ぼくんちの
『ただいま』でおうちに帰ると いつも同じにおいがする
甘いおやつのお菓子じゃなく お母さんのにおいとも違う
………もろく、古ぼけたぼくのおうちの木の柱のにおい。
お父さんより大きな柱 抱きしめてぐるぐる回ってみると
ギシギシと泣き出す音 落書きと傷だらけの柱今日も
ぼくのおうちを ちゃんと支えてくれてるね…ありがと
夕暮れ空 赤い街の向こうに
バイバイと 手を振ったともだち
初めての別れにぼくが泣いたあの日は
きみは泣き出さず、あのにおいだけがしたんだ
言葉はなく でもそばにいたんだ
お父さんお母さんのいない お留守番のあの夜も
お母さんとけんかして
大嫌いと叫んで ぼろぼろごめんなさいと泣いたあの日も
誰よりもそばで全部全部 ……見ていてくれたね
大人になっていま僕は 古びれたあの小さな家を出たんだ
とてもあたたかな人と守りたい家が できたんだ
ちゃんと守って、いけるかなぁ…?
抱きしめたこの家の柱から またきみと
……おんなじにおいがしたんだ
あのロケットの落書きはぼくの夢だった宇宙飛行士でね、
あの『すき』って言葉は確か1年生のころ恋してたあの子への思い、
ああ… 上のほうにはあんまり描いてないや
僕の今の背がこの高さに刻まれるころには
もうそんなこと、忘れちゃってたみたいだよ…




