189列車 温もりと計画
前回の答えは根室本線白糠駅。
問題文の通りです。解説は不要でしょう・・・。
北海道のとある駅です。
「根っこの恩を大切にする場所は。」どこでしょう。
4月5日。昨日なかった写真撮影がある。それが終わって帰ってくるだけになるといっていたが、本当にそうだった。写真撮影が終わると順次解散になった。それからやることもなく午後はだらだら過ごしているだけになった。
インターホンが押された。誰なのかとみてみると萌だった。
「だらだら過ごしてるんじゃないかなぁと思って。」
そう言って部屋の中に入って来た。萌は台所を見てから、
「お昼何か作ってあげようか。」
と聞いてきた。
「えっ。別にいいよ。そんなことしてくれなくても。」
「なんかしてあげなかったらお昼食べないでしょ。何食べたい。」
言っていることがあたっていたから黙っていた。萌はしばらく僕を見つめてから、何かひらめいたようで、鍋とか料理で必要なものを出した。
「ナガシィは部屋でゆっくりしててくれればいいからね。」
と言った。なので、僕は萌が何を作っているかは気にせずに隣の部屋で休んでいることにした。隣の部屋と言ってもここが住む空間なのだが・・・。
しばらくすると萌が引き戸を開けて、皿をこちらの部屋に持ってきた。小さいテーブルはすぐに料理でいっぱいになった。
「・・・。」
「はい。お待たせ。」
そう言って僕に笑って見せた。
「なぁ、萌。もしかして、お前って俺の心でも読める。」
と聞いてみた。
「全部じゃないけど読めてるつもり・・・。今日スパゲティの気分なんでしょ。」
「・・・。」
確かにそこにはスパゲティが出ている。ソースは僕の好きなミートソースだ。ラーメンも好きだけど、というか麺類はそば以外は全般的に好きだ。
「じゃあ、いただきます。」
「召し上がれ。」
と言ってから萌は引き戸の向こうに行き少し片づけをしてきたと思う。自分の分もよそって戻ってきた。
「どう。美味しい。」
「えっ。うん。」
僕はそう答えただけで食べ続けた。萌にこんなの作ってもらうなんて初めてのことだ。それもあってか普段少ないと思う量でもお腹はいっぱいになった。
「ごちそうさま。」
「えっ。まだあるけど食べないの。」
「えっ。まだあるの・・・。じゃあおかわり。」
「はいはい。」
そんなやり取りでも何となく楽しかった。食べ終わって萌が片づけをしている間に僕の携帯が鳴った。こちらに来てからお風呂にはいれてないと思い母さんがここら辺のスーパー銭湯みたいなところを調べてくれたのだ。
「・・・。」
その文面を見ていたが、遠いというのが難点だった。江坂にあるらしい。江坂までは歩いていけない距離ではないが、歩くにはこたえる距離である。しかし、そういうのにも入ってみようかと思い行くことにした。
14時ごろ。ちょっとこのあたりを歩き回ってみることにした。それには当然萌もついてきた。まぁ、迷惑ではないからよしとするか・・・。コーポの入り口から左に歩いていくと桜並木がある。右に歩いていくとある程度角度のある坂があって、こちらから緑地公園のほうに歩いていくにはお勧めしないルート。左のほうに進路を取って歩いていくと用水がある。この用水の向こうにニューヨークのセントラルパークみたいにあるのが服部緑地公園。中は非常に環境がいい。少し歩いただけでも気が和らぐ。そこから戻ってくると15時。1時間ぐらい歩いていたのだ。戻ってきて互いの部屋に入り、今度は17時ぐらいに部屋を出た。
「あれ。ナガシィどこ行くの。」
本当に僕のしようとする行動が読めるのだろうか。チェーンロックをかけた状態のドアから萌の姿をとらえることができた。
「ちょっと江坂のほうまで行ってこようと思ってるんだけど。」
「・・・じゃあ私も一緒に行くちょっと待ってて。」
「・・・。」
どうしようかと迷った。このまま萌を置いて一人ですたすたと江坂のほうまで歩いていこうか・・・。迷ったけど、結局それはしなかった。
「なんでついてくるんだよ。」
迷惑そうに萌に言ってやった。
「なんでよ。いいじゃん別に。一人だけ抜け駆けなんて許さないからね。」
「別に抜け駆けしてるわけじゃないけど・・・。でもなんで来るんだよ。俺これからお風呂入りに行こうと思ってるんだけど。さすがにお風呂までは一緒には入れないよ。」
「あっ。そうだったんだ・・・。何も持ってこなかったけど大丈夫かなぁ・・・。」
「別にいいでしょ。僕だってお金と携帯ぐらいしか持ってない。」
「・・・。その銭湯みたいなところに行くんでしょ。いくらかかるのよ。」
「高いけど2000円だって。」
「・・・。」
この頃2000円でも高いと思うようになってきたのは節約志向の塊になってきたということなのだろうか・・・。
緑地公園のほうには歩いていかず御堂筋のほうに歩いて、北大阪急行の線路が見えるところまで歩いた。この道は江坂方面に向かって片勾配になっており、江坂には下って行っている。しかし戻ってくるときは上るだけになる。さすがに帰りだけは北大阪急行を使って戻ってこようとは思っているが・・・。時折北大阪急行へ乗り入れている大阪市営地下鉄の車両が大阪方面に、千里中央方面に走って行く。
「ねぇ、ナガシィ。ナガシィってこっちに来てから新型車両って見たことある。」
「見たことあるわけないだろ。こっちに来るときだってさっき外あるいたときだってお前と一緒に歩いてたんだから。」
「・・・そうでした。でも見ないよねぇ。新型。」
「そうだな。まぁ、従来車が相当多いってことじゃないのか。それか新型が1本だけってことじゃないの。1本だけだったら会う確率っていうのは下がるしね。」
「まぁ、それはそうだけど・・・。」
と言っているときにも大阪方面に向かって従来車が走って行った。ステンレスの車体だったからまぁ、新しい方の車両だろう。
名神高速の下をくぐると高架を走っている線路は道路に挟まれるようになる。その道路も効果になっていて、上を通る列車はなんなのか下からは全く分からなくなる。もしかしたらこの間に新型が通り過ぎたかもしれないが・・・。
(江坂駅の西のビル・・・。)
目的のものがあるビルをずっと探しているのだが、眼鏡をかけていないからわかりずらい。僕の視力は裸眼で0.1ぐらいだと思った。生活するには何ら支障はないけど、遠くのものを見ることができない。
「ナガシィ。ここだよ。そのビル。」
萌にそう言われて足を止める。5階に上がると確かにそれはあった。中に入ってお金を払い、更衣室の方に入る。そこで服を脱ぎ、お風呂のほうへ。さすがにビルの中にあるというだけあって高2の時に入った銭湯よりは狭いと思ったが入れないよりはましかぁ・・・。身体を洗って湯船につかった。
(えっ・・・。)
入ると同時に温かいお湯が全身を包んできた。
(お風呂ってこんなに温かいものだったっけ・・・。)
普段感じない温かみを感じた気分だ。それが頭の中に浮かんでくるとどうしても寂しさを隠せなくなった。今は萌に泣き虫だなんて言われてもしょうがないだろう。
どこくらいの時間が流れただろう。普段だったらもう上がってパジャマになっている時間かもしれない。でも、今日はなかなか上がる気にはなれなかった。これからこういうお風呂に入ることはこの先2年は無いと思ったからかもしれない。
「・・・。」
浴室のある部屋をぐるっと見回すと誰もいない。今が出るときかもしれない。そう思ってふろを上がった。タオルで自分の身体を吹き、着替え終わってカウンターに行くと萌が待っていた。
「今日は珍しいね。私より入ってるなんて。」
「・・・。」
「行こうか。」
と言ってきたので、僕たちはゆっくり歩き始めた。ビルから出るとまだ少し冷たい夜風に濡れた髪がさらされた。
「ナガシィ。晩ご飯どうする。」
と萌が持ちかけてきた。まだ何にするかなんて考えてもいない。しばらく考えて、緑地公園の駅ビルの中にあって食道かなんかで間に合わせるという話になった。切符を買ってホームに上がる。どっち方面に列車が出て行ったのか知らないが、電車が発車した後だった。次の電車を待っていたが、来たのはやはり新型車両ではなかった。次の緑地公園で下車して、マックスで夕食を取った。
「さて、ナガシィ。帰ろうか。」
「あっ。ちょっと待って。そこの本屋によっていきたいから。」
「じゃあ、私はあのベンチで待ってるね。」
「分かった。」
本屋に向かってはいってすぐの場所にある時刻表を手に取った。4月6日。明日は旅行することはできない。こんなに早く終了するなら今日業者に来てもらってもよかったぐらいだった。しかし、過ぎてしまったことに文句を言ってもしょうがない。行けるとしたら7日。この日は休日ダイヤだから、休日ダイヤのほうを見なくてはならない。
(えーと、休日ダイヤだから・・・。新快速・・・新快速・・・。播州赤穂行きかぁ。これで相生まで行くと、その次が9時33分発の普通岡山行き。で「やくも」・・・「やくも」・・・。あった。パノラマグリーンの「やくも」が。あっ、ちょうどある。じゃあ、これで。次が「南風」。おっ。「南風」もちょうどある。しかも「うずしお」併結してるし。じゃあ、これも撮って・・・。時間がちょうど「やくも」と同じだけど・・・。「南風」と「うずしお」を撮ってからでも「やくも」は大丈夫だよねぇ・・・。)
携帯に撮る列車を書きこみながら、
(「しおかぜ」・・・。ディーゼルだけどアンパンマンかぁ・・・。アンパンマンはお呼びじゃないからその次の「しおかぜ」かぁ。それで、あとは何かあったっけ・・・。・・・あっ。「いなば」。「スーパーいなば」見てない。えーと「スーパーいなば」は・・・。うわっ。なさすぎ。・・・ここまでいないと撮れないのかぁ。じゃあ、しょうがない。これ見て。この後一番早いのは14時12分発の普通相生行きかぁ。これに乗って相生について一番早い接続が15時19分発の普通姫路行き・・・。同じホームだよねぇ・・・。それで姫路について姫路から一番早い新快速は15時41分発の新快速かぁ・・・。225系じゃないことを願うしかないかぁ・・・。)
「・・・よしっ。」
携帯にすべてを書きこんでから時刻表を閉じた。ベンチに座って待っている萌のところに行った。
「萌。お待たせ。」
「何やってたの。」
「えっ。ちょっと時刻表見てただけだけど・・・。」
「どこか行くプランでも立ててたわけ。」
「まぁね。」
「どこに行くプラン。」
「それは秘密。・・・あっ。7日萌も何もないなら連れてくけど。」
「もちろん。行くよ。何時ごろにここ出るの。」
「・・・7時30分ぐらいには出たいね。」
「分かったよ。」
萌はそれ以上どこに行くのかということを聞かなかった。もしかしたら、これも萌にはわかっているのかもしれない。
温かいお湯につかった時こんなにもお風呂の温かみを感じたことはありませんか。
あとつけたし。今携帯が進歩している時代だからいいますが、登場人物の程んどが所持している携帯はスマートフォンではなくふつうの折り畳み式、スライド式携帯です。理由としてはスマートフォンはスマートフォンと書いてスマートフォンと読むじゃないですか。