Life is UNDERGROUND ~ライフイズ アンダーグラウンド~
悩み知らずのあの太陽が昇り出すよりも先に
このクソったれな世界から飛び出してみせる
端女みたいな恰好をして車に乗り込んだら
力強くアクセルを踏み込み右足はそのまま
あとはただ 速度を上げていくだけ
ブレーキなんてもう 踏む必要さえない
ここには何もなかったし
ここでは何も手に入れられなかったから
失敗続きの人生
僅かばかりの希望に縋りついては振るい落とされて
角砂糖一個分にも満たない夢はすでに溶けて消えた
こんなことってある?
私の世界は信じられないくらい灰色で
色味も甘味も旨味もなくなっちゃった
残っている味といったらもう酸味と苦味くらい
こうなったらもう どこまでも飛ばすしかない
友達は嫌い 元カレはもっと嫌い
親兄弟はそれに輪をかけて嫌い
自分だけが好き!
速度超過の人生
アクセルは常に全開で
ブレーキなんてものはもう意識さえしない
速度超過の人生
アクセルは常に踏み込むの
ブレーキなんてものはもう存在さえしない
汚らしい車に乗り込んだら
からっぽの人生にさよならを告げて
あとはただ 速度を上げていくだけでいい
時間や人生と同じように
もう 止まることはできないけれど
速度を上げ続けることだけはできる
行く当てがないということは
全ての道がフリーウェイ
どんな場所をどんな速度で走ったっていい
やがて見える虹色のステンドグラス
白髪頭の神父様が口を開いて戯言を宣う
“神よ 人の罪を赦したまえ
ああ 神よ 願わくば 犯した罪を償う機会を与えたまえ”
呪われたノイズのように五月蠅い神父の言葉
そんな妄言はなんの役にも立たない
そんな綺麗事は世の誰もが求めない
私にとっては悪魔の囁きにも劣る呪いの言葉
"神よ 人の罪を赦したまえ
ああ 神よ 願わくば 隣人を愛する率直さを与えたまえ"
黙れ 神父め
これ以上 呪いの言葉を続けるならば
お前の頭に銀色の十字架を突き立ててやる
鬱陶しい呪文から逃れるように走り
夜の街へと逃げ込んで
息を潜めるよう生きる
煌めくネオンの届かない街角で
ただ 突っ立っていれば
いつでもビジネスパートナーができたから
汚れた身体ごと
もっと汚れた思い出もシャワーに流して
ベッドに横たわったら
あとは されるがまま
オーバードーズを決めて
今日会ったばかりの男に身体を預ければ
何だって忘れられるから
時折感じる孤独感も
常々感じている無力感も
そして自分が自分であることさえもね
こんにちは アンダーグラウンド
さようなら 私を虐げるリアリティ
他人からの愛情がないと生きていけないなんて
人はなんて不都合な生き物なんだろうって思う
息遣いは肉欲のバラード
目の回るような灰色の視界
快楽のナイフに引き裂かれ
薔薇色に染まっていく
アンダーグラウンドの快楽に溺れ
誰も辿り着きたくない未来へ向かって進んでいく……
爛れた生活
破れかぶれのその日暮らし
義務か何かみたいに残り粕の寿命を消化するだけの日々
目を覚ますといつも後悔する
自分の選び取ってきた道ではなく
自分が選ばされてきた道でもなく
生まれてきたこと そのものをね
出来損ないの潰れた林檎みたいな みすぼらしい青春
まるで甘味のない酸っぱいだけの みっともない青春
フラッシュバックとともに手の平から零れ落ちていく可能性の欠片たち
それらを取り戻すことは もう叶わないけれど
それでも 速度を上げ続けることだけはできる
例えば あなたたちが私を置き去りにしたように
私も あなたたちを置き去りにすることができる
幸せにはなれなくとも 速度を上げ続けることだけはできる
元同僚は嫌い 家族はもっと嫌い
裏切り者はそれに輪をかけて嫌い
自分だけを信じてる!
こんにちは 美しきドブネズミたち
さようなら ねずみ色のリアリティ
我儘放題のスピード・スター
一夜限りのパートナーと悦楽の海に溺れたら
ガソリン代わりに命を燃やして車を飛ばすの
行く当てがないということは
地獄へ直行したっていいっていうこと
死神が通せんぼするようなら
撥ね飛ばしてやればいいっていうこと
私は速度を超過する
私はあなたたちと同じ時間の流れには乗ってやらない
やがて見えてくる白い建物
いつか見た胡散臭い神父と
初めて見る辛気臭いスープキッチン
行く当てのない者たちが群がってる
その光景といったら
人生がいつもうまくいかないことを物語っているよう
ついでとばかりに頂いてみれば
とても食べられたものじゃない
まるで持たざる者たちが流した涙みたいな味をしてる
一口だけ含んで塩辛さを味わったら
残りは私より顔色の酷い人に丸投げ
奪い取るかのような勢いで齧りつく
呆気に取られている私の不意を打つように
背中越しに放たれた言葉に この耳を疑う
“ありがとう”
こんなことってある?
私に対して『ありがとう』なんてある?
度肝を抜くような神父の言葉
身体の芯まで打つ神父の言葉
抗議したくなるほど苛立つのに
どうしてか涙が止まらない
どうしてか口が動かせない
他人から感謝の言葉を投げかけられるなんて
いったい いつぶりだったっけ
なんだか とてもこそばゆくて
なぜだか 涙が止められず蹲る
泣きじゃくる私の手に差し伸べられた手
意を決して握り返してみれば
もう一度だけ
もう一度だけ 立ち上がる気分になっていた
もう一度だけ
もう一度だけ やり直せる気分になっていた
この美醜の境界線の上で
あの白と黒の鳥のように
アンダーグラウンドに
アンダーグラウンドに別れを告げて
補足
スープキッチンとは、炊き出しのことです。
お読み下さりありがとうございました。