187列車 水の思い出
前回の答えは天北線浜頓別駅。
解説。まずこれの読み方は浜頓別。浜で別れるというニュアンスが伝わると思います。
この調子で行きます。
北海道のとある駅です。
「「しょっ」っと言ったら滑りまくり。」どこでしょう。
いつまで泣いていても仕方がない。何のためにこっちに来たのかわからなくなってしまいそうだ。気晴らしと言っては違うかもしれない。風呂に入ってさっさと寝ることにした。
湯沸かし器の取扱説明書を見つけて、それの通りに操作した。まずは服を脱がないままユニットバスの中に入り、本当にお湯が出るのかを確認した。お湯のほうの蛇口をひねろうとしたが・・・、
(なっ。なにこれ・・・。)
まったく動かない。
「クッ。」
今度は力を入れて思いっきりまわしてみる。だが、蛇口はピクリともしない。
「・・・。」
だんだん腹が立ってきた。いつまでたっても開かない蛇口なんて見たことがない。これは管が詰まっているよりも質が悪い。ちょっとの間そのままで、息を吸い込んだら、
「あーけーぇぇぇぇ。」
半分キレそうになっているのが分かっていながら、もう一度チャレンジしてみただが、結果は同じ。
(ねじでも緩めてみれば変わるかなぁ・・・。)
そう思ってドライバーを探してみた。真ん中にねじがはまっている。そこにふたのようについている赤い表示を取ってねじを緩めてみた。そしてまた同じことをしてみる。でも、またしても結果は同じ。今度は輪ゴムを探した。だが、ここには輪ゴムはなかったので、滑り止めがついている手袋で代用した。それで同じことをしてみたけど変わらない。いったい何をすればこれを開くことができるのだろうか・・・。
(・・・。さっきああ言ったけど・・・。)
夜にここの管理会社であるルームインフォメーションのほうに電話してもしょうがないだろう。それは明日になってからだろう。じゃあ・・・。
時計を見てみると8時を回っている。
(そろそろお風呂に入ろうかなぁ・・・。)
と思い押し入れに入れた洋服ダンスの代わりになっているタンスの中からパジャマを取り出して、お風呂に向かった。ユニットバスの中に入ろうとするとピンポンが押された。
(誰だろう・・・。)
チェーンロックを掛けてあるドアを全開に開けてみる。
「萌。」
「えっ・・・。ナガシィ。どうしたの。ちょっと待ってて。」
そう言って一度ドアを閉めて、チェーンロックを外す。もう一度ドアを開けるとナガシィが部屋に入って来た。
「ごめん。ちょっと・・・。部屋のお風呂入れそうにないから借りに来たんだけど・・・。」
「まさか。入れないわけないでしょ。」
「入れないから来てるんだよ。入れたら来ない。」
「分かったよ。明日でいいからどうなってるか見せてよ。」
「えっ。うん。」
「ナガシィ。鍵とチェーンロックしといてよ。」
「えっ。ああ。」
「おいで。」
「・・・。」
萌が自分の部屋の中に通してくれた。6畳だと二人はいるだけでいっぱいになった。もちろんそこにも生活用具があるわけだからその分場所を取られているせいでもある。
「にしても、タイミングが悪かったね。」
「えっ。どういう意味だよ。」
「私も入ろうかなぁって思ってたのに・・・。もしかしてナガシィ見たかった。」
「見たかったって何を。」
「男の子が見たいって言ったら女の子の裸とか・・・ね。」
「・・・そんなつもり最初からないし。」
そう言って僕はベッドとテレビが置いてある間の床に仰向けに寝た。
「それは分かってるって。でも、隣が私でよかったね。もし一人とかだったらこういうことできないしね。」
「・・・。」
確かに。もし一人でこっちに来ることになっていたら、今日僕はお風呂に入れないことになる。オリエンテーションを前にしてそれも泣くに泣けない結果である。
「でも、入るのはいいけど、ナガシィ何も持ってきてないじゃん。タオルもパジャマも。」
「あっ。」
「取って来る間待ってるから、行ってくれば。」
そう言われて体を起こす。自分の部屋に戻ってパジャマなど必要なものを持ちだした。そして、また萌の部屋に戻る。確かに待ってくれていた。
「私はあとでいいから、先は行ってくれば。入り方ぐらい分かるよね。」
「・・・まぁ、だいたい。」
それで入ったものの・・・。ユニットバス自体湯船にお湯をためるようなものではないので、シャワーで済ませることになる。そうなるとどうしても今の空気では冷たく感じてしまう。とても寒い。すぐに体を拭いてパジャマを着て、萌がいる部屋の中に入った。
「はっ。寒かった。」
体を擦って暖かくする。
「さすがに夜になったら寒いかぁ・・・。」
独り言をつぶやいた。
「じゃあ、今度は私が入って来るね。」
そう言って萌がユニットバスのほうに向かった。僕たちが住んでいるコーポには奥の部屋とキッチンやユニットバスがあるところの間に仕切りになるように引き戸がある。萌はそれを閉めてそっちのほうに入っていった。しばらく天井を見つめる状態でボーっとしていた。ここでもだんだん天井がゆがんでくる。寝返りをうってうつ伏せになる。すると引き戸が開いた。今の段階で後ろを見るのには抵抗がある。
「別に見ていいってば。下着だけじゃないし。」
そう言う声が聞こえた。それでようやっと萌のほうを向いた。
「どうしたの。」
萌はそう聞いてきた。
「別になんでもないよ。」
「・・・。そうかなぁ。不安なんでしょ。」
何も答えなかった。すると萌は僕のすぐ右に来て、座った。
「不安じゃない人なんていないと思うなぁ。私だって不安だよ。」
「・・・。」
「ナガシィってわかれとかそういうの弱いもんね。」
「うるさい。」
萌のいるほうを見ないようにして、僕は反対を向く。すると萌は僕の後ろに回る。ベットの上に乗って、僕を抱く状態になった。
「あっ。ちょっと。」
「寂しくても私がいるよ。」
「分かってるよ・・・。」
「それに私だけじゃない。榛名ちゃんだって・・・さくらちゃんだっているじゃない。それにナガシィにはすぐにこっちで一緒に勉強する仲間ができるよ。」
「・・・。」
ほんの少し気持ちが和らいだ。萌の言っていることのほうが当たり前だ。こっちに来ているのは僕だけじゃない。そして、同じ志を持った仲間ができるとも思っている。さっきまで歪んでいた景色は段々をもとに戻ってきた。さっき泣いたこと萌にばれたかなぁ・・・。そんな心配をしながら、萌に抱かれていた。
「ナガシィ・・・。」
「何。」
「頑張ろう。二人で。」
「・・・。」
萌が僕を抱く力がほんの少しだけ強くなる。
「萌・・・。部屋に戻りたいんだけど。」
「えっ。あっ。分かった。」
部屋の引き戸を開けて出ようとすると、
「寂しくなったら私の胸に飛び込んできていいからね。」
「ふ、ふざけるなよ。」
そうは言ったけど、ちょっと嬉しかった。
翌日4月3日。外は台風並みの雨が降っている。午前中はそんなでもなかったが午後になって結構強い雨に変わっていった。
「ふん。」
萌が力を入れて蛇口をひねってみる。
「うん。か・・・固い。」
「だろ。」
僕がそう言うと萌は手を離して、手をぶらぶらさせて、
「何これ。手が痛くなる。こんな蛇口じゃひねれないじゃない。電話したの。」
「したよ。もう。」
「それでいつ直るんだって。」
「2・3日かかるって言ってたし、来てもらうのもう6日にしちゃったし。」
「それじゃあ、それまでは私の部屋にお風呂入りに来るってわけ。まぁ、いいけどさぁ変な時に来ないでよ。タオル1枚って時や丸裸って時だってあるかもしれないんだからね。」
「何時ぐらいにお風呂に入るか言ってくれればいいから。」
「私は大体8時ぐらいには入るつもりでいるから・・・。」
「じゃあ7時前ぐらいに借りに行けばいいってこと・・・。」
「うん。それぐらい。」
今度は僕の部屋の中に二人で寝そべっていると外はどんどん雨足が強まってきた。
「・・・。」
「雨と言えばさぁ、散々なこともあったよね。」
萌が口を開いた。
「んっ。もしかして、中2の時にダンプの泥はねもろにくらったこと。」
「あっ。やっぱ覚えてる。」
「そりゃ覚えてるよ。お互い全身びっしょりになったな。」
「そうだったよねぇ。お互い着てたのが体操服だったから。私なんかブラまで透けて見えてたし・・・。」
「・・・そう言うネタだったら小4のときだってあるじゃん。」
僕がそう言うと萌は起き上がって、
「あれはナガシィが悪いんだからね。」
確かに。原因と言えば和田山さんが庭に水をまいているのを僕が変わりにまくといい、萌がいないと思って花壇のほうに水をかけてしまったのがそうだ。それで萌の水がかかって、それに怒った萌が僕からホースを取り上げて、僕に水をかけて、そして、今度は僕がそれの仕返しに萌えに水をかけて、それでホースの取り合いになり、口を塞いでしまったからお互いびっしょりになったということがあった。小4の夏の思い出である。
「でも半分はお前も悪いじゃん。」
「・・・でもそのあとお風呂に入れられて、和さん容赦なく私のこと脱がして、ナガシィの目の前で私のこと丸裸にしたじゃない。あの時超恥ずかしかったんだからね。」
顔を真っ赤にして、その時のことを言う。
「俺だって恥ずかしかったよ。萌の前で脱がされたんだから。」
「ナガシィより私のほうが恥ずかしかったわよ。まさか、見られるなんて思ってないもん。」
そこまで言うと声をひそめて、
「まぁ、他の男の子に見られるよりましだったけどさぁ・・・。」
「・・・俺に裸見られるのが嫌ならなんであの時裸みたいなんて言ったんだよ。」
「えっ。そ・・・それは・・・。」
その声がしたあと萌はしばらく何もしゃべらなかった。
「いや、ナガシィも男の子だし興味あるのかなぁって。」
「・・・まぁ、無いって言ったらウソだな。」
「・・・今は見せてあげないからね。」
「別にいいよ。見せてくれなくたって。見たことは1度あるんだし。」
「ねぇ、そういうこと言わないで。いい加減にしてよ。」
こうなったらいつのもお約束である。
溺れる思い出ではダメですよ。
小学生らしいを追及すると専門学校生に戻った時の話が少し作りづらい。