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キミの世界は青いから……  作者: 白い黒猫
高校生時代
21/31

よく分からない状況

 赤い髪と赤い瞳を持つ男……ミキさんだった。


「この馬鹿天部が! ジンに何てことをしやがった!」


 ミキさんの憤怒の表情が怖くて、彼が本当に鬼に見えた。比喩ではなく、彼の頭には角のようなものが生えている。


「ミキさん?」


恐る恐る声をかけると、ミキさんは俺の方に視線を向け、いつもの優しい表情になった。だが、髪と瞳は赤いままだった。


「ジン、久しぶりだな。少し大きくなったか?」


「お久しぶりです。あの、これってどういうことなのでしょうか?」


 俺の問いに、ミキさんは軽く溜息を吐いてから答えた。


「コイツの暴走でこんなことになった。すぐ戻るぞ」


 そう言いながら、ミキさんは周囲に視線を向ける。


 ミキさんは辺りを見回すように視線を動かした後、誰かに話しかけるように呟いた。


「……はい。無事保護できました」


 その言葉に、ヒカリ姉さんが慌てた様子で立ち上がり、俺に近づこうとする。


 しかし、ミキさんが俺と彼女の間に立ちはだかった。


「ミキさん、なんで! ジンくんが天国に行けないなんておかしいと思わないの?」


「やむを得ないだろ。天国の規定にまだ届いていないのだから」


 俺は混乱する。俺が何かしでかしたのだろうか? だから天国に行けない?


「俺、何か悪いことしたの?」


 俺が問いかけると、二人は俺を見て首を横に振る。


「ジンちゃん!」


 ミキさんが何かを言おうとしたその時、俺を呼ぶ大声が響いた。振り向くと、ふくよかな体型の女性がこちらに向かって走ってくる。母親だ。


「よかった、無事で……」


 母親は俺を抱きしめた。その抱擁は暖かく、なんだかホッとする。

 だが………俺の中で一つの疑問が湧き起こる。

 俺の母親は小柄で、いつもハムスターのように忙しなく動き回る元気な人だ。この人は……誰?


「良かった、ジンちゃん……」


 その声には安堵が滲んでいる。けれど、俺は困惑したままだ。


「大丈夫だよ……お母さん?」


 俺の声に、不信感が滲んでいたのだろう。女性――いや、この「母親」らしき人は悲しげな顔をした。

 俺は声をかけるべき言葉が見つからず、怠い体をその母親に預けるしかなかった。

 気がつくと、周囲には複数の人が立っていた。


「離して!」


 ヒカリ姉さんが男性二人に押さえつけられているのが見えた。

 その様子を見ていたミキさんは、俺の方に視線を向けると、やがて口を開いた。


「ジン、場所を変えて話をしよう。お前も辛いだろう」


 そう言うと、ミキさんは俺を軽々と抱き上げた。お姫様抱っこの体勢に恥ずかしさを覚えたが、体が重く自由に動けないので、むしろ助かった。


「こちらの方の騒ぎにより、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


 ミキさんは俺を抱いたまま、母親に向かって頭を下げた。そしてそのまま歩き出し、海岸に現れた唐突なドアをくぐる。

 その時点で俺の意識は、怠さに耐えきれず途切れてしまった。

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