206列車 He is a girl.
南阿蘇水の生まれる里白水高原。車掌・・・。いや、コンピューターだね。でも、大変。
「な・・・永島君・・・。」
「えっ。な・・・何。」
「カワイイー。」
内山と蓬莱の声が揃う。
「お前なんだよ。本当はやっぱり女なのか。」
近畿たちは逆にそう言う。
「ねえねえ。ナガシィ君って本当は女の子でも通用しない。だって声だって女の子だし、顔つきだって女の子じゃん。」
「通用するよ。見てみる。」
蓬莱に萌が答えた。まさか・・・。
「あっ。バカ。やめろ。」
「少しぐらい見せてあげてもいいじゃん。前女装したときは蓬莱さん見てないんだって。」
「そうじゃないだろ。とにかくやるな。」
「ちょっと待っててね。」
萌はそんなことお構いなし。いつもの手つきで、僕は女の子の髪型にされてしまった。
「やっぱり似合う。かわいすぎ。」
「袖の中に手隠してるのだって女の子だしねぇ・・・。」
「なぁ。これかぶってみたら似合うんじゃないか。その色あせた帽子より。」
蓬莱、内山、瀬野の順に口々に言う。
「・・・ちょっとかぶせてみよう。」
本当に僕は女の子のいいおもちゃにされてしまっている。萌が今かぶっている帽子を取って、瀬野の帽子をかぶせた。
「メチャクチャ似合うじゃん。ちょっと写メらせて。」
「おい。」
「ここまで女の子って思える男子もいないだろうなぁ・・・。」
「いたらすごいって。」
「いたらすごいってねぇ・・・。現にここにいるじゃねぇか。」
「確かに。」
「ナガシィ君。ちょっとかわいいポーズ取ってみてよ。あっ。それか女の子の声出して。」
蓬莱はそれに期待するように言う。いや、そこまで期待するものでもないだろうと思った。すると今度は瀬野が、
「それでさぁ、「お帰りなさいませ。ご主人様」って言ってみろよ。」
「なんでだよ。」
「・・・カワイイなぁ・・・。ここまで女の子って思えてある意味すごい・・・すごすぎる・・・。下手したらあたしより女の子よりだろ。」
「いや、それない。」
「とにかくしゃべってよ。「お帰りなさいませ。ご主人様」って。」
「・・・ふぅ・・・「お帰りなさいませ。ご主人様」。」
「やっぱカワイイ。100パーセント女の子だ・・・。」
「えっ。そこまで・・・。」
と萌に聞いてみた。内心これは聞かないほうがいいとは思っていたけど。
「だってナガシィって男の子らしいところ少ないもん。知らない人が見たら、一見女の子に見えるかもね。男の子の服着た女の子って。」
(やっぱ聞かない方がよかった・・・。)
翌日。クラスには僕は女の子っぽい男の子で完全に定着してしまった。しかし、これが最初ではない。と言うのは男性の声はふつうに出せるのだけれど、普段ふつうに話すときは声変わりした後の声をほとんど出さなかったというのがあったから、中学でもよく女の子っていう目で見られていたというのは磯部から聞いていたことだった。そんなに僕はそう見えるのだろうか。ふつうなら男の子として見られたいところだけど・・・。それもあって、僕の扱いは萌の彼氏ではなく、瀬野の彼女という位置づけになってしまった。
放課後。放課後は同じくダンスの練習。今日はこれまで来ていなかった面々も全員揃い初めての1年生全体練習となった。
「そうか。お前はやっぱり女だったのかぁ・・・。最初見たときから女の子っぽいなとは思ってたけど・・・。」
百済がそうつぶやく。
「バカ、それ言うな。永島がかわいそうだろ。」
近畿が仲裁に入った。
「いや・・・。昔からそういう扱いだったときがよくあったから慣れては・・・。」
「それでも嫌だろ。下手したらお前の坂口さん逃げてくぞ。」
「それぐらいじゃ逃げないよ。ねぇ。」
「あっ。うん。」
「つくづく女の子同士が仲良く話してるようにしか見えねぇなぁ・・・。」
瀬野が言う。
それもあったけど、結婚式参加組は練習。練習。3回ぐらい全体で踊ってから、御堂筋を北に少し行くとあるサウンドファンに押し掛けることになった。サウンドファンではなぜか水上とも会った。ここで、レーシングゲームをやりこんでいるそうである。
カラオケに来たわけではないので、普段の声と全く違う声で歌う羽目にはならなかった。ミクの声で歌ってしまったら余計女の子説が定着してしまう・・・。そこでは「太鼓」でバトルしたり、水上がやっていたレーシングゲームを見たりして、結構な時間をつぶした。
「萌ちゃんスゴ。太鼓ほとんどパーフェクトじゃん。」
「そりゃパーフェクトだよ。オニレベだってコンボ100ぐらい行くことがあるよ。」
(やりこんでるなぁ・・・。)
「でも、PFPだけどねぇ・・・。」
萌がやっているところとか、結構いろいろ見ていたら、だんだん眠くなってきた。それはそうだ。もうすぐ9時をまわろうとしている。みんなには今は序の口だろうが、僕にはとっては寝る準備を進める時間だ。
9時を回ってしばらくたってからサウンズファンを後にした。
その帰り道、
「はぁ。結構遊んじゃった。・・・どうしよう。」
「どうしようじゃないって。」
「こういう時ナガシィいいよねぇ・・・。やることほとんどないんだからさぁ・・・。」
「・・・。」
ふと後ろを向いた。後ろを歩いていた人たちがなかなか来ないことを確認すると同時に・・・。
「30000。」
と叫んだ。その声で僕の近くを歩いていた人たちの目が一斉に御堂筋線のほうを向いた。
「ホントだ・・・。」
「ヤベぇ。メチャクチャテンションあがる。」
「まぁ、今日こっちに来るとき乗ったけどなぁ・・・。」
「・・・あれってさぁ、御堂筋に一本だけなのか。」
水上が聞いてきた。僕はそれにこたえれなかったが、それには高槻が答えた。
緑地公園まで歩いて、御堂筋線で帰る人たちを見送った。瀬野も同行してみんなを送り届けた。それから僕たちはどうするか迷っていた晩ご飯のことを考え始めた。
「どうする。今日はあたしがおごるけど・・・。」
瀬野がそう言う。
「えっ。でもおごってもらうってなんか悪いなぁ。」
「いいよ。今日はあたしのせいで長く引き止めちゃったんだし。本当にごめんな。だから、今日は二人分おごるわ。」
「えっ。私までいいの。」
「だからいいって、いいって。今日はあたしが悪いんだし。」
その結果僕たちは笹子観光の裏にあるカレーイチバンで食べることにした。さすがにおごってもらうという経験も初めてだし、瀬野の財布の中を緊迫させてもなぁと思ったため、ここで一番安いポークカレーを頼んだ。萌はカツカレー。少しは豪勢に行きたいと思っていたのだろう。
カレーと食べるとお腹もいっぱいになって、とてもすぐには動ける状態ではなかった。
「へぇ。結構なことしてたんだなぁ・・・。あたしの学校にはそんなの無かったから・・・。うらやましいなぁ・・・。その代わりにマン研みたいなのがあったけどなぁ。」
「やってたの。」
「いや、やってない。それよりもあたしは絵描いてた。って言っても美術やってたわけじゃないけどな。」
とことわってから、
「あたしちょっと話作ったりするのに凝ってて、今30人ぐらいの設定作ったんだけど・・・人間じゃないってなるパターンが多いんだよねぇ・・・。」
「・・・それだったらナガシィもそう言うことしてたよねぇ。」
萌がつぶやいた。
「永島もなんか話の設定作ってたりしたの。」
「えっ、まぁ。でも、世界観がフォースウォーズに似ていすぎるんだよなぁ。将軍級の人はライトセイバー振り回すし、フォースみたいな力使えるし・・・。一つだけ違うとすれば、あっちはフォースは最初から宿ってるものだけど、こっちは半分の命と引き換えにえることができるってなってることぐらいかなぁ・・・。」
「SFかぁ。ていうかそこまでできてるならなんか作ったんじゃない。」
「えっ。うん。」
それで自分が中学生の時に考えたストーリーのことを話し始めた。
「舞台が西暦2500年。その時人間は200歳まで普通に生きれるようになってて、老化するスピードも遅くなってる。つまり、100歳になっても若者と同じぐらいの身体能力が残ってるってことな。話が前後するけど、そのちょっと前に水星が消滅しちゃって、人間は計り知れないほどの技術力を手に入れる。その技術を糧に今大国って呼べる国々は宇宙に進出する。日本はそれにちょっと出遅れて、侵略戦争って形を取りながら、領土を広げて、銀河を統一。平和が訪れる。あっ。先に宇宙に進出していった大国は滅んでないよ。そいつらは日本の見方だから・・・。で、平和になった後に水星の消滅した理由を知りたいわけじゃない。研究者がそれを研究して、そのすべてが分かると、その時代が終わり、時間がまき戻って現代になる。それでもその末裔が作った船とかは現代に残る。それを調べたいわけだけど、現代では未来に末裔が持っていた技術力を知ることができないっていう風に終わるんだけどねぇ。」
「すごいなぁ。あたしも結構設定に凝ってる方だとは思ってたけど、そこまで設定に凝ってるなんて思ってなかったわ・・・。」
瀬野はこれに感心した。確かに。これは設定に凝りに凝って作った物語である。しかし、これを書くには世界観が似ていすぎるということと自分にその執筆力がないということで物語は実体化できないと断った。
そのあと500系の在り方がどうかという話で盛り上がり、結局店を出たのは23時を過ぎてからだった。それから寝る支度をして、お風呂に入る。布団に入った時間は0時06分だった。
(明日学校なのに・・・。初めてだなぁ・・・。次の日になってから寝るの・・・。)
すぐに寝付いた。起きると4時32分。ちょっと布団の中でゆっくりして、6時30分ごろ。ごはんを食べて、学校に行った。昨日集まった人は死にかけていた。
永島智暉という人物がようやく完全に固まりました。
まず、女の子よりの顔と声。その度合いとしてはすっぴんでも通用するほどの女子。つまりもう名前以外はただの女子という感じになりました。
最初はここまでにするつもり・・・あったか・・・。
ですから、この先も女子で通していくところが多々あると思われます。その例としては、教室の机に座るときに内またになるとか。のどぼとけがどこにあるのかわからないとか。手のひらを口の前で合わせて、いかにも可愛く見せているというような仕草とか。
なお、主人公のほかの点ですが、声は女子寄りとしています。つまり、アニメになったら(なるわけないけど)声優は女性の方にやっていただくと言うのが第一でしょうね。しかし、それだけで終わりません。永島は結構特殊です。普段の声は女子でも真剣になったら男子。さらに、歌うときはさらに声色が違い、曲によっても異なります。もちろんですが、駅のアナウンスや車掌のアナウンスをするときは特有のしゃべり方になったりといろいろ。なんですかこのハードル。
もし、主人公を演じるようになった声優さんがいたら、謝ります。主人公はとても声優にやさしくないと・・・。




