を待っている間にも、元町・中華街に行く列車が渋谷方面から続々とやってきた。もちろん、その車両はバライティに富んでいる。これだから、東京の鉄道は分かりづらい。大阪の場合は直通運転をしていても数が少ない。名古屋に至っては、相互乗り入れしているのは愛知環状鉄道とJR、名古屋市営と名古屋鉄道だけである。
列車に乗って時間をつぶしているとうまい時間に元住吉に着くことができた。元住吉は高架になっており、4つあるうちのホームの内側二つに目黒線、外側二つに東横線の普通が停車する。目黒線には安全対策としてホームドアが設置されている。また東横線ホームの外側にはもう一つ線路があり、通過列車は全てそこを通るようになっている。見てみると東横線はここでも、列車の追い越しを行っているようである。駅の改札口をぬけて、地上に下りると高架線の下にも線路がある。ここは近くにある車両基地に行くための線路である。今から説明会を聞きに行くのは教習所。なるほど、車両基地の近くに教習所があるっていうのはいろいろと都合がいいのだろう。訪れる人のことを考えてない以外は・・・。
教習所は本当に車両基地の隣にあった。複数ある線路には5000系車両がたくさん止まっている。中にその5000系を違う車両も含まれているが・・・。
(そう言えば、東横線って東京急行車は5000系しか見なかったけど・・・。)
ふと思った。
説明会の開始時間が近づいてくると人も集まり、一つの机に3人ぐらいで座らないと埋まらないというぐらいになった。そして、ほぼ満員の状態で1時間の説明を聞いた後、1時間かけてクレペリン検査を行う。まぁ、クレペリン検査は今までのこともあるから、省くとしよう。もちろん、満員の状態でクレペリン検査はできないので、後ろの席に座っている人中心に、別の部屋に移動するように言われていた。僕は前の席で聞いていたので、移動ということは言われなかった。クレペリン検査が終了すると、解散ということで、ぞろぞろを同じスーツに身を包んだ人が帰っていった。
そのあとは少々面倒くさい形で東京駅まで行き、すぐに発車する新大阪止まりの「のぞみ」に乗り込んだ。これが終わったが明日は学校である。
(ハァ・・・。また学校かぁ・・・。)
そろそろ都会っていうのに嫌気がさしてきた。
日曜日も動かなきゃいけないとは。大変だ、こりゃ。




