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26話

 翌日には、倉庫から販売用のお米を差し入れで持ってきた。お米が入った袋で山のようになっているのに、なんともなさそうに運ぶユフィ。


「本当に大丈夫?」

「ミャー」


 絵面がとんでもないので、私がユフィをいじめているように見えちゃいそうだ。


 炊き出しスペースに差し入れるとみんな大喜びしてくれたので、持って来て良かった。


 続けてミサキさんのところでユフィの仕事を請け負う。私が付いて行っても仕方ないので、私はユフィと別れ一人でミルスの公園の方に行ってみる。


 公園は町の外側、森の横にある。公園だけど扱い的に一時的な仮設住宅とかを置くわけにいかないこともあって、放ったらかしの荒れ放題。エルフかミルスが生やしまくった木や草でほとんど森だ。

 それでも訪れる人はやっぱりいるみたいで、獣道みたいなものが出来上がってる。


「ノンノ」

「無事だったんだね、良かった」


 以前話した薄紫色のミルス。何ともなさそうに自然体で話しかけてきたので、一安心だ。他のミルスも同じなら良いな。


 確認してみると、公園のミルスで戦いに参加した人はいなくてみんな森へ逃げたみたい。ただやっぱり、みんながすぐ戻ってくるということでもなさそう。来たところで今の状態じゃ人間側もあんまり来れないし、しょうがない。


 一通りの情報は聞けたけど、もうちょっとだけ公園内だと思われる範囲を歩く。何か助けが欲しいミルスがいるかもしれないし、見て回るつもりだ。視界が悪いから遠目で確認出来ないし。草木をかき分けて行かなきゃいけないこともあって一苦労。


「あれ」


 本来この公園内にあるはずのないもの。大き目のテントが三つ張ってある。

 ミルスがメインであるこの公園にテントを張るなんて普通あり得ない。避難用だとしても、それならもっと入口に近い場所に立てるはず。


「おやこんにちは。何か用かな?」

「わっ、こ、こんにちは。……公園を見回ってただけなんですけど、ここは一応ミルスが使うことになってる土地なので、その、気になって」

「なるほど。一応ミルスには許可を取ったつもりなんだがね。如何せん言葉が分かるわけじゃないから、齟齬があるかもしれない。もしよければそちらで確認してもらっても?」


 突然横から話しかけられてびっくりしたけど、必要なことを言ったら許可をとってるみたい。そんなことあるのかな?と思ったけど、問題があればさっきの子が言ってるはずだし多分平気なんだと思う。


 きっとこの人たちは冒険者だ。こんなところにいること自体おかしなことで驚いたけど、なにより驚きなのがその装備。銃器を担いでるし物々しい。まるっきり映画で見たことのあるような軍人さんだ。


「道中で文句を言われてないし、多分大丈夫なんだと思います。……えっと、それって本物なんですか?」

「これかい?本物かと聞かれると難しいね。弾は出るが原理は丸っきり違うから」

「法則が違うとかいうやつでしたっけ」

「その通りだ。エベナの火薬は物体に対する運動エネルギーの作用が異常に低い。そもそも火薬と言って良いのかも分からん。とにかく現代兵器の類を再現しようと思っても、新たに全く異なるものを作ることになる。作れないと言ってしまっても構わない。兵器に限らんがね」

「何だ?……ユグロコのやつが来たのか。町があんな状態だってのにご苦労なこった」


 話をしてるとテントの中から他の人が出てきた。女性だけど、話していた男の人よりもワイルドな感じがする。


「私は町の人ってわけじゃなくて、丘の上に住んでる感じです」

「ということは、お前が仲人ってやつか。そりゃここにも来るわけだ。見ての通り間借りしてる。宿がねぇから、こっちの方が良いだろ。明日にも出てくつもりだが、戻って来ても宿がなければまたここを借りるかもな。そんときゃよろしく」

「えっと、ミルスが気にしないなら大丈夫だと思います」


 今の状態の町に居座るのは迷惑だからと、ここでキャンプをしてるみたい。森の横にあるこの公園でキャンプは危ないと思うけど、この人たちの目的は正にその森だろうから構わないのかな。


 この冒険者さんたちは、森に挑めるほど強い人。上級冒険者ということだ。驚きが落ち着いたら見た目からしてすぐに分かる。冒険者はとにかく実利を求めるから装備は地味な物になることが多いって聞く。

 特に武器は替えが効く汎用性の高いものになるから、銃器なんていうとびっきりの色物を使う集団なんてこの世界には一つしかないと言われてる。


「クグロバレット、でしたっけ」

「おや、知ってるのか。有名になったもんだ」

「俺たちは無駄に評判だからね。狂気的に銃器を求め研究し、実用にまでこぎつけた異常者だって」

「ハン、銃なんて関係ないだろ。多少の狂気もなくこんなとこでやってけるもんかよ」


 冒険者がこの世界をどう捉えてるかは分からないけど、誰よりも戦い続けてるはずだし一筋縄ではいかないことばかりなんだと思う。思うところがあっても、守られてる側の人がとやかく言うのはちょっと違う。

 それなのに悪口まで言う人もいるっていうのは不思議だよね。


「ミサキさんから依頼されたんですか?」

「誰だそれ」

「町長だよ。今話を通しに行ってる相手。ま、俺たちは勝手に来ただけだよ。この町を襲ったモンスターが狙いだったんだけど、先に討伐されたから用意した諸々が無駄になりそうでね。折角だから森でひと暴れしようって寸法さ」

「わ、ありがとうございます!」


 町を助けに来てくれてただなんて、すごい。それにモンスターが来た原因も冒険者によるモンスターの退治不足って聞いたし、活動してくれるのは嬉しい限りだ。


「そうもペコペコされると困っちゃうね。俺たちはあくまで利益のために来ただけだよ」

「良いじゃねぇか。言葉くらい素直に受け取りゃあよ」


 見た目はちょっと怖い人たちだったけど、それからもしばらく気さくに色々はなしてくれた。こっちの世界での銃の原理なんかはちんぷんかんぷんだったけど、好きって思いが伝わってきた。

 珍しさで目が惹かれたとはいえ、申し訳ないけどあんまり興味はなかったんだけど、私にも少し格好良く思えてきた。


 見回りに戻る際には、ミルスのいる位置を教えてくれた。息をひそめている相手でなければ大体は分かるみたい。


「それくらい出来なきゃ、ここいらの森でなんか戦えないさ。特にあたしたちは距離を保ったまま戦いたいからね」


 わりと長く立ち話をしちゃったけど、結果的には場所を教えてくれたおかげで差し引きすると、あんまり時間は変わらないくらいで済んじゃった。


 ほんのちょっとのミルスしかいなかったけど、確認できた子はみんないつも通りの雰囲気だったから良かった。



 まだ働いてるユフィに一声かけて一足先に家に戻ると、本来の農園の仕事に戻る。


 あれだけ滅茶苦茶になっていたけど、幾分植物は少ないもののすっかり元通りになってる。


 みんな頑張ってくれたのは間違いないけど、これはノクルとノクルの元上司の活躍が大きかった。上司と部下だったからなのか同じような体の色合いだからかは分からないけど、魔法の方向性が似ていて邪魔な物の処分に有効なものだった。


 一回様子を見に来てくれただけだったのに、その一回でまとめて置いてあった邪魔な植物を一気に分解してくれちゃった。ノクルがやるにしても溶かすのに時間がかかり、しかも量が量。溶かした後の液体の処理に困ってしまう面もあったりで悩んでいたから、大助かり。醸し出す貫禄に似合ったすごさだった。

 少しノクルが悔しそうだったけどね。


 植物を取り除いた後は荒れた土地が残ったけど、そこはカボグラがなんとかしてくれた。モグラっぽさに似合った土魔法を披露してくれて、整えてくれちゃった。

 ユフィの率いていた部隊のメンバーは、やっぱりすごいミルスばっかりなんだなって改めて思った。


 そうして畑は次の種や苗を植えられるほど元通りになったんだけど、変わったこともある。ダメになった植物の関係もあってか、来なくなったミルスがいたりする。カボグラも畑を整えるところまでは協力してくれたんだけど、それで満足したのかあまり姿を見せなくなった。


 定例の井戸端会議もなくなっちゃって、ちょっと寂しい。

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