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29話

 あれ?


 朝目が覚めると、違和感があった。ムズムズするような痒いような。


「んー?」


 ユフィもラナも、まだ寝てる。

 でも、どうにも目が覚めてしまった私はそのまま起きることにした。何とかユフィたちの眠りを邪魔しないように、そっと動く。


 それでもユフィは気づいたようで、薄らとこちらを見る。


「おはよ」


 と口だけ動かして挨拶。

 そのまま顔を洗いに洗面所へ。


 違和感は続いてる。けど何か分からない


「ミャー?」


 おめでとう?という声が寝室から届く。何が?という感じだけど、ユフィはまだ部屋にいるし、大声で返すのも違う気がする。


 あれ、何で聞こえたんだろう。耳の良さには自信があるけど、だからと言って……。


「ん?」


 鏡の前に着いてみると、頭に何か付いていた。寝癖かな。梳かそうと指で梳いてみる。


「ん?」


 ……。


「ん?」


 梳かすもなにもない。そこにあったのは髪ではなく、耳。


「ん!?」


 自分の耳を触ってみる。ある。普通の人間の耳だ。耳たぶが少ない私の耳。


 そして上の耳に触る。フワフワしてて気持ち良い。


「んー……」


 顔を洗い、スッキリした目で確認。耳がある。


「わーお」


 耳だ。ケモ耳だ。私にケモ耳生えてーる。

 ついでにお尻を触ってみる。何もない。尻尾は無いらしい。


「なるほど?」


 こちらの世界ではこういう事があると聞いてた。アイリスちゃんが人の姿をしてるのだって、そういう事だし。でもまさか自分がこうなるとは。


 こういうのは、本人が望んでなると聞いてた。でも、私はミルスが好きだけどミルスになりたいと思った事は別にない。結構謎だ。何でだろう。


 気になって何度も触ってみるけど、触ったところで何も変わらない。普通にケモ耳だ。


 耳以外に変わったところはないかと確認してみるけど、何もない。それ以上に出来ることもないので、いつも通りの朝を過ごす。



 改めて起きてきたユフィとラナにおはようと告げ、聞いてみる。


「これ、何だろ」

「ミミャ」

「ナナゥ」


 耳。いやそれは知ってる。


「そうじゃなくて、何で?何のために?みたいこと」

「ナーゥ」

「ミャミャー?」


 耳が良いから?という適当な感じ。


 それはちょっと、順序が逆じゃなかろうか。ケモ耳あったら耳が良くなりそうだけど、良くなった結果に生えてくるものだろうか。


 でも筋肉は増えてきたらモリモリになるかな?というか本当は増えたら力が増すわけで。あれ、そしたら良いのか?んん?


 ……まあ、良いか。なんか可愛いし。


 ぴょこぴょこ動かしてみる。うん、動く。人間の方の耳を動かす技術はないのにね。


「ミミャー?」

「あ、うん」


 耳は一層良くなった。めっちゃ聞こえる。ただ良くなっただけじゃなくて、聞きたい音の取捨選択とかも出来そう。べんりー。


「ユフィたちもこんな感じなの?」

「ミ?ミミャ」

「ナゥ」

「そうなんだ」


 どんな感じか知らないし、ミルス同士だって差がある。分りゃしないっぽい。


 朝の準備を済ませて外へ出る。いつもより草木のざわめきが良く聞こえ、清々しい。


 畑の方を向いていざ、お仕事。と思ったら、ミルスたちから注目を浴びている事に気付いた。二度見している子もいる。

 いや、まあ、そうなるよね。ユフィとラナがわりと平常運転だったからそんなものなのかな?とか思ったけど、かなり驚きな事態だよこれ。


 そして滅茶苦茶注目されてて恥ずかしい。

 しかもその声が良く聞こえてくる。「え?」「あらまぁ」「おやおや」「きゃわわ」などなど色んな感想が届いてくる。


 これが問題ないならアイリスちゃんも許してあげなよと思うんだけど、そういうことじゃないんだろうなぁ。


「お?」


 ぴょんぴょんとモモがやって来た。私のケモ耳に興味津々らしい。わきわきと手招きするので、しゃがんで触りやすいようにしてあげ……それでも足りないか。モモは小さめのミルスだから、背が足りない。

 私の頭に手を乗せ寄りかかれば何とかなるかもしれないけど、そういうところに気を使ってくれる子でもある。お上品な感じ。


「乗る?」


 と聞いて、両手で皿を作る。


「ピィ」


 モモを乗せた手を掲げ、頭の上へ。私の耳が優しく触られていることが分かる。

 ちょっとだけ触って、満足したみたいなので下ろす。


「ピピィー♪」


 何かやたら喜んでる。モモのツボだったのかな。

 他のミルス達も、私の耳に納得したみたいで各々のやりたいことに戻っていった。最初こそ驚いていたみたいだけど、ミルスはやっぱり淡泊な子が多いのかな。


 収穫その他を始めると、なんだか調子がすごく良かった。「こうしたら良いかな?」という勘が大体当たるというか、植物のことがなんとなく察せられる。水が足りないんだなーとか多いんだなーとか、下の葉がもういらないーとか。


「ミャミャー」

「ピィー」

「ほえー」


 植物の声が聞こえる、みたいなことらしい。え、すごい。

 説明を聞いて行くと、どうやらミルスのタイプ毎に植物に対する感じ方はそれぞれ違って、風聴、熱感、地知、水視とか言うらしい。なにそれ初耳。


 突然の属性要素?と思ったけど、そういうのがあるってだけらしい。んでもって私は風聴とかいうやつで、モモと一緒。まあ、耳だし一番それっぽい。

 何の意味があるかというと、あんまりない。なんか好みとか似てることが多いよね?みたいな。……血液型診断?


 ユフィとラナは地知らしい。ノクルは水視。これだけ聞くと、地知はミルスの中でもマイペースなやつかな、とか思う。


「田んぼの子は水視?」

「ミャーミャ」


 水視の人が多いといえば多いみたいだ。


「ということは、風聴が草で、地知も草、そしたら熱感は木?あれ?」


 これじゃ方向性の雰囲気すら分からないと混乱していると、ユフィから助け舟が出た。地知が草、風聴が多年草、熱感が樹木っていう考え方だそうだ。因みにパッと思いつくミルスで当てはまっているのはユフィ自身だけ。ラナは樹木っぽいという話を前聞いたし、風聴のモモは草。トロピは熱感で樹木っていうのは間違ってもいないんだけど、多年草も多い。ついでにカボグラは地知だけど田んぼ。


 うん、やっぱり血液型診断レベルだこれ。ぜーんぜん当たらない。

 ただ一応、ミルスしか知らないであろう知識ネタを一つ手に入れたことになる。これが一番大きい気がする。


 意味の無さそうな属性診断はともかく、なんだかすごい能力を手に入れた。この力があれば農園がすごく捗るのでは?ミルスレベル……には他の魔法の都合でならないだろうけど、迫れる可能性はある。


 きっと、そこら辺の関係で生えて来たんだろうな。もっと上手く育てたいとかそういうのはいっつも考えてるから、そのために必要ということでこのケモ耳なわけだ。


 問題があるとすると、ケモ耳があるという事実そのものだ。

 耳が四つで変な感じ。どの耳を触っても、耳を触っているからこその近い音が聞こえる。


 でも、そんなに困ることもないのかな?羽虫が飛んでたらすっごい気になりそうだけど、幸いエベナではそういうのはほとんどいない。虫や動物は全部モンスターで、モンスターは大抵大きい。一番小さいやつでも、指一本分くらいの大きさはある気がする。


 しかしこうなってしまうと「人間よりもミルス側」なんて言われてたのがいよいよ真実味を帯びてきた。このままミルスになっちゃうのだろうか。それはそれで面白そう、とか考えてるのがいけないのかなー。


 自分のケモ耳を何度も触る。ふさふさ。気持ち良い。あ、森歩いてる時に枝が引っかかったりしたら痛いかもだ。


 なんか他にも気付かないだけで問題があるかもしれないし、アドバイスとか貰った方が良いのかな。となるとアイリスちゃんか。ミサキさんにも言っておいた方が良いだろうし、町に行かなきゃかも。


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