199列車 面々と時刻表
全く関係ない話。
もし、壊れたトンネルの壁面から白骨化した人骨が出てきたら、あなたはどうしますか。
僕はこれ見てられません。
しかも、これが実話というから驚き。石北本線の常紋トンネルというトンネルで本当にあった話だそうです。
4月23日・・・。
「はっ。交通サークルに入った。」
端岡の目が点になる。その理由は分からないわけじゃないけど・・・。
「なんで入ったの。萌じゃないんだから、4年たったらオタクになるとかやめてよね。」
「いや、オタクにはならないって。萌じゃないんだから。あんなの覚えられないよ。」
すぐに否定した。まぁ、あんなふうに覚えられたら、それはそれですごい。しかもそれが女子となったらそれだけでもすごいだろう。大体女子は鉄道に興味を持つ人は人生の中でまだ二人しかあっていないのだ。
「・・・でなんで入ったか理由聞いてないけど。」
「いや・・・。入ったっていうか入れられたって感じ。」
「・・・入れられたかぁ。誰かに入ってって言われたわけ。」
「・・・。」
正確にはその要因は二人いたと思うが・・・。
一方・・・、
「何。お前交通サークルに入ったんだ。・・・永島じゃないんだから。俺だってこれは何系だなんて知らないよ。」
と言ったのは幼馴染の長浜だ。今言うことではないけど・・・。
「・・・。少しは知りたいの。永島君すごいじゃん。電車がしゃべるとかふつうに言うし。」
「いや、それはお前が思っているのと何かが違うだろ。」
「それはそうだけど・・・。」
「・・・そう言うことだったら永島に聞くだけでいいだろ。俺でも理解できないほどの答えが返って来るぞ。」
「永島君のアド持ってないし・・・。」
(持ってたらあいつ殺してるけどな・・・。)
「それで今日活動があるって言ってたから、それに行かなきゃいけないんだけど・・・。」
「あっ。分かった。さっさと行って来い。」
そう言って長浜がそう言ったので、永原は分かれて、交通サークルの部室のほうに向かった。途中で黒崎と会って、無理やり黒崎を部室まで連れて行った。黒崎のほうはもう行きたくはないらしい。部室には一人しかいなかった。
「誰。」
相手がそう聞いてきた。
「あ・・・。今年から交通サークルに入る永原萌です。よろしくお願いします。」
「く・・・黒崎梓です。よろしくお願いします。」
「あっ。そうなの。・・・これってまた善知鳥が無理やり連れてきたバージョン。」
そう聞いてきたので、二人とも小さくうなずいた。
「迷惑かけただろうね。・・・君たちって電車でどこか行ったことある。家族でどこか行ったとか。」
黒崎にはそういう経験はない。そして、永原にもそういう経験はない。あるとすれば修学旅行ぐらいだ。修学旅行のことを言ったけど、その人はすぐに修学旅行以外でとも付け加えたから、無いのと同じになった。
「じゃあ、時刻表の読み方とかも知らないよなぁ・・・。こんな人たち入れて、どうするんだよ・・・。」
「それより、先輩の名前聞いてないですけど・・・。」
「あっ・・・。枚方徹夫。みんなからは枚方って呼ばれてるからそれで呼んで・・・って言っても枚方って漢字分かる。」
「えっ。ひらかたってあの平らに片方の・・・。」
「違うって。大阪に枚方市あるじゃないか。その枚方。何枚の枚に片方の方。」
「あっ。分かりました。」
「話すことがないな・・・。」
これで会話のほうがなくなってしまった。初めて会ったということもあって、話すことがない。これは黒崎たちにも言えること。だから話をするのはもっぱら女子同士ということになる。しばらく時間が経つとまた一人増えた。
「こんにちは。」
「君たちは鉄道に興味あるの。」
その人はそう聞いてきた。それにないと答えると、
「うん。そうだよなぁ。女子で鉄道に興味あったらそれこそすごいからなぁ・・・。」
「そこまですごいこと・・・。」
「うーん・・・。すごいっていうか、女子はふつうそういうことに興味持たないからなぁ。持ったとしてもそれが何系かなんてふつうは分からないよ。」
これはさっき枚方先輩も言っていた。
「あっ。話変わるけど、部活の先輩ですか。」
「えっ。今年からだけど・・・。」
「あっ。じゃあ、同年代なんですね。僕も今年からですから、4年・・・いや、よろしくお願いします。僕は津田愼哉です。」
相手はそう言った。それからまた同学年の石動遼太という人が来て、先輩がどしどし部室にやってきた。今回は予定表を渡してそれだけで終わった。それ以外は別に何もすることはなかったらしい。
「あっ。アズタン。モエタン。渡したいものあるからちょっと待って。」
「えっ。」
二人の声が揃った。アズタンとモエタンが誰のことを指しているのかということは分かったけど、いつの間にか自分たちにあだ名が付けられているというのは意外だった。
(アズタンかぁ・・・。善知鳥先輩じゃなくて、鳥峨家に梓って呼ばれたいよぉ・・・。)
心の中の叫びが言葉になったらこのことで何か言われそうな気がする。これは声には出してはいけない言葉だと自分に言い聞かせた。
「なんですか。」
そういうと二人に分厚い本が渡された。表紙には時刻表と書いてあって電車の写真がある。まぁ、これが何系というには萌たちには簡単に分かることだろう。電車である以上知らないわけがないと思った。そして、分厚い本の中を開いてみる。表紙をめくって最初のページには目次。大体どこに乗っているかというのはこれで分かるようになっているというのは見当がつく。しかし、どんどんページをめくっていくとついにわけのわからないページが出てきた。びっしりと数字が入った時刻表のページ。旅行代理店の人や鉄道マニアにはこれはふつうに読むことができて、理解もできる。
(萌こんな頭の痛くなるような本のどこが面白いの・・・。)
その疑問を今萌にぶつけたくなった。萌が言うにはこれを読むことができるようになれば、結構楽しいらしいけど・・・。つまり、読むことができなかったらこれは頭痛を促進させる本でしかないということ。
(うわぁ。鉄道知ってる人ってこれ全部理解できるんだよねぇ。ある意味すごいわ。こんな本だけで妄想できるんだもんねぇ。ていうか、世の中にこれ読める人ってどれぐらいいるんだろう・・・。)
永原のほうはこう思っている。中のページは何も理解することはできない。理解できるのは左側に駅名が乗っているということと他には全部時刻が載っているということ。
「・・・。」
「大丈夫。それはあたしだって分かんないから。でも、心配することないよ。これふつうに理解できる人がいるから。」
「黒崎ちょっとそれ貸してくれないかなぁ・・・。」
津田がそう聞いてきた。自分が持っていても到底理解できないので津田に渡すと、
「当然だけど100系も300系ももういないのかぁ・・・。」
と言った。そのあとどんどんページをめくって、
「あれ、東京から静岡に行く普通なくなってる・・・。あれ「日本海」は定期じゃなくなるだけかぁ。時間くり下がってるし・・・。あっ。でも上りはそのままなのかなぁ・・・。後目立って変ってるところは常磐線と紀勢本線だけかなぁ・・・。」
津田の独り言の内容は鉄道のことだということ以外は全くわからない。「日本海」がどうの言っていたけど、そういう列車が走っていたこと自体知らないのだ。それが定期じゃなくなるだけと言っていたけど、なくなったらそれはイコール廃止のことで、もう走らないという意味ではないのだろうか・・・。
「ちょっと。それ見せて。」
今度は津田から石動に時刻表が渡る。
「なるほど。紀勢線全部「くろしお」になってる。なんで「オーシャンアロー」に統一しなかったんだろうなぁ・・・。北陸線が「サンダーバード」なんだから同じ流れで「オーシャンアロー」だと思ったのに・・・。」
石動はさらにページをめくって時刻表の後ろのほうまでページをめくっていった。ページの色は青からピンクに変わっている。
「あっ。東北でE4の16両やめたんだ。で、その代わりにE2が進出したってことね・・・。うっ。「グランクラス」意味ねぇ・・・。「はやて98号」ひでぇなぁ・・・。後はそんなに変わってないかなぁ・・・。もう「はやて」も「はやて」じゃなくなってきたし・・・。」
そして、黒崎の手元にまた戻ってきた。
(この時刻表だけでそんなところまで分かるのか。やっぱりオタクの読む本だよなぁ・・・。)
また目を通してみたけど、これがどうなっているのかというのは分からない。
家までこの思い本を持って帰った。
「・・・。」
机に向かってじっと座っていた。するとドアが開く音がした。振り向いてみると妹だった。
「どうしたの。若葉。」
「ちょっと勉強教えてもらおうと思って。」
「・・・また。しょうがないなぁ・・・。で、教科何。」
「お姉ちゃんが嫌いな数学じゃないよ。英語。」
「・・・変わってないじゃん・・・。まぁ、まだましだからいいよ。」
テーブルに勉強道具を広げている若葉がふと顔を上げると何かに気付いたようだ。
「お姉ちゃん。何あの分厚い本。小説。」
「違うって。大学の先輩からもらったの。」
若葉はそれを見て、
「お姉ちゃん。これ読むの。」
「読む本じゃないって。それはオタクが見る本。あたしが呼んでも仕方ないってば。」
「・・・。お母さん確かこれ読めるよ。」
「・・・。」
お母さんが自分を生む前に何をしていたかというのは聞いたことがある。しかし、一度も時刻表の話が出てきたことはない。本当に読めるかどうか半信半疑だった。
しばらく若葉の勉強に付き添っているとお母さんが部屋に入って来た。
「お母さん。あれって読める。」
若葉がおもむろにそう聞いた。するとお母さんは自分の机まで行って、
「ええ。昔、高校で運賃の計算とかやってたから。それに旅行を組むことだってやってたし、これぐらい分かるわよ。」
(意外だ・・・。)
「何。梓も大学でこういう勉強するの。」
「・・・。いや、そういう意味じゃないけど・・・。」
「読み方わからないんだったらお母さんが教えてあげてもいいけど、読めたら楽しいっていうのは私にもわかるから。」
お母さんはそう言ってから自分たちをご飯に呼んだ。
(読めたら楽しいかぁ・・・。もし鳥峨家とどこかに行くんだったら・・・。)
ご飯を食べ終わってから妄想をした。でも、これが読めないと妄想だけで終わってしまう。実際にプランを立てて、妄想の中だけでもいいから旅をしたくなった。
夜。若葉に内緒でお母さんに時刻表の読み方を教えてと言った。
今回からの登場人物
瀬戸学院大学
枚方徹夫 誕生日 1991年4月15日 血液型 B型 身長 167cm
津田愼哉 誕生日 1993年4月12日 血液型 A型 身長 166cm
石動遼太 誕生日 1993年7月22日 血液型 O型 身長 164cm
黒崎家の人々
黒崎若葉 誕生日 1995年6月5日 血液型 B型 身長 154cm
黒崎雪菜 誕生日 1963年3月20日 血液型 O型 身長 165cm
瀬戸学院大学
枚方徹夫
由来は京阪電鉄枚方市駅。
津田愼哉
由来は片町線津田駅。
石動遼太
由来は北陸本線石動駅。
黒崎家の人々
黒崎若葉
次女。現在小楠高校普通学科2年生。美術部所属。学力は姉よりない。
黒崎雪菜
梓と若葉の母。時刻表については少なからず何か知っている模様。




