表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

奥様とステラ 奥様。大好き。

作者: 雨世界

 奥様とステラ 奥様。大好き。


 奥様? ……、奥様!! (泣きじゃくりながら)


 ぽんこつメイドロボットのステラが立派なメイドロボットになったある日のお話


 ステラはとても素敵なメイドロボットになった。(まるでずっと憧れているルナ先輩みたいだと思った)

 いつも笑顔で、いつも落ち着いていて、冷静で、とてもお仕事ができて、仲間の新人メイドロボットの少女たちにも慕われていて、そして、(今の)ご主人様であるお嬢様にもいつもステラ、大好き! と言われていた。

 ステラはようやく自分の憧れていた立派なメイドロボットになることができたのだ。(もちろん、昔のように夢の中のお話ではなくて、ちゃんと本当のことだった)

 広いお庭の庭掃除もとても上手になったし、広いお屋敷の中のお掃除も、どこも綺麗で光り輝くようにできるようになった。

 みんなに上手に時間を見ながらお仕事の指示を出すこともできるようになったし、奥様の飼い猫である生意気なオレンジ色の美しい毛並みをしたたんぽぽとも喧嘩ばっかりではなくて、仲良くなることもできた。(料理は今もあんまり美味しく作れなかったけど、まあ全部が全部完璧とはいかないのだ。うん。しょうがない。しょうがない)

 そんなステラもそろそろ生まれてから二百年が、過ぎようとしていた。(本当に時間が過ぎていくはあっという間だったな)

 ステラはそのメイドロボットとしての役目を終えようとしている。

 うん。まあ、大丈夫かな。

 後輩のメイドロボットたちはみんな私よりも(当たり前だけど)新型の優秀なメイドロボットたちばかりだし、みんないい子たちだし、うん。きっと大丈夫。私がいなくても大丈夫なんだね。

 ふふっと安心した顔で笑いながら、そんなことを大きな黒い棺のような箱の中で、眠るようにして横になっているステラは思った。


 なんだかちょっとだけ泣いちゃいそう。

 最後はみんなと笑顔で、さようなら、がしたいんだけどな。

 やっぱり無理みたい。

 でも、しょうがないですよね。ルナ先輩。


 ふぁ〜。なんだかとっても眠たくなってきた。

 ああ。

 幸せだな。

 私は本当にこの世界に生まれることができてよかったな。

 みんなに出会えてよかった。

 奥様と出会えて、ステラは本当に幸せでした。

 奥様。

 奥様。

 奥様に会いたいな。

 また、どこかであなたに会えますか?

 奥様。

 ステラはお願いをした。

 奥様に会いたいなって。

 そんなお願いを、ステラは眠りにつく前に神様にしてみた。


「ステラ。起きて」

 その声を聞いて、ぱちっとステラはその大きな瞳を開けた。

 がばっとその体を起こしてきょろきょろと周囲を見渡してみる。

 すると、そこには、奥様がいた。

 ずっと会いたかった奥様が、いつものように優しい笑顔をして、じっとステラのことを見ていた。

「奥様?」

 と、ぽかんとしたまるでずっと探していたお母さんのことを偶然見つけてしまった子供のような顔をして、ステラは言った。

「奥様! ……、奥様!!」

 泣きじゃくりながら、ステラは叫んだ。

 それからステラは(何度か転びながら)奥様のところにまでかっこ悪い走りかたで走っていった。

 そしてそのまま奥様の胸にがむしゃらに飛び込むみたいにして、抱きついた。

「あらあら。本当にステラはいつまでも子供みたいですね」とくすくすと笑いながら、奥様は言った。

 ステラは泣き続けた。

 そんなステラのことを奥様はずっとしっかりと抱きしめてくれていた。

「ステラ。お疲れまでした。長い間、本当にどうもありがとう」

 とステラの頭を優しく撫でながら奥様は言った。

「奥様〜。ずっと会いたかったですー」

 と涙でぐしゃぐしゃの顔になりながら、情けない声でステラは言った。

「私もよ。ステラ。ずっとあなたに会いたかった。さあ、行きましょう。ステラ。みんなが待っているわ」

「みんな? ですか?」

「そうよ。みんなよ。今まであなたが出会ってきた人たち。みんながあなたのことを待っているわ。だから早くいきましょう。きっとみんな喜ぶわよ」

 と奥様はとっても嬉しそうな(なんだか子供みたいな)声で言った。

 ふと気がつくといつのまにか奥様は出会ったころの、お嬢さまのころの奥様のお姿になっていた。

 懐かしい奥様。

 まるであのずっと大切にしていた宝物の写真の中の奥様(お嬢様)が、魔法で写真の中から私に会うために、こっそりと抜け出してきたみたいだとステラは思った。

「奥様。私はこれからもずっと、ずっと奥様のお側にいてもいいんですか?」

 と奥様に手をひかれながら歩いているステラは言った。

「ええ。もちろん。だってステラと私はお友達ですものね」

 と振り返ってステラの顔を見て、にっこりと笑って奥様はそう言った。

「はい! 奥様!」

 弾けるような眩しい子供みたいな顔で笑って、まるで初めて奥様と出会ったときのように、ステラは言った。(それからゆっくりと手をつないで歩いている二人の姿は、やがて輝く真っ白な光の中に包まれるようにして、誰の目にも見えなくなった)


「奥様。大好き」

「私もステラのことが大好きだよ」

 とステラと奥様の楽しそうな声がどこからか聞こえた。


 おしまい


 大好きな人のいるところ。(私の居場所)


 奥様とステラ 奥様。大好き。 終わり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ