24. 北条君の苦悩
※登場人物紹介
◇ 首なし女子高生幽霊(私)………湖の精霊?
◇ 上杉 美樹………桜花高校一年時、別荘の湖で溺死
◇ 明智 詩織………同高校二年生 美樹の親友
◇ 織田 海斗………同高校二年生 美樹の幼馴染
◇ 北条光………同高校二年生 美樹の従兄
◇ 上杉 京香………美樹の母親
◇ 上杉 エリック………美樹の父親
◇ 北条 武士………美樹の叔父 光の父親
◇ ◇ ◇ ◇
ぼくは 相手に見透かされるのが苦手。
だから親友にも 心を見せない 見せたくない。
あいつはモテる あいつはモテる。
ぼくもモテる ぼくもモテる けどあいつほどじゃない。
だから ちょっとだけ 癪にさわるんだ。
だから あいつをすぐ からかうんだ。
ふふん むきになる バカなあいつ。
だから あいつは おもしろい。
晴れた日──。
爽やかな夏空 白い雲
真っ青な鏡の湖が光っていた。
あの日も ちょっとした 気まぐれだった。
また あいつら コソコソと逢引してる
だから 美樹に 教えたんだ。
二人は 林へいったよ──。
二人は 林へいったよ──。
ぼくの いつもの 気まぐれ。
美樹が あいつを 好きなの知ってたから。
面白く なりそうだ そう思っただけ。
ぼくの きまぐれ ただの気まぐれ。
ちょっとした あいつへの 意地悪。
モテすぎる あいつへの 意地悪。
ごめんよ ごめんよ 美樹。
ごめんよ ごめんよ 美樹。
軽い悪戯 ぼくの悪戯。
取り返しのつかない 残酷な悪戯。
◇ ◇
「北条、美樹に俺たちが付き合ってるのを気付いてって何故だよ?」
織田君が不思議そうに聞き返しました。
「別に……ただ美樹が織田と詩織ちゃんが付き合ってるって知ったら、さぞや面白くなるだろうなあって」
「面白いって、何でそんな余計なこといったんだ!」
と織田君は少し声を荒げました。
「…………」
北条君は無言で何かを考え込むように項垂れました。
私にはいつもの飄々として常にゆとりのある北条君とは違って見えました。
「……僕が悪かったよ。あの時は君たち三人の関係が、こじれそうで面白いって思ったんだ。ほんの軽い悪戯だった」
「悪戯──?」
「ああ織田、君が高校入ってから女子にやたらとモテだしたろう。僕は内心、それが気に入らなかったんだろうな。僕のノートいつも借りてるバカなくせにって!だからつい美樹にいっちゃった」
「は?何いってんだよ。お前だってモテるだろうに」
「まあね、中学は僕の方が断然モテてたよね、でも今は君が上!」
と北条君は苦笑いをしてくせ髪をキザに手でかき上げます。
「でも、どうして美樹が俺を好きだって分かったんだ?」
「そんなのすぐ分かったよ──僕は君と美樹を子供の頃から知ってる。君たち二人はいつも張り合ってケンカばかりしてた。でもある時、美樹がパタッと競うのを止めた。織田に絡まなくなった。僕は少し変だぞ?って美樹をしばらく観察してたら、美樹の目線は常に君を遠くから追ってるんだ」
「俺を?」
「うん、そして織田、君もだ。君も詩織ちゃんをいつも見つめてた。用事もないのに詩織ちゃんが美樹と離れて一人っきりになると、よく話かけてたろう。詩織ちゃんも織田と嬉しそうに接してたから、てっきり二人は密かにデキてると睨んだ」
「北条……」
「北条君」
詩織ちゃんが何かいいたそうな表情になりました。
「だからさ、早く美樹に分かって欲しかったんだよ!だってあのお転婆な美樹が片思いするなんて、らしくないって思ったから。何だか僕もムカムカしてきたんだ」
「酷いわ……美樹だって女の子よ。美樹の気持ち知っててそんな残酷なこと……」
「そうだよ詩織ちゃん、これで僕が共犯だって分かったろう。君のせいなら僕のせいでもあるんだよ!」
「北条君!」
「詩織ちゃんゴメンよ。今は酷く後悔してるんだ。後悔したって遅いけど……あの時、なんで美樹にいっちゃったんだろうって!美樹が二人のラブシーン見なかったらって!何度も何度も後悔した!」
「北条君……」
「君の言う通りだ、美樹はあの日は湖に潜らなかっただろう。叔母さん昔からよく言ってたんだ、『美樹は嫌なことがあると直ぐに潜ってスッキリするんだって!』そうだ、僕は叔母さんにも残酷なことをしたんだ!」
北条君は両手で頭を抱え込みました。
「美樹の叔母さんはいつも僕に優しくしてくれた。いつも、いつも。小さい時に母さんが死んでから、僕は叔母さんが凄く凄く好きだったのに、大切な一人娘を僕が奪ったんだ。僕が……くっ……」
──北条君。
いつしか北条君は、膝をついてむせび泣いていました。
私の好きな痩せすぎな北条君。
スラーッとした肢体の北条君。
人をよくからかう北条君。
彼のひょろっとした手足が、この時はやけに弱々しく見えました。
「ううっ、北条君……のせいじゃない……美樹、美樹……」
詩織ちゃんが再び泣き出しました。
「北条、らしくないぜ……お前らしくない……」
織田君も北条君の背中と肩を軽く叩いて慰めてます。織田君は声を出して泣くのが嫌なのか、嗚咽していました。
◇ ◇
( ふ、北条の奴、バッカだなあ……キザ男のくせして、織田と張り合うなんて、こいつもガキだったんだな)
──美樹ちゃん。
私は美樹ちゃんのテレパシーを感じて振り向きました。
(ふふ、精霊さん。あたしもなんだか変だ。あいつら見てたらもらい泣きしちゃう)
美樹ちゃんのブルーアイズから、大粒の涙がぽろぽろと零れていました。
う、美樹ちゃん……
私の目にも涙がぽろぽろ溢れます。
──ああ、何でこうなってしまったのでしょう。
誰も悪くないのに──。
誰のせいでもないのに。
美樹ちゃんの心が痛いほど分かります。
今の美樹ちゃんは誰も恨んでない、
そうだよね、美樹ちゃん!
そうだよね!
私は強く強く確信しました。




