195列車 面白疑惑
前回の答えは名寄本線沙留駅。
文章からルだけ去っていくという意味から。
四国のとある駅です。
「節分だけは絶対やれない。」どこでしょうか。
4月16日。まだ授業は一通り終わっていない。まだオリエンテーションを行う授業がまだある。
「はい。それではこれは時刻表基礎ということで進めていきたいと思います。」
この授業も担当は難波さん。難波さんの授業は結構笑いがあって楽しい。難波さんはそう言ってから、普段見慣れた時刻表を取り出した。
「これ「JR時刻表」っていいますけど、これ今の今まで一度も見たことがないよという方。」
と聞いた。今そんな人がいるのかと疑いたくなったが女子の中には見たことがない人もいたし、長万部はいままで一度も見たことがないそうだ。男子で見たことがないというのは珍しいかもしれない。この「JR時刻表」。これはふつうに本屋で売っているものである。難波さんが言っていたが、これは「JR時刻表」というタイトルなだけであって非売品ではない。そして、すごくどうでもいい話だが、月一回必ず発行される月刊誌と同じ。また、内容がほとんど変わらない人気連載雑誌だとも言った。内容がほとんど変わらないといってもJRになった当初(1988年)と今の時刻(2012年)を比べれば、大きく内容は変わっている。
「さて、時刻表基礎と言っても時刻表がなきゃ授業ができないから・・・じゃあ、私が経験した中でとても印象に残った話をしてあげましょ。」
と切り出した。
その話というのは面白い乗客の話である。最初に持ちだされたのは駆け込み乗車のことだった。普段から「駆け込み乗車はおやめください」というアナウンスを聞いたことがあるはずだ。車掌からしてみれば、あれはとても怖いこと。知っているかもしれないが、車掌はボタン一つで車両の数かける4枚ぐらいの扉を閉めることができるのだ。もし、駆け込み乗車があった場合、その人のために列車が数秒遅れることになる。鉄道にとって数秒は自動車の緊急車両と同じ扱いかそれ以上。安全を支えるうえで乗客一人の駆け込み乗車が全員に迷惑をかけると知ったら少しはやらない気になるだろうか・・・。それでもやりたいならば、鉄道を利用しないかもっと余裕を持って駅に行くことをお勧めしよう。
次に話されたのは飛び込み自殺。何とも暗い話題が続くものである。難波さんによれば鉄道への飛び込み自殺は自分のためにもやめた方がいいとのことだった。なんでかって、それを処理する乗務員や駅員の身にもなってほしいということと、自殺者の着ている服は原型がないほど破ける。もちろん内臓まで飛び出て、自殺する人も見るも無残な光景になるからだそうだ。確かに。そんな光景は僕だって見たくない。自殺するんだったら、樹海とかでひっそりと自殺してほしいといっていた。まして、飛び込み自殺をするぐらいなら、自殺するなと言っていた。
「他にもこういうお客様もいらっしゃいましてね・・・。」
難波さんはそう言うと顔が険しくなってきた。
「お客様の中にはですねぇ、今の駅12秒遅れたとかいうお客様もいらっしゃいましてね。その時も「誠に申し訳ございません。先ほどどこどこには12秒延着いたしました」とか言わなきゃいけないんです。皆さんそう言う人になるんです。」
(うわぁ。ウザッ。)
「他にも列車が緊急停止したときに「しばらくの間お待ちください」と言って車内に回りますと、「しばらくの間っていうのはあと何分だ」っていうお客様もいます。」
「・・・。」
「その時こっちは「あと何分で動くかこっちが知りたいわ」とか、これ決してお客様相手に言ってはいけません。こういう時も笑顔で「ただ今原因を究明しております。その原因が分かり次第発車いたします」というんですよ。そしたら、「その原因ってなんだよ」っていってくるんですねぇ。心の中では「こっちが知りたいわ」とか言ってますけど・・・。」
「・・・。」
話は面白いと思ったが、正直そういうのには当たりたくないと思った。まぁ、普段鉄道業務に従事している人たちだって、そういうお客様には当たりたくないだろう・・・。
「迷惑っていったらこういうのもありますよ。」
話のネタはまだ尽きないらしい。
「みなさんホームで友達と別れるときにこうやって「おう、またなー」とかってやったことありません。」
難波さんは両手を大きく振り上げて「さようなら」の動作をした。
「あれも辞めてください。あれ車掌から見たらですねぇ、列車発車していいのか全然わからないんですよ。特にその子が学生服とか来てた日には最悪ですよ。もっと言うとブレザー。」
僕たちはちょっと笑いながらその話を聞く。確かに、時折いるのだ。そういう人。
「あれですねぇ、駅員がやってたら、「危険です。列車走らせないでください」ていう意味なんです。こっちはどっちなのかなぁってみて、列車発車させます。それで横通ったら「おう、また明日なぁ」・・・。「そんな別れ、しなくていいです」。迷惑です。どこぞのガキじゃないんだから、高校生とかになったらお行儀よく、天皇陛下みたいな手の振り方してください。」
そのことに笑いをこらえられなくなって吹いた。
翌日。空き時間。
「はぁ、今日もまた笑ったなぁ・・・。あれ無いだろ。」
スーツ姿の平百合が言う。
「あの「サンダーバード号大学病院」か。」
「あれはある意味すごいだろ。「お医者様いらっしゃいますか」っていったら全員が手を挙げるって。」
この話は一度「サンダーバード」の中に急病人が発生したらしい。そして難波さんが乗務していた「サンダーバード」には難波さんと車掌長含め3人が乗務していたわけだが、車掌長以外のほかの乗務員と一緒に車内を歩いて医者を探したようだ。難波さんは4号車から1号車を見て回った。4、3、2号車と医者はおらず、1号車に入って「お医者さまはいらっしゃいますか」と言ったところグリーン車の乗客全員が手を挙げたとのことだった。これは偶然にも金沢で開かれる学会に出席するために医学界の人々がたまたま「サンダーバード」に乗車していたということ。そして、4号車から2号車にかけては偶然にも医者や看護師が乗車していなかっただけで5号車から9号車は出席する先生についていった助手や看護師だらけだったそうだ。
「・・・難波さんが忘れられない団体様っていうのがよく分かって気がする。」
「うん・・・。」
次の時間はまた授業。担当は摂津さん。
「みなさんでは左手を前にして、右手を下に。右手の詰めを隠すようにして、男子はベルトのところかその下。女子はおへその下ぐらいに持って行ってください。」
摂津さんの授業はお客様相手の授業が多い。こういうことになるというのは当然かもしれない。
「・・・次は肘から手の先がまっすぐになるように意識してみてください。」
「ナガシィ。これキツイ。」
萌が小声で話しかけてきた。
「キツイのは誰でも同じ・・・。」
「男子はちゃんと立って、片足に体重をかけないようにしてください。女子のほうはこれからさらに難しくなりますけど・・・。」
摂津さんはそう言ってから前に出て、手で足の配置を見せた。それも左足のかかとが右足の真ん中ぐらいの位置になるようにと言った。
「ナガシィ。あれふつうにできる。」
「ちょっと皆でやってみようか。」
今日は特例で全員で女性の立ち方をした。
「それぐらいふつうにできるんじゃない。」
僕はふつうに摂津さんに言われた通りの足の組み方をした。立ち方的にはさっきよりは楽になった気分だ。摂津さんは後ろに固まっている木ノ本たちのほうをまわってから、前に方に回ってきて、僕の足を覗いた。
「メチャクチャきれい。」
摂津さんは感心したのか驚いたのか・・・。なんか信じられないという声をあげた。
「えっ。お前まさかこっちだったのか。」
右隣にいた栗東がそう言った。あれは明らかに「オカマ」というサインである。
「違う。」
「やっぱりナガシィってどことなく女の子っぽいって思ってたけど、まさか・・・。」
「お前まで何言ってんだよ。違う。俺は男の子だ。」
「お前骨盤おかしいだろ。無理だって。」
後ろにいた平百合も言った。
「いや・・・できるでしょ。ふつうに。」
「そのふつうがおかしいって・・・。」
そのあとこのようなことで徹底的にしごかれて、ようやっと授業のオリエンテーションに入った。
今日は最後に行われる選択授業の手話を見てから家に帰った。
「いやぁ。今日はナガシィが女の子っていうことが分かって焦ったけどさぁ。」
「だから・・・。」
「そんなこと分かってるよ。ナガシィは女の子っぽいだけだもんね。・・・前テレビでやってたけどさぁ、ナガシィって女の子座りふつうにできるよねぇ。」
「えっ。女の子座りって。」
「・・・ナガシィふつうにできてるじゃん。あれだよ。あれ。」
「ああ・・・。あれ女の子座りっていうの。」
(今の今まであれどういうのかわからなかったんだ・・・。)
「ていうか・・・俺ってそんなに女の子っぽい。」
聞かないほうがいいカモとは思ったけど、今純粋に気になっていることなので聞いてみた。
「「キャア」っていう声ホントに女の子だもん。」
(やっぱり聞かない方がよかった・・・。)
今回からの登場人物
笹子観光講師
摂津友希子 誕生日 1980年2月14日 血液型 A型 身長 162cm
永島は女の子っぽい男の子。これを貫き通します。
…掛けるので、今書いてしまいます。永島の普段着(春から夏と夏から冬にかけて)は長袖にチェック柄のワイシャツを羽織った格好です。ズボンはその時の気温に応じてです。




