パーティーを追放されました(強すぎて)
思い付きで書く短編シリーズ
好評でしたら、そのうち連載もあるかも?
「お前はもうパーティーにいらない」
宿の一階にある酒屋で、パーティーメンバーと今日のダンジョン攻略階更新を祝して宴会をしている最中だった。宴も終わり明日からの話を自分から持ち掛けた時に、どうにも空気が重くなったと思ったらこれだ。
「は?ん?意味わからん?冗談か?」
「本気だ」
幼馴染の男2人と女2人で組んだパーティーだ。もしかして自分以外が”デキて”いたりとかするのだろうかと、心臓が早くなるのを感じた。
「なんでだよ!今日の攻略だって上手く行ってたじゃないか!?」
幼い頃からダンジョンに入り始め、皆18歳を迎え体も出来上がって来て、これからだというところなのに、何故追放されなければならないか皆目見当がつかない。
「お前……俺らより強いじゃないか」
「…いや?」
「本当はどうなの?」
「…少しだけだろ!」
「それが問題なのよ!!」
ついに女性二人も参戦してきて、自分だけが3人より強いことを責め立て始める。「何も悪い事では無いじゃないか」と言っても彼らは聞きはしない。
「お前……エリク、今回の攻略で俺達の事ずっと気にしてただろ?」
「そうそう、なるべく敵がこっちに来ないようにしてたしょ」
「……それは、してた」
「更に敵を倒せる場面でも、私たちの経験の為に譲ってたり…」
「…しました」
彼・彼女らは幼馴染だ。
共に村を出て大冒険をしようと幼い頃に誓った仲間たちなのだ。強くなって欲しいのもあるし、傷ついて欲しくないのもあるから、なるべく自分が出来る範囲でサポートするようにしていた。だがそれが悪い事だとは思っていない。
「エリク、お前もっと上目指せるよ…ダンジョンに潜るから下の階を目指せるって言ったほうが正しいのかも知れないけど、お前俺達と一緒にいない方が良い」
「いや、でも幼馴染だろ?」
「それでも、今日エリクは俺達が居るから上階に行くのはやめただろ?」
「みんな疲れてるだろうなと思って…」
「この先、ダンジョンの下に潜って行ったら強敵と戦う事になる。その時エリクは俺達に”背中を任せた”と言えるか?」
「……」
「言えないよな?」
「今は…「成長スピードもエリクが一番早い。この先で差が縮まる気がしないんだ」
「だからって…」
「お前は優しい奴だ…絶対に自分から辞めるとも、俺達に出て行ってくれとも言わない。だから、俺達がお前をパーティから追放する」
取り付く島も無い、有無を言わさぬ口調。
重苦しい空気のなかで、最後に「エリク、生き残れよ…俺達は別に友達を止める訳じゃない」と言われた事で完全な決別を悟った。
冒険者とそのパーティにはパーティの結成と解散や、メンバーの追放はつきものだ。
メンバーの追放と言えば素行が悪く追い出されるというイメージがあるかもしれないが、実際のところでは素行不良による追放が悪目立ちしているだけで、総数自体は人間関係のもつれ、実力差やそれから発生する金銭問題なんかが主なものにだったりする。
特に実力差という面に限っていうのであれば、エリクのパーティー追放理由と同じく、実力が上の者が抜けるという事が特に多い。
実力が上の者はより深い階層までダンジョンに潜ることが出来る。より多くの強敵と戦って金貨を稼ぎ名声を得て、良い暮らしと家族を手に入れたり、その功績から貴族に取り立てられたり、溜めた資金で何代も続く商家を起こす事もある。そこまででも無くても、ダンジョンの深い階層を安定して周回出来るのならば、かなりの良い暮らしが出来るのだ。
そしてより深い階層までダンジョンに潜る為には、仲間の存在が非常に大切と言える。どこぞの英雄譚や小説のように、ひとりで何でも出来る人間もいるかもしれない…が、その者が寝るときはどうする?疲れた時はどうする?得た成果を持ち帰る時はどうする?という話だ。パーティーを”キャリー”するというのは、よっぽど隔絶した実力が無ければ簡単な事でないから、結局同じくらいの実力で固めたパーティーを組んで、より多くの成果と安心を得た方が良いのだ。
という訳でエリクは翌日から冒険者組合に新たなパーティーメンバーを探しに向かった。
エリクはその日たまたまメンバーを募集中だった、男だけのパーティーに入ることになる。
「今日から、こいつも一緒だ」
「エリクです。よろしくお願いします」
「おう!」「よろしく…」
そこら辺を歩いていたらゴロツキとしか思えない斥候と、そのゴロツキに絡まれそうな根暗が顔から分かる魔術師に、自分をここに連れて来たどこにでもいそうなオジサン剣士。パーティー構成はここにタンク役のエリクが加わる事でバランスのいいものとなるが、人間性の面を見ると歪というより極端だ。
ゴロツキ斥候が根暗魔術師を虐めてそうに見えるが…以外に男だけのパーティーというのはそうでもない。同じくらいの実力で集まるパーティーは、性格が正反対でもお互いに尊重できるからだ。まぁ、そもそも尊重できない奴は、ダンジョンから帰って来ない事も多いわけだが……
「ギルドのランクは?」
「冒険者組合認定だとD3ランクらしい、国家認定の方はレイドに参加してないらしくてなE2ランクだとよ」
「ほぉ、その年齢でD3は優秀じゃねえか?」
そして勿論ランクで値踏みされるのがこの職業だ。
自己紹介が住んだら初日のパーティー活動が始まる。
お互いの実力を把握と連携の練習も兼ねて慎重にダンジョンの階層を潜っていく。パーティー結成初日から1週間程度はこの慣らしに使われることが多い。何故か?昨日まで全く見ず知らずの人間といきなり命を預け合うのは、誰でも無理だろう。実力者同士だと顔見知りが多いが、下のランクはそうではない。
「エリク!お前本当にD3か?強くないか?」
「そうですかね?」
「少なくともD1の俺達より強い気がするぞ」
ダンジョンの中で焚火を囲み、食事していた時に言われた言葉に、エリクはどこか暗くなる気持ちを抑えられなかった。頭の中にまたパーティーから追放されてしまうのではという不安が過るのだ。
「出来れば、このパーティーにまだ参加させて頂きたくて」
エリクの不安の吐露だった。
「あぁ、それは構わんよ」
「本当ですか!?」
「うん?あぁ、勿論……エリク、お前パーティを変えるのが怖いのか?」
「えぇ、なんでわかるんですか!?」
「いや、若い奴…特に駆け出しにありがちだからな」
エリクに実力の話をしてから、彼の表情には動揺がずっと現れていた。それを見抜いたオジサン剣士の気遣いだ。
「所属パーティーなんて、別にいくらでも変わるもんだぜ?」
荒い口調のゴロツキ斥候まで参加してくる…根暗魔術師は静かに焚火を見ていた。
「そうそう、このゴロツキな顔面な男なんて俺達が10番目のパーティーだ。俺達と組んでからは長いけどな。この魔術師もゴロツキと一緒に5つ以上のパーティを回ってる。実力が丁度合ってるらしい」
「そうなんですか…?」
「それに俺なんて、このダンジョン都市に輝くAランクパーティ”スパーダブローダ”の”折れない鉄剣”フォルカーと最初は組んでたからな」
スパーダブローダなんて、このダンジョン都市で2番目に大きなパーティ・クランで実力者揃いだ。正直このおじさん剣士では、全く入る資格が無いくらい。もちろん自分も無い。
「オッサン、またその話かよ!嘘くせぇ」
「えぇ、嘘なんですか…?」
「嘘じゃねえぇ!いつかフォルカーに会ったら聞いてみろ」
「会えねぇよ!」「聞いてみますね!」
ゴロツキ斥候とエリクの返事は違った。ゴロツキ斥候はこれ以上の自分の成長を信じれておらず、エリクは内なる向上心が、ダンジョン都市で2番目のクランに会えるところまで行けると信じているからこそ出た言葉だった。
結局この向上心の違いが、彼らのパーティーが続くかに大きく影響した。
約3ヶ月間に渡って挑戦し続けたダンジョンは、全員の階層自己記録更新という結果が表れた。
確かに結果としては良いかもしれないが、中身を見てみるとエリクは余裕をもって攻略、他三人は這う這うの体で攻略と言った具合で、誰の目から見ても実力が合っていないことが分かった。
「エリク、お前はもっと上に行け!」
これが、エリクにとって3カ月ぶり2度目のパーティー追放だった。
はじめまして。都津 稜太郎と申します!
再訪の方々、また来てくださり感謝です!
今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。




