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キミの世界は青いから……  作者: 白い黒猫
中学校時代
11/31

痛くて辛い……

 昨日は火曜日でその続きで変わりばえのしない水曜日が来るはずだった。

 ヒロシくんがオススメされた本を、昨晩遅くまで読んでいたのでちょっと寝不足気味。

 でもヒロシくんに会って、読み終わったばかりの感想を語り合えると思うと、ダラダラベッドに寝てられない。俺はご機嫌でリビングへ行く。

 情報番組の流れるテレビを見ながら母親が作ってくれた朝食を食べていた。

 生活の裏技のコーナーが終わりニュースへと変わる。

 俺はテレビから流れてくるニュースに持っていたトーストをテーブルに落とす。


 テレビにの画面には何度か行ったことのあるあのマンション。


【昨日夕方、〇〇市内のマンション六階から佐東茜さん(36)が飛び降りて死亡しているのが発見されました。管理人が異変に気づき、警察へ通報しました。

 警察が現場に駆けつけ、佐東さんの部屋を調べたところ、夫である佐東和さん(42)、高校生の息子の佐東啓司さん、そして身元不明の女性の3名の遺体が発見されました。

 警察は、佐東茜さんが3人を殺害した後、自ら命を絶った可能性があるとみて捜査を進めております。

 今後も、事件の詳細な経緯や背景について慎重な調査が行われる見通しです】


 イタイガハッケン?


 え? どういうこと?

 俺は慌てて部屋に戻りスマホを取り出しヒロシに電話する。

 何度コールをしても出てくれない。

 スマホに俺は「ヒロシ!ヒロシ!」と呼びかける。

 電話が全く繋がらない。

 単なるサトウさん違いであって欲しいとLINEで連絡返して欲しいとヒロシにメッセージを送るけど既読にならない。

 他のクラスメイトからは次々状況を聞くLINEのメッセージがくる。


 そして見つけたニュースサイトに出てくる三人の人物を殺して自殺したという佐東茜さんという女性の写真はヒロシのお母さんだった。


「ジン! 落ち着いて 先ずは本当かどうか調べましょう。ソレに寝起き姿のままどこ行くの」


 部屋から飛び出そうとする俺を母親が止める。

 今の俺は短パンにTシャツというラフすぎる格好。でもそんなのも気にせず俺はそのまま走りだす。

 朝なのに野次馬らしき人がチラホラいてマンションをスマホで撮影したりしている。

 ヒロシくんの部屋の下あたりに植えられていたツツジの木が無惨に潰れボロボロになっている。

 マンションの壁には、荒く筆を走らせたような赤い筋がついている。

 それが何かとか想像したくない。


 ショックで震えている俺の方に、上からゆっくり近づいてくるものがある。


 俺の身長くらいある大きく青いモヤモヤしたもの。

 見たこともないほど濃く青く染まった残情。


 普段なら俺は残情に近づき触るということはしないけど、俺はそれに近づき手を伸ばす。

 その色で分かったから。それがヒロシくんが残していったモノだと。


 震えながらソッと触った。


 触ってみて思う…やっぱりヒロシくんの青い感情だと。

 ヒロシくんの残情から俺に強い気持ちが流れてくる。でもそれは怖くも、嫌だとも思わなかった。

 目の前にヒロシくんのお家のリビングの光景が浮かんできた。

 いつもと違うのは、そこに三人の人物が見えること。

 ヒロシくんのお母さんが狂ったようにソファーにいる女性を包丁で滅多刺しにしている。それを男性が壁にもたれた体勢で震えながら見ている。

 ヒロシくんに少し似ている感じから、多分お父さんなのだろう。

 『や、やめてくれ……頼むから』と声をかけたことで、ヒロシくんのお母さんの意識がオジサンの方に向く。

 オバサンはゆっくりと立ち上がりオジサンの方に向かう。オバサンはゾンビは何かのように意味不明な言葉を云いながらフラリとして足取りでオジサンに向かう。

 オジサンは恐怖から足が動かないのかお母さんが近づくのを抵抗もできず立ったまま。オバサンが包丁を持った手を振り上げた段階で「お母さんやめて!」というヒロシくんの声が響く。

 見えている視点がオバサンの方に近づいていく。オジサンの首を切り裂いた包丁はそのままの動線で俺の体を斜めに切り裂いた。

 オバサンの目が見開き、狂って般若のような顔だった顔に人間の表情が戻る。

 壮絶な痛み…抜けていく体の力、ゆっくりと倒れる世界。包丁で負った傷以上に心が痛い……。

 その視線の中でオバサンはヒロシの名を呼び叫ぶ。手にしていた包丁を手放し、俺を揺さぶる。ぼやけていく視界の中にあるのは、息子を案じる母親の顔。

 オバサンは俺から手を離し血に濡れた手で顔を覆い震える。オバサンの髪が風で揺れた。


 手の平を顔から離したオバサンの視線が風の吹くほうに吸い込まれるように動く。

 俺は必死に止めようと 手を上げようとするけど動かない。

 オバサンはゆらりと立ち上がり窓の方に向かいそのまま躊躇うこともなく窓の向こう側へ消えていった。


 心が痛い程悲しくて苦しい。

 何度も再生される同じ光景を俺は眺め続けてしまった。


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