お姉さんとヒロシくん
あれからお姉さんと俺は度々会うようになった。
というのは俺がモヤモヤを見つけたら、お姉さんのスマホに連絡して伝えるようになったから。
天部のお姉さんは驚くことにスマホを持っているというのも驚く。
今どきは鳥とかの動物を伝達では使ってないからというけど、鳥とかで連絡取り合う方がスゴいと思う。
ある日ヒロシくんと河原を歩いていると、お姉さんの方から声をかけてきて俺は驚いた。
「え!お姉さん?!
あ、ヒロシくんここに今天部のお姉さんがいるの。こないだ話した……」
ヒロシくんは納得したように頷きお姉さんのいる方をしっかり見てお辞儀する。
「ジンくんから聞いています。
初めまして佐東啓司と申します」
ヒロシくんの言葉にお姉さんは嬉しそうに笑う。
「キャー、ヒロシくん? 小さいのに挨拶がしっかりしていてエラいわね~!」
お姉さんの言葉に、ヒロシくんは少し照れた顔をする。あれ? お姉さんの言葉聞こえてる?
「いえいえ、天部さんですよね。いつもお世話になっています」
あれ? 会話が成り立っている?
「カワイイ! ジンくんのお友達だけあって、綺麗な魂だし、良い子なのね!」
お姉さんのテンションの高さに、ヒロシくんは少し戸惑っている。
「あっ、あの天部さん?」
「天部さんと言われるのは、ちょっと。
キミだって人間さんって、呼ばれるとなんか妙な気持ちになるでしょ?
私ヒカリって名前あるのでそちらで呼んでくれると嬉しいな」
「あ……はい、ヒカリさんで良いですか?」
「アレ? ヒロシくんも見えてるの?お姉さんが」
ヒロシくんは俺の方を見て頷く。
「うん、何故か普通に見えていてビックリしてる」
ヒロシくんも見えるようになったのだろうか? そうだとしたら嬉しい。
「あ、今はプライベートだから見えるモードでいるの。でないとショッピングとか楽しめないでしょ?」
そういえば、よくカワイイワンピース買ってゴキゲンなの! とか、お気に入りのカフェ見つけた、とか言っていたのを思い出す。そういうの見えない状態では難しいだろう。
「はぁ」
ヒロシくん少し戸惑いの声を返す。その前でお姉さんは、一旦ヒロシくんから見えない状態と見える状態を、繰り返して『こんな感じで変えられるの!』など自慢気な顔をした。
「仕事している時、人から邪魔されない為に消えてるの?」
俺の質問にお姉さんは少し考える。
「それもあるけど、浄化の術があの状態の時しか使えないの。あれはかなり集中力いる作業だから」
「見えない状態の方が通常状態なんですね」
ヒロシくんも気になったのだろう。お姉さんに質問する。
「そうね。でも見えない状態のままだと。コチラでの生活はしにくいでしょ?
だからそういうの能力も受渡されたの!」
分かるような分からないような話である。
お姉さんは、天部の事を色々話してくれるけど、俺にはどうも理解しきれない部分が多い。
「そうそう、テレビで美味しいと紹介されていたお菓子あるんだ!向こうので一緒に食べない?」
お姉さんは河原にある公園を指さした。