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私は誰なの?~突然女子高生の幽霊になった私の物語  作者: 星野 満


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25/28

25. 美樹ちゃんの日記帳

※登場人物紹介


◇ 首なし女子高生幽霊(私)………湖の精霊?


◇ 上杉 美樹(うえすぎみき)………桜花高校一年時、別荘の湖で溺死

◇ 明智 詩織(あけちしおり)………同高校二年生 美樹の親友

◇ 織田 海斗(おだかいと)………同高校二年生 美樹の幼馴染

◇ 北条光(ほうじょうひかる)………同高校二年生 美樹の従兄


◇ 上杉 京香(うえすぎきょうか)………美樹の母親

◇ 上杉 エリック(うえすぎえりっく)………美樹の父親

◇ 北条 武士(ほうじょうたけし)………美樹の叔父 光の父親

◇ ◇ ◇ ◇




「北条君、美樹や私のことをそんなに思ってくれてありがとう」


「!?」

「あ、美樹の叔母さん!」


 詩織ちゃんと織田君が一斉に部屋の入口に目線を移しました。

 ドアを開けて入ってきたのは美樹ちゃんのお母さん、京香さんでした。


「叔母さん……」


 項垂(うなだ)れて泣いていた北条君も、顔をあげて京香さんを見つめます。



「ごめんなさいね。悪いと思ったけどドアの外で聞いてしまったわ」


「あ……僕らの話を……」

「ええ……」

「叔母さん、ごめんなさい。謝って済むことじゃないけど、ごめんなさい」

「詩織ちゃん……」

「僕も、僕もごめんなさい。僕がよけいなこと言わなければ美樹は……」


 詩織ちゃんと北条君が、京香さんの側に寄って涙声で謝ります。


「二人共、謝る必要なんて何もないのよ」

「でも……」

「詩織ちゃん、そして光も本当にもう謝らないでちょうだい」


 京香さんは笑顔で首を振りました。

 それでもキッとした表情になって、二人に諭すように言いました。


「美樹はね、あなたたちが思っているそんな弱い娘ではないの、もっと強い娘よ!織田君に振られたくらいで身投げする(むすめ)じゃないの!」


「!」 

 

 二人の後ろにいた織田君もビクッとなりました。



「そうだけど……」と詩織ちゃん。


「いいえ詩織ちゃん、どうか聞いてちょうだい!あの日は光が言ったように晴天だったわ。夕方から突然天候が変わって物凄い大嵐になったのよ!あの時の美樹は、単に運が悪かっただけ!」


 京香さんは語気を強めました。

 三人はその気迫にのまれたのかシーンと静まり返ります。

 

 その後で京香さんはあの日のことを淡々と話していきました。



「──昔、美樹の祖母がよく私が幼い頃、子守唄を歌ってくれたの。

『ももとせの月見月(つきみずき)に、水神(みずがみ)様が家来の魚の大群を引き()れて百年に一度大嵐(おおかぜ)を起こす』て。昔からいい伝えられてる鏡湖(かがみこ)のわらべ歌よ。あの大嵐はまさに百年に一度だった。──鏡湖付近の旅館やペンションは浸水のせいで家屋が壊れて、今も修繕中だし、近隣の林の大木もそうとう雷で焼け落ちてしまった」


 京香さんは一年前の大嵐の大災害を思いだしたのか、ぶるっと身震いしました。



「──多分美樹は、いつものようにダイビングした後、直ぐにボートを漕いで乙女涙の島から戻ってくるはずだったと私は思ってる。きっと二人のことについても、日記帳にそう美樹は書いてあるはずよ」


 そういって京香さんは手に持っていたラベンダー色で、サイズがB6程の日記帳を三人に見せました。


 それは、表のカバーは耐久性のレザーで星型の金色のロックが付いていました。

 なかなかお洒落でコンパクトな日記帳です。



「叔母さん、それ……美樹の?」


 織田君が訊ねました。


「ええ織田君、美樹はね、ああ見えてけっこうマメな娘で、小学生の頃からいつも日記をつけてたの。もう何十冊も部屋の棚に置いてあるわ」


「そうなんだ……」

 

 今度は詩織ちゃんが意外そうにいいました。


 北条君が疑問に思ったことを口にします。


「なら叔母さん、美樹はあの日も日記に書いてたの? あ、でも昼間だから書く訳ないか」

 


「ううん光、あの子はね、何か嫌なことや嬉しいことがあると直ぐ日記に書くの。『文章にして書くと気分がすっきりする』って、よく私に言ってたわ。だからあの日も鏡湖(かがみこ)で、美樹が潜る時に持ち歩くバックに着替えと、この日記帳が入っていた。でも……読むことは叶わないわ」


「叔母さん、何で?」詩織ちゃんが聞き返します。



「美樹は中学二年生から鍵付の日記帳を使い始めたの。やはり子供の頃と違って親に読まれたくないのか、用心してたみたい。美樹が亡くなった日も、持ち歩いていたけど鍵がしたままで開かないのよ」


 京香さんは手に取っていた日記帳の星型のロック鍵に触れた。


 おしゃれな日記帳だが、よく見るとラベンダー色が日ヤケでところどころ色あせていた。

 

 カバーには可愛い有名な“さんメロ”のマスコットシールが何個か貼ってあった。

 さんメロは美樹のお気にいりのキャラクターだ。



「え、でも叔母さん。美樹の部屋とか探したらスペアキーが見つかるかも」


 北条君がすかさず言いました。


「一応探したんだけど、他の日記帳の鍵は見つかったのよ。美樹は最後に書き終えた物は、必ず鍵をカバーに添えてたから。でもこの日記だけはスペアキーが見つからない。常に持ち歩いていたから本キーを、あの嵐の晩に落としたのね、もしかしたら湖の中からもしれないわ」


「じゃあ叔母さん、だったら、この際ニッパーとかで開けちゃったら?」


 さらに北条君が提案しました。


 織田君と詩織ちゃんは美樹ちゃんの日記があると知って、逆に幾分戸惑った表情でしたが、北条君はどうしても美樹ちゃんの日記を読みたいみたいです。




「そうね、そう思ったんだけど……やはり最後に美樹が持っていた遺品だから、できれば傷をつけたくないのよ」


「あ、そうか……ごめんなさい」北条君は顔を赤らめました。


「光、謝らなくていいわ。本当は亡くなった娘の日記を読むのもどうかと思ったけど、あなた達の話を聞いていたら、美樹がどんな気持ちだったのか。──あの日の美樹の思いが何か分かればいいなと。それも話したくて、今日二人に来てもらったの」


「「叔母さん……」」


 織田君、詩織ちゃんは京香さんの顔をしっかりと見つめました。



「あなたたちの心が少しは晴れるんじゃないかと思って──それを言いたくて持ってきたのよ」


「でも叔母さん。私、逆に怖いわ。だってもしあの日、美樹が日記に『私を絶対に許さない!』とか書いてあったら……私、もう……どうしていいか……」


「俺もです。美樹が俺のこと好きだってわかって、俺が詩織にしたこと恨んでいたら……俺、俺」


「いいえ大丈夫、それは絶対にないわ!」

「どうしてそんな風に言い切れるんですか?」

 

 詩織ちゃんが聞き返しました。


「それはね──」

 

 京香さんはにっこりと女神のように詩織ちゃんに微笑みました。






※明日(1/10)も投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
おぉ、おぉ…やはり美樹ちゃんは強い子って、お母さんも言ってますね〜… でてきた日記帳には何が書かれているのか…? さんメロ〜〜wあのウサギちゃんのアレですかねw
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