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3.武器、スキル、戦闘

「はー、人が多すぎる」


レベリングのために戦闘をしようと思い立った俺は、一番低難度である平原フィールドに繰り出した。

まぁ厳密には、ここを目指したわけではなく、人の流れに沿って街を出たらここだったというだけなのだが。

初心者が集まっている中で人が居る方に行けば、最初に行くべきフィールドにつくと考えて、実際その考えは正しかった。だが、人のいる方に進んだ必然として、1㎝程の高さの短い草が生い茂る平原は、どこもかしこも初心者プレイヤーの足跡で埋め尽くされている。現れる(スポーンする)モンスター、といっていいのかわからないような兎っぽい小動物は、すぐさま寄ってたかって攻撃され、一瞬でエフェクトとドロップだけを残すのみとなるという、なかなかにひどい惨状が広がっている。


「これはちょっと、ここでステータスとかスキルとか検証するのは無理かな……」


一応、モンスターが足りないとかそのレベルまでは、まだギリ達してはいないようだ。しかし、おそらく時間が経つにつれて新規プレイヤーも増えるだろうことを考えると、時間の問題な気もする。もしかしたらプレイヤー増加を見越して、運営が何か対策してるのかもしれないが、人が多いこと自体は解消されないだろう。


「となると……適正レベル的に、次のフィールドはこの森林フィールドになるか」


マップを開いて確認する。最初の街から見て北から北西にかけて広がっている森が適正レベル5となっている。ちなみに平原は街から見て東かかなり広く広がっており、街近くにおいて適正レベルが3である。

確証はないが、そっちに行けばここよりは人が少ない、はずだ。


森林系フィールドなら、木が遮蔽になって人目をあまり気ならい。適正レベルも序盤ではそこまでシビアじゃないはずだ。というか、森林系のフィールドって、歩きにくい、視界が通らない、方向感覚が狂う、って感じでVRゲームに慣れてない人にとって高難度になりがちで、そういう点で適正レベルが上がってそうな気がするんだよね。つまり、廃ゲーマー(おれ)にとってはそこまで高難度じゃない可能性が高いってことだ。


「これは、ここにいるプレイヤーが移動を始める前に先に入っておいた方がいいな」


そんなわけで、ウサギ型モンスターVS初心者プレイヤーの大戦争が起きている戦場に背を向け、次のフィールドに向かうのだった。


―――


「よかった、まだまだ人はあんまりいないっぽいな」


森に向かっている途中、俺と同じ考えなのか、あるいは単に早めに平原でのレベリングを切り上げたのか、同じく森に向かうプレイヤーがちらほら見えてたのだが、森の中に入ってしまえば遭遇(エンカウント)しない程度の密度しか、まだプレイヤーはいないようだ。


「さて、栄えある最初の相手は誰かな」


インベントリから白い弓と木の矢を取りだし、あたりを見回す。

この弓矢は平原に向かう前に、スキル《弓術:初級》を取った時に同時に入手したものだ。装飾も何もない、真っ白でシンプルな『白弓(しろゆみ)』と『木の矢×50』。いわゆる初期装備だ。性能も初期装備にふさわしく大したことはない。


「ギギァッ!!」

「っ!」


当たりを警戒しながら、姿勢を低くして探索をしていると、すぐに耳障りな鳴き声が聞こえてきた。とっさに息をひそめ、音のする方を見ると、そこにはゴブリンがいた。見た目は、説明されるまでもなくゴブリンだとわかる、まさにゴブリン像そのまま。緑色の肌に醜い顔。ぼろ布を纏ってあたりをキョロキョロと見まわしている。

ファンタジーの定番中の定番だな。

様子を見る限り群れとかは作っていないようで、1匹だけぽつんと立っている。


「2番目のフィールドでいきなり人型モンスターかぁ」


戦闘要素のあるゲームでは人型のモンスターは必ずいるものだが、人型モンスターって若干ではあるが戦いずらい印象が強い。理由としては、見た目による抵抗感もあるが、なによりも人が使う武器を使う場合が多いのだ。実際、目の前のゴブリンもこん棒らしきものを右手に持っている。

当然、武器をもって知れば攻撃力は上がるし、間合いを取りずらくなったり、次の行動が読みづらくなったりする。

まぁ所詮ゴブリンなので大したことはしてこないだろうが、戦闘系のゲームに慣れてない頃は結構苦戦したものだ。案外ALTerraはスパルタなのかもしれない。


閑話休題。

ひとまず、色んな思考をわきに寄せて弓を構える。昔やったゲームの経験をもとにそれっぽい感じで構える。多分、弓道家とかが見たら憤慨するような構えなのだろうが、個人的にはこれが一番やりやすい。

構えると同時に、頭の中にうっすらと正しい構え方が浮かんでくる。弓術スキルをとったことによる、モーションアシストの効果だどう。まぁ、さっき言った俺流のものと違うのでガン無視するが。


矢を(つが)え、引き、放つ。


「ギャッ!」


飛び出した矢は直線的な軌道を描き、ゴブリンの肩口に当たる。


「ちっ、さすがに勘は鈍ってるな」


確実に当たるようにと胴体の中心を狙ったつもりが、かなりそれてしまった。まぁ、弓を使うのもそれなりに久しぶりだし、当たっただけ上等だろうか。

ゴブリンも攻撃されて黙ってはいない。こちらに反撃の意思を持った視線を向けていて、今にも突進してきそうな様子だ。

ゴブリンと俺の間は10mと少しぐらい。ゴブリンの間合いに入るまで、まぁ矢2発は打てないだろう。


できることなら、ゴブリン程度は攻撃を食らわず倒し切りたい。なので俺は次の一撃で頬無るべく、より強い攻撃を放つことにした。


「『強撃(きょうげき)』」


アーツ『強撃』を発動する。

これはスキル《弓術:初級》を習得したときに一緒に習得したものだ。

弓術のスキルをとると弓関係の行動にパッシブで補正がかかり、アクティブな技能(アーツ)も手に入る。勘違いしていたが、いわゆる発動して使うのはALTerraではスキルではなくアーツというらしい。

『強撃』の効果はシンプルに威力向上。それと、使ってはじめて気づいたがエイムアシストもあるっぽい。アーツを発動した瞬間、視界がゴブリンに集中した感覚があり、若干だが狙いやすくなった。これは弓術系アーツ全般についてる感じかな?


ともかく、アーツの効果と相手が近づいてきたことでかなり狙いやすくなった。今ならかなり正確に狙えるだろうから、一番ダメージが期待できる頭を狙う。


「ギャ!アァアァ!!!」


飛び立った矢は先ほどよりも速く宙を駆け抜け、今度は狙いがそれることなく頭部へと命中。赤と黄色のエフェクトをまき散らした。

どうやらその一撃でゴブリンのHPは全損したらしい。相変わらず耳障りな悲鳴を上げて、その場に倒れ伏す。


『レベルアップしました』


ゴブリンが白いエフェクトに分解され始めると同時に、レベルが3になったことを知らせるアナウンスが聞こえ、戦闘が終了したことが確定する。

ふっと、身体から力が抜ける。大したことはない相手だと思っていても、新しいゲームの初戦闘はいつだって緊張するのは変わらない。そして、初勝利の高揚感も案外なれることなく感じられる。


「さて、ドロップはー」


ゴブリンが消え去った場所に白い光が見える。倒したモンスターがその場に残したもの、つまりドロップアイテムだ。所詮ゴブリンなので大したものではないだろうが、戦利品の獲得は戦闘の醍醐味だ。なんだかんだワクワクする。


「『ただのこん棒』。うーんゴミ」


ワクワク感には残念ながら応えてはくれなかったようだ。まぁ知っていたことだが。

そもそもあのゴブリンが持っていたのがこれしかなかったから当然と言えば当然だ。

ちなみに性能もお察し。さすがに素手で殴るよりは強いだろうが。


「でも、現時点では唯一のまともな近接武器なのか」


現状、俺の持ち物で武器と呼べるものは弓矢とこん棒だけだ。近接になったら逃げるか、矢を手にもって刺して戦うかとか考えていたので、ナイフとかの武器は持ってない。

だって、街で見かけたシンプルなナイフ、1000Arもしたんだよ。高い。ギリ買えなくもないんだけど、今の全財産が1200Arなのでさすがに買えない。

それでいて、初期配布『白弓』君とくらべても、そこまで性能がいいわけでもなさそうだったっていう。


「ていうか、スキルとったら初期配布の武器があるんだし、スキルを取っちゃえばいいのか」


さすがにこん棒で、それもスキルもなしで戦っていたらいろいろ支障が出るだろう。

そういってスキルウィンドウを開く。

現時点では、謎の《言語理解》と《弓術:初級》だけが習得済みになっている。現在までに獲得したSPは15(初期で10、チュートリアルで3、レベルアップで2)で《弓術:初級》に1使って残りは14。


「さて、近接スキルも結構あるなー。どれにしようかな」


まず長剣とか大剣とかはプレイスタイルに合ってないから論外。基本、近接攻撃は近づかれたときの緊急手段としてとらえるべきだろう。となると取り回しやすくて、武器自体のコストも安めのものが理想か。


「となると《短剣》か《格闘》かな」


《短剣》はナイフとかダガーみたいな刃渡りが短い剣全般の派生元のスキル。《格闘》は格闘全般だ。

経済面で言えば圧倒的に《格闘》が勝るのは言うまでもない。なんせ拳一つで戦える。取り回しに関しても言わずもがな。ただ、格闘系ってある程度以上のダメージを出そうとするとコンボを覚えたり、闘気とかそんな感じの独自リソースを使ったりで複雑になることが多い印象がある。うーん、サブウェポンのためにコンボ練習とかはしたくないなぁ。

一方、短剣はどうかというと。これは推測だが、コスト面においてはほかの武器と比べて優秀だと思われる。というのもさっきナイフが1000Arといったが、同じ店で長剣が1500Arで売っていたのだ。まぁ攻撃力もその分長剣のほうが高そうだったが、サブウェポンであることを考えると単に安いほうがありがたい。

そして武器を買えるということは、ダメージを伸ばしたくなったら武器をアップグレードすればいいということだ。あくあまでサブウェポンのつもりなので、アーツのコンボとかクールタイムを頭に入れてのスキル回しとかしなくてもダメージを伸ばせるというのは重要だろう。


「よし、取るのは《短剣:初級》で。・・・お、良かった、2回目でも初期武器の配布はあ、る?」


《短剣:初級》を取ったと同時に、手の中に『白弓』と似た雰囲気の白くてシンプルな短剣が現れた。

そこまではよかったのだが、同時にそばに置いていた『白弓』が消えてしまった。


「ん-??《弓術》スキルが消えたわけでは、ない。弓は……一回短剣をしまうとまた出せる。というか、弓と短剣に切り替えられるようになってるのか」


改めて出してみた弓は、元々『白弓』となっていたアイテム名が『白武器:弓』に変わっている。


「これはどういう意図の仕様なんだ……?」


そもそも販売不可のアイテムなので転売防止とかでもない。あんまり見たことないタイプの仕様で、なぜこうなっているのかいまいちわからん。


うーん、まぁ考えても仕方ないか。

仕様である以上はどうしようもない。ただ、同時に出せないとなると、敵に近づかれたときに咄嗟にすぐ切り替えられるように、練習する必要があるなぁ。

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