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キミの世界は青いから……  作者: 白い黒猫
小学校時代
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ヒロシくんのお家

小学生になった。


 ヒロシくんと同じ小学生に通い、クラスも同じ事で楽しい毎日を過ごしている。


 新しい友達もできたし、自由も増えて世界が少しだけ広がった。


 同時に勉強という仕事も出来た。立派な大人になるため、勉強は小学校に入った子供の大切なお仕事だと母親は教えてくれた。


 ヒロシくんも小学生は楽しいようで学校にいる時は、黄色い色をしていて楽しそうだった。朝会った時や、家に帰る時は青味を帯びるけど……。


 そんな時、ヒロシくんにお願いをされた。俺がヒロシくんの家にお邪魔して、家の中にあの嫌なモヤモヤがないか見て欲しいと。


 俺はヒロシくんの役に立てる事が嬉しくて二つ返事で引き受けた。


 ヒロシくんのお家に行ってみて驚いた。


 見た感じからかっこいいデザインの建物でマンションというかホテルのようだった。建物に入るとソファーセットなどがある広くお洒落な空間が広がっていて、シャキッとした格好の人がいる受付みたいなものがあったから余計にホテルのように感じたのかもしれない。


 綺麗な絨毯のあるエレベータに乗って、六階にいった所にヒロシくんの住んでいる部屋があった。俺の住んでいるマンションとは違って、廊下は広くドアが少ないことが不思議だった。


 玄関から部屋に入ってその理由に納得した。

 玄関からして広く、入った正面にはよくわからない図形の書かれたポスターくらいのサイズの絵画が飾られている。左には天井まである大きな鏡がある。

 その鏡は扉になっていた。

 ヒロシくんが開けてくれて、シューズボックスというか靴などをしまう部屋があるのが分かった。

 カウンタータイプのキッチンの見えるフワフワのクッションのソファーのある大きな窓の明るいリビング。

 なんかコックピットのようなかっこいい椅子のあるお父さんの仕事用の書斎、ヒロシくんのお父さんとお母さんの寝室、洗濯機のある部屋、なぜか顔洗うシンクが二つある脱衣所。


 テレビのついたお風呂。それとは別にシャワー室。お客様用なのかベッドと机だけがある部屋。ちょっとした椅子とテーブルが植物に囲まれているベランダ。そしてヒロシくんの部屋。

 マンションとは思えない広さで、小柄の両親に小さい俺の三人が過ごす、親戚からハムスターハウスと揶揄われているお家とは大違いだ。


 ヒロシくんのお母さんは今日料理教室に行っているからとかで留守なので、ヒロシくんは部屋を一つ一つ見せてくれた。

 俺はヒロシくんのお願いされたことを調べるために、いろんな事に驚きながらもしっかりと部屋の隅々までしっかりと確認した。

 ヒロシくんの部屋で、ジュースを飲みなら二人で向かい合う。本箱には俺も好きな本や漫画が並び、学校の教科書が置かれた机。そして俺も遊んでいるゲーム機などのある部屋は、ヒロシくんを感じるものが多いためかこの家で唯一落ち着ける場所に感じた。


「どうだった?」


 そう聞いてくるヒロシくんに俺は顔を横に振る。


「モヤモヤはなかった」


「そっか」


 ヒロシくんはホッとしたようなガッカリとしたような不思議な表情をした。


「ごめん、何も見つけられなくて」


 ヒロシくんは笑う。


「何で? むしろそのモヤモヤない方がいい事なんだろ? だから良かったというべきだよね」


 俺はその言葉に頷く。ただヒロシくんがなぜ青くなるのか少し分かる気がするした。この家は綺麗だけどどこもかしこも余所余所しい。だから余計にホテルとかの部屋に感じたのかもしれない。

 二人でそのまま部屋でテレビゲームで遊んでいるうちに、ヒロシくんの家で感じた寂しさも忘れて楽しくなってくる。ヒロシくんも黄色くなっているから楽しい。


 そうしていると玄関の方で音がする。


「あら、珍しいお友達がきていたのね。いらっしゃい」


 扉が開き、女性が声をかけてくる。優しい笑みを俺にむけている。でも……。


「ヒロシの母です。宜しくね」


 長い黒い髪で女優さんみたいで綺麗な人だと思う。身体が小さくハムスターに似ているから『ハムちゃん』と友達から呼ばれている俺の母親とは大違いだ。

 でもヒロシくんのお母さんは微笑んでいるけど赤くそして青くて黒い色をしていた。


真多(サナダ) (ジン)といいます。ヒロシくんとは幼稚園から一緒で……」


 俺は動揺を隠しながら必死に挨拶を返す。上手くできていただろうか? 

 ヒロシくんのお母さんはヒドく怒っている。ここまで濃い赤黒い人を見るとドキドキする。

 お母さんは俺のそんな様子を気にすることなく教室で作って来たケーキが丁度あるのよと言ってキッチンの方へと戻っていった。


「ヒロシくんのお母さん、何か怒ってる?」


 ヒロシくんは困ったように笑う。


「俺やジンくんに対して怒りを感じている訳ではないから大丈夫。気にしないで」


 俺やヒロシくんに敵意や悪意は全くないのは分かったけど、あそこまで赤く染まっている人はあまり見ないので驚いた。

 まあ、俺のお父さんやお母さんは何かがあって怒っているために赤くなっていたり青くなっていたりするけど、俺には笑顔を作り接してくることもある。

 俺のお母さんもスーパーのパートから帰って来た時真っ赤になっている事もある。

 大人ってそういうものなのかもしれないとも思った。時間が経つと赤い色や青い色は消えていたから気もしなくても良かったかも知れない。


 母親も、「大人って色々あるのよ」と言っていたから。俺の母親は小柄でお客様に横柄にこられる事が多いらしい。そう言う時は真っ赤や真っ青になっている。


 その後ヒロシくんの家に遊びに行くことも多かったので、お母さんとはよく顔を合わすようになったけど、いつもお母さんは濃い赤と青を帯びていた。

 そんなお母さんを見てヒロシくんの青が濃くなるのも感じた。

 俺の能力って見えるだけで、ほんとになんの役にも立たない、そう強く感じて落ち込んだ。

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