55.お目覚めの令嬢
マリーシアさんの誤解を解くのにだいぶ時間がかかった。半分は事実なだけに余計に手間取ったのが大きい。
ただ自室に戻ってもまだリーティアさんは眠っていた。よっぽど疲れていたのだろう、こういうタイプの人間はそういう様子を見せることを嫌うからわかりづらいのだ。
(まるで先輩みたい)
気が付いたら本人も気づかないうちに手遅れのボロボロになっていたりするから余計に質が悪い。
そんな穏やかな寝息を繰り返す彼女を起こすのは非常に申し訳ない気持ちもあったが、時刻はすでに夕方。そろそろ起こさないといけない時間である。
「……リーティアさーん? もしもーし」
どう起こせばいいかわからないので適当に肩を揺らす。しばらく「うーん……」と不満気な声を漏らしていたが、根気よく揺らしてやっと目が開いた。
「……あれ、どうしてわたしの部屋に、あなたが……?」
「私の部屋ですけど……」
「……? っ!!」
しばらく間があって、意識が覚醒した瞬間彼女は跳ね上がるようにベッドから身を起こした。
「ごめんなさい! 私、あれ、なんでここで……!?」
「まあまあ、落ち着いて……」
珍しい慌てようのリーティアさんにこっちも慌てそうになりながら、
「そ、そうだったわね。貴女に課題を教えようとして……みっともないところを見せちゃったわね」
「それはいいんですけど。でも、そうなっちゃうまで自分を追い込むのはよくないかと……」
「そうね。自己管理が出来てない証拠だわ。もう少し色々と考えないと」
「いやいや、そうじゃなくて。もっとこう力を抜くというか? リーティアさんにも私ぐらい何も考えない時間があってもいいんじゃないかと思うんですよねぇ」
「貴女っていつもどれくらいぼーっとしてるの?」
「……ほぼずっと?」
「はぁ、貴女はもう少ししっかりしなさい。ところで何で制服を着ているの?」
そう、今の私は制服を着ている。王女様より招待された茶会に流石に私服ではいけないのでスタンダードな制服で参加した。
学園内でのそういう催しは基本制服が原則だったのが幸いした。
「あ、これ? いやぁ、実は帝国の王女様に呼び出しを食らって……」
「え? どういうこと!?」
ただ、それを告げると案の定彼女は驚いた。というわけでかくかくしかじか、何があったかを説明する。
「そうだったの……私が起きていれば一緒に行けたのに、ごめんなさい」
「そういうとこですって。別に何にもなかったし、むしろぐっすり眠れてラッキーぐらい思ってもらわないと」
「……難しいわね。それにしても貴女にも招待状なしに当日誘うなんて……帝国ではそういうのが普通なのかしら」
リーティアさんも同じことをされたのだろう。嫌悪感が隠さず顔に出ていた。
「だけど彼女が殿下と婚姻を結ぶために来たという話は初耳だわ。本当にそう言ったのね?」
「うん。それでリーティアさんが第一候補だろうから何か情報はないかって……もちろん何も言ってないよ!」
「大丈夫よ。貴女はそういうのに巻き込まれるのが嫌だから知っていても何も言わないでしょう?」
「おっしゃる通りで」
リーティアさんはクスクス笑うと、少し表情を引き締めて私に問いを投げてきた。
「ねぇ、ステラさんから見て私って王妃になると思う? 王妃になるのが似合うと思うかしら?」
「? 急にどういう……」
「細かいことは考えないで。貴女から見てどう思うか知りたいの」
彼女の眼は真剣そのものだった。
仕事が忙しく投稿が遅れました……すみません
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