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キミの世界は青いから……  作者: 白い黒猫
あとがき & オマケのエピソード
31/31

この世界の解説 オマケ(現世のとある場所で……)

 本作は、『天国線』シリーズの第二弾にあたる物語です。より大きな括りで見ると、「サトウヒロシシリーズ」から分岐して生まれた世界が舞台となっています。「サトウヒロシシリーズ」は、主人公サトウヒロシが不可解な状況に陥ることを主軸とした作品群ですが、本作はその世界観を継承しつつ、独自のテーマを展開しています。


 当初はホラーとして構想していましたが、物語の主題が「心の傷の癒し」にあるため、恐怖要素は控えめとなりました。そのため、ジャンルの変更も検討中です。


 本作では、死後の世界を特殊な設定で描いています。基本的に人は天国や地獄へ行き、魂を初期化された後、転生する流れになっています。しかし、その過程で「魂の傷」や「罪の重さ」によって分けられる場所が存在します。

 安寧界、癒栄界、終赦門界など、いくつかの界があり、それぞれ異なる役割を持っています。


 この世界では、天国と安寧界は天部が、地獄と終赦門界は鬼が管理しています。鬼が支配する世界は厳格で、優しさのない過酷な場所です。現世などの中間領域では、天部と鬼が協力して業務にあたっていますが、鬼は神に近い存在であり、天部よりも地位が高いとされています。とはいえ、互いに敬意を持って任務にあたるため、関係は良好です。ただし、界の長となる天部は、多くの実績を積んだ存在であるため、一般の鬼よりも敬われることもあります。


 本作の中心人物の一人であり、「お騒がせ天部」として知られる天音 光。名前に「天」や「光」の漢字がついていることからも、善良で無垢な心を持つ存在です。天真爛漫な性格ですが、他者の妬みや悪意を理解することができず、その狭い視野ゆえに人を傷つけることもありました。

 彼女は、生前、ある子供を救ったことで満足して命を落とします。しかし、その子供と家族は世間から激しいバッシングを受け、不幸な結末を迎えました。

 この出来事により、鬼嗣は彼女を全く認めておらず、激しく嫌っています。彼は界の責任者でもあり、自らの管轄する魂を危険に晒した天音光の行動を許せないのです。


 鬼嗣は見た目は高校生くらいにかろうじて見えるものの、実際は物語内で最も年長の存在。滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』や、三遊亭円朝の『牡丹灯篭』をリアルタイムで読んでいたほどの長命の鬼です。鬼の中でも名門の血統を持ち、極めて高い地位にあります。

 そのため、「三鬼」が彼にスカウトされた際も、あまりに格が違いすぎることに恐れを抱き、断ることになりました。彼が開くお茶会や酒会は、もはや味を楽しむ場ではなく、ただただ畏怖を感じる場となるほどです。

 真美がそんな鬼嗣に対して堂々と怒鳴り込みに行けたのは、鬼嗣が鬼の身内には厳しく、天部や人間には優しさを見せる一面があるからかもしれません。


 愛香は鬼嗣と同じ職場で働いており、彼の存在に慣れているため呑気に振る舞える人物。また、彼女自身が肝の座った大物でもあります。

 なお、真美ですら鬼嗣に酒の席へ誘われたら断るであろうほど、彼が拠点としている寺は、天部や鬼にとって寛げる場所ではないようです。


 佐藤完は、『天国線』シリーズ第一作目の主人公です。彼の物語では、仁の誘拐事件が一般人の目にはどのように映っていたのかが描かれています。本作とあわせて、そちらも読んでいただけると嬉しいです。


 そしてこの先、このシリーズはどうなるのか?

 三木と友人の霊媒師やっている宮部の物語とか少し描きたいかなとか思っていますが、まだ何もストーリーは思いついていません。

 もし何かが湧いたら描きたいと思います。


 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎お ま け ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎


 三鬼は馴染みのBARでウイスキーを飲み、大きくため息をついた。

 新しく同じ区の担当となった天部。前任者とはまた別の意味で三鬼を疲れさせる存在だった。ようやく仕事から解放されたこの時間の酒が、余計に旨く感じる。

 天部になったくらいなのだから善人であることは確かだ。しかし、天音光とはまた違った意味で手がかかる。


 ——ガタン。


 すぐ近くで音がした。席に余裕があるにもかかわらず、すぐ隣に座ってくるやつがいる。三鬼は相手を確認し、またため息をついた。友人の宮部だった。

 宮部はマスターに酒を注文すると、意味ありげに三鬼を見つめる。


「どうしたの? なんか疲れてるね。 新しい天部(新人)くんの教育で忙しい?」


 三鬼はジロッと宮部を睨んだ。


「アイツらは別部署の存在だ。教育なんてしてやる義理はない」


「その割に、前のカワイコちゃんには手取り足取り教えてたのに?」


 宮部はニヤニヤと、人の悪い笑みを浮かべる。


「アイツが仕事しなかったから、注意していただけだ」


 宮部は肩をすくめる。


「俺としては、その方がメシの種が残って助かってたんだけどね〜。

 だったら今回の子にも注意してやってくれない? 仕事はほどほどに、頑張りすぎないようにって」


 三鬼は大きくため息をついた。


 今回の天部は仕事熱心すぎる。それ自体は好ましいのだが、なぜか異常に三鬼に懐いてしまった。

 仕事の相談、業務連絡を逐一してくる。

 担当地区が同じとはいえ、業務内容も違うのだから、天部と鬼が頻繁に関わる必要はない。

 それなのに、街で見かけると嬉しそうに駆け寄ってくる。

 バッタリ会わなくても、食事に誘ってくる。

 前任者とはまた別の意味で、面倒くさい。


「平和でいいだろ。お前の仕事がない方が」


 三鬼はグラスを揺らしながら言った。


「投資でも頑張って、穏やかに過ごせ」


 宮部は霊媒師をしており勘が鋭い。それもあって、投資でもかなり儲けているらしい。

 とはいえ、三鬼としては、人間にはなるべく”そういうもの”とは関わらずに生きてほしいのだが。


「え〜、つまらないよ〜!

 あっちの仕事してる時の、あのゾクゾクする感覚がたまらないんだよね。

 だから新任くんには、週休三日くらいで頑張ってって言っといて」


「お前、そんなことしてると、碌な死に方しないぞ」


 三鬼はウイスキーを一口飲みながら言った。


「お前のためにも、この仕事には休みなんてない! より一層頑張れって言っとくよ」


 天部が頑張れば、三鬼の仕事も減る。それはそれで平和なことだ。

 面倒くさがらずに、もう少し新任を労わってやるか。


 ブツブツと不満を漏らす宮部を横目に、三鬼はそう思った。


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