第3話 オンライン
仁はまさかのお誘いを受けた。Yukiyamaと一緒にゲーム実況をするなんて、理解不能だ。あまりに突然な出来事に心臓がバクバクと音を鳴らし、非現実感に困惑した。
だがよく考えてみれば、Yukiyamaのチャンネル登録者数は100人に満たない弱小チャンネルだから、現実味はある。
この歌ってみた動画のコメントも三つしかない。しかもその内容は、知り合いらしき人と、通りすがりの外国人が書いたような英語のものだった。
これは現実、夢心地の現実なのだと仁は気づいた。そして、誘いを快諾した。
それから数日後、二人は共に同じゲーム画面を開いていた。
それは有名なオンラインのシューティングゲームだった。プレイヤーは徐々に狭くなるエリア内で武器や防具を拾ったり奪いあったりしながら、チームで勝利を目指して戦い抜くゲームだ。
自慢じゃないが、仁はこういういわゆるTPSやと呼ばれるゲームが得意だった。チーム三人一組なので、二人はランダムで選出された野良と呼ばれるプレイヤーを合わせてチームを組み、何度も何度も戦った。
仁の家にマイクはなく、彼は黙々とプレイしていた。
Yukiyamaのリアクションはイヤホンを通して聞こえており、仁はそれを楽しんでいた。
焦ったり。
「狙撃されてるヤバいヤバいヤバババァ! !」
喜んだり。
「この距離で二キルとか私すごない! ?」
時に敵を煽ったり。
「芋だなぁこいつ。片手縛りか? オメー片手でチ〇コ握りながらプレイしてんのか?」
仁はYukiyamaの一言一句を楽しみながら、そして同時に彼女の為一瞬一瞬に真剣になりながら、ゲームをプレイした。
その甲斐あってか、動画の再生数はうなぎ登りだった。彼女の動画は平均100回程度の再生回数だったが、仁が参加するTPSゲームの複数の動画は平均1000回再生にもなり、遂には彼女のチャンネルで最も再生されるジャンルとなっていた。
ただ単に有名ゲームだから視聴者が釣れただけかもしれない。
あるいは仁が考えた動画タイトル『Apex Apocalypseプレイ動画。歌い手がゲーム実況で本気になるあまり、ギリギリの18禁発言多発wwww』のお陰かもしれない。
理由はなんであれ仁は、彼女の役に立てたような気がしてそれが嬉しかった。
そう思っていると、Yukiyamaからこんな提案があった。
「よかったらこれとは違うゲームもやってみませんか? 仁さん色んな意味で立ち回りも上手いしチャットでは面白いこと言うから、きっと違うゲームでも面白い動画を作れるとおもうんです! タイトルのお陰とは思いたくないので!』
もちろん仁に断る理由はなかった。そして二人はTPSとは打って変わって、動物達が暮らす街を舞台にしたほのぼのゲームをすることになった。