53.お転婆どころじゃなかった
「ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう……」
そもそも茶会とは何のために開かれるものだろうか。その目的のほとんどはまず交流がメインとなるだろう。あとはそこに参加する人たちの立場や関係によって政治などにも影響が出てくるかもしれない。
ただ、一貫して基本的に招待するのが基本であり、その日時も程度の差はあれど数日後とか相手も調整出来るようにするのが普通である……はずだ。
「今日は私に招待されて光栄に思いなさい。本来貴女はここに呼ばれない身分の者なのだから」
「は、はぁ……」
だから当日のお誘いなんていうのは礼儀知らずで無礼だと思われるというのは、リーティアさんの家で学んだこと。
だというのに目の前の彼女は全く悪びれずそれどころか威張り散らす有様である。
「座っていいわよ。元々貴女に礼儀作法なんて期待はしてないもの」
なんというか凄い。この世界に来て割とキツイ性格の人もいたけどそういうのとは次元が違う。ナチュラルに私を下に見て話しかけてきているのはビンビンに感じていた。(それはそれで事実なのだが)
とりあえず言われたままに席に座って彼女を軽く観察してみる。
(やっぱり見たことない……)
身長は平均よりもちょっと低めで並べば私の方がちょっと高いだろう。ただ、高圧的な態度と生まれ持った(?)王族オーラのようなもので雰囲気は大きく見える。
割と色んな髪色の人がいる世界だけどその中でも目立つピンクゴールドの髪は緩やかなウェーブを描いているがその雰囲気とは違う強気な目とアンバランスながら不思議と調和しているようだった。
(でも、やっぱり知らないなぁこの人)
少なくとも漫画では読んだことがない。そしてラティーナ様もよくわからないと言っていたから本当のイレギュラーの可能性がある。色々と私とラティーナ様が動いてしまった結果なのだろうか。
「緊張しなくてけっこうよ。今日は機嫌がいいから多少粗相をしても気にしないであげる」
「あ、ありがとうございます……あのー、それでなんで私呼ばれたんでしょう?」
「それはもちろん貴女が光魔法の適性を持っているからよ」
やっぱりそれかと思う。まあ、それでこの学園にいるし知らないわけがない。
「それで? その光魔法で何が出来るのかしら?」
「何がっていうと……?」
「はぁ? 何か力があるんでしょう? それを見せなさいって言ってるのよ」
「え、ま、まあいいですけど」
そう言って私は光の球を浮かした。
「………………」
「………………」
ぽわーと微妙に温かい光が広がる。それと同時に微妙な空気も流れる。
「…………それなに?」
「光魔法、ですけど」
「……はぁ!?」
あ、驚く表情は普通の女の子っぽいなんて思っていたら何故か私は説教をされていた。
「希少な光魔法なのにこんなことしかできないなんて勉強不足だし修行不足じゃないの!」
「いや、一応やることはやってるんですけど……」
半分正解しているが流石に怠けているとは言えなかった。
「貴女、この学園での交友関係は!?」
「え? 別にクラスメイトと話すぐらいですかね」
「……なんてこととんだ読み違いだわ」
「?」
急に話題を変えたりブツブツとひとり言を言い出してちょっと怖い。しかし声をかけるわけにもいかずしばらく待っていたらやっと彼女が顔を上げた。
「貴女についてはよくわかったわ。それじゃ貴女が見て王子やあの公爵令嬢について知っていることは?」
「いや、別に大したことは知らないですけど……」
これも事実である。リーティアさんとは何故か一緒にいることが最近多いが知っていることはあまりない。
(そういえば相談したいことがあるって前からずっと言ってたけど結局聞けてないなぁ)
リーティアさんの家でそのことについて聞こうと思っていたのにこの王女様の来訪で流れてしまっていた。
その王女様は私の回答に不服なのか、明らかに落胆した様子でため息をついた。
「まあ、庶民ですものね。そんな色々と知っているわけがあるわけないもの」
「えっと、お役に立てずすみません……?」
「その通りよ全く。まぁいいわ、最初から期待なんてしてないし。それに貴女は特に邪魔でもなさそうだもの」
「邪魔?」
突然聞こえたちょっと物騒な言葉を聞き返すと彼女は自信満々に言い放った。
「ええ、だって私はこの国の王子と結ばれるためにわざわざやってきたもの」
「…………はい?」
私の目はきっと点になっていただろう。
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