23. 歪んだプリズム(三角)と更に……
※登場人物紹介
◇ 首なし女子高生幽霊(私)………湖の精霊?
◇ 上杉 美樹………桜花高校一年時、別荘の湖で溺死
◇ 明智 詩織………同高校二年生 美樹の親友
◇ 織田 海斗………同高校二年生 美樹の幼馴染
◇ 北条光………同高校二年生 美樹の従兄
◇ 上杉 京香………美樹の母親
◇ 上杉 エリック………美樹の父親
◇ 北条 武士………美樹の叔父 光の父親
◇ ◇ ◇ ◇
──ええ~そういうこと?
嵐の晩に美樹ちゃんが死んだ日、いや私が食べた日にそんな経緯があったの?
思わず、わたしは美樹ちゃんを見つめました。
美樹ちゃんはじっと詩織ちゃんと織田君を食い入るように凝視しています。
◇ ◇
「詩織……」
織田君はヒステリー気味の詩織ちゃんに、どう慰めていいのかわからずオロオロするばかりでした。
詩織ちゃんはその間ずっとしくしく泣いていました。
(精霊さん、あたしね、これが知りたかったの)
──え?
突然、美樹ちゃんが私にテレパシーを送ってきました。
知りたかったって何を?
(うん……詩織の本音。あと詩織があたしに隠れて織田とつきあってたかどうか確かめたかった)
確かめたかった?
──あ!
そうか、美樹ちゃんも二人が付き合ってるか疑心暗鬼だったのね。
(うん、ずっと気になってた……二人の関係、確認しないまま死んじゃったから)
美樹ちゃん……。
(だから精霊さんの体を借りてあの雨の日、高校へ行ったんだ)
──そうだったんだ。
ようやく私は美樹ちゃんが、私を誘導して桜花高校へいった理由がわかりました。
あの時、ときおり女の子の声が聞こえたのも、あれは美樹ちゃんの声だったんだとも。
◇ ◇
「詩織、俺が悪かったよ。あの時、俺が散歩に行った詩織を追いかけて、無理強いしたのがいけなかったんだ。全ては俺のせいだ。お前は何も悪くない」
「……ひっく……そうだけど……織田君だけが悪いんじゃない」
「でも、俺がお前にキスしたからあいつは、美樹は俺たちのこと誤解しちゃったんだろう。だから……」
「え、君たち隠れてつきあってたんじゃないの?」
急に北条君が口を挟みました。
「いや、まだ付き合ってはいない。俺が何度も詩織に言い寄ってたけど……詩織はいつも美樹とひっついてたし、告白するチャンスなかった。去年別荘にいった時も、なかなか二人っきりになれなかった。だから詩織が朝、散歩に言った時チャンスだと思って告白したんだ」
「そうなんだ……僕はてっきり君たちは美樹に隠れてつきあってるとばかり……」
北条君の顔はどことなく青褪めています。
「私、懸命に織田君を避けてた。だって美樹が何度も『織田君が好きだ!』って私だけに秘密に教えてくれたから。それはまるで私に『詩織、どうかお願いだから織田君をとらないでね!』って無言でいってるように思えた──美樹はけっして私には『織田が好き?』と一言も聞かなかったの。だから逆に美樹の気持ちが痛々しいほどわかったわ。美樹の青い瞳が織田君の話をするたびに、宝石みたいにキラキラ輝いて、とっても綺麗だった」
詩織ちゃんは涙ぐんでいたけど口調は冷静でした。
「私、織田君も美樹も大好きだった、だから美樹を絶対に裏切りたくなかった。たとえ織田君が好きでも……」
「詩織……」
俯いていた織田君が顔をあげました。
「織田君、私、美樹との友情が壊れるのが一番嫌だったの!二人は私の恩人よ。いつも変な人にからまれて怖かった私を救ってくれたんだもの。二人がいなかったら、私は一歩も外にでれなかったと思う。だから二人のどっちかなんて選べない。それほど美樹と織田君は大切なの」
「詩織、ありがとう。俺正直、嬉しいよ。──だけど前からいってるが、俺一度も美樹から告白されてない。もし告白されたとしても『俺は詩織が好きだからゴメン』と美樹に悪いが多分断ってたよ」
「うん、美樹は直接『織田君に告白できない』ていつも私にいってた。告っても断られたら今までのように、織田君と気軽に話せなくなるからって」
「なんだよ。じゃあ俺と詩織は美樹の為にずっとこのまま並行線かよ!」
織田君が少々切れかかってます。
「織田君、あたしたち美樹に罪を犯したのよ。美樹はきっときっと、私たちを恨んで身を投げたに違いないわ」
「まさか、そんな……振られたくらいであの美樹が?」
織田君がギョッとしました
「いいえ、きっとそうよ、美樹は凄く織田君が好きだった、親友の私にも裏切られてショックで湖に飛び込んだんだわ」
「待って詩織ちゃん!それは違うと思うよ」
「北条君?」
北条君は銀縁メガネをくいっと触りながら言いました。
「思いだしてほしい。あの日は快晴だった。美樹はフリーダイビングの免許も持ってる。小学生から何百メートルも泳げたし、潜りでは大人顔負けだったんだ。15歳になったら直ぐにシニアの免許取ったんだよ──美樹は不思議な女の子だよ、子どもの時から、すぐに潜る癖があった。僕の知ってる限り、ここに来るといっつも水を得た魚のように自由自在に泳ぐんだ、そう、まるで乙女涙の人魚みたいに……」
北条君、最後の言葉は、まるで詩を詠むように情緒的な話しぶりです。
「そうだよ詩織!あいつ俺と張り合って殆どかなわなかったけど、フリーダイビングの潜りだけは俺は負けた。あいつ凄いぞ、本当の人魚みたいに潜るんだ。それもマスク付けずに何十メートルも深く潜るんだぜ。あれは怖い。ダイビングに関して美樹は天才だったよ」
織田君も北条君に同意しました。
「そうだけど……でも美樹を失ったご両親には……私……」
「詩織ちゃん、自分を責めるのはよそう。あれは事故だった。今回、僕が君を誘ったのは、詩織ちゃんが、そうやって美樹の死を自分のせいにしてるからさ。──美樹の叔母さんが君のこととても気にして、是非来てほしいって懇願されたんだよ」
「美樹のお母さん……」
詩織ちゃんがまたうるうると……泣きだしそうです。
「それに……もし君が自分や織田を責めてるなら僕だって明らかに共犯者だよ」
「え、北条君も?」
「うん、詩織ちゃん。僕ね、美樹があの朝、詩織ちゃんを探してて『詩織が見当たらないけど、北条知らない?』て聞かれたんだよ。その時僕は……『さっき、あっちの林にいったよ』って教えたんだ」
「そんなの……別に共犯じゃないわ」
「いや共犯だよ。だって知ってたから」
「知ってた?」
「うん、織田が詩織ちゃんを追いかけていったのも見てた。だから敢えて、織田と君が付き合ってるのを美樹に気付いて欲しかったんだ」
「あ?」
「北条、お前……」
詩織ちゃんと織田君が驚いて北条君を見ます。
そしてもう一人。
(北条……あんた……)
驚愕した美樹ちゃんの思いが私の心にぐっと入ってきました。
美樹ちゃんは北条君の意外な告白に驚いていました。
※ 物語も佳境に入ってきました。新年も引き続き読んで頂けたら嬉しいです。
どうかよろしくお願い致します。




