46.乱入者
さっき話したばかりの早すぎる再会だった。
「最近忙しくてリーティアちゃんともたくさんお話できなかったもの。別に私が参加してもいいでしょう?」
「わ、私は良いとは思いますけど」
チラ、とリーティアさんを見ると彼女はため息をついて呆れたような目を向けていた。
「もちろんいいですけど、でもおしゃべりじゃなくてマナー講義ですからね」
「ええ、もちろんわかってるわよ。私も経験だけは豊富だから色々と教えてあげるわ」
「それならいいですけど……」
そういえばこの親子が話しているのを見るのは何だかんだ初めてかもしれない。基本的に今までも食事の時は忙しいようで中々一緒になることはなかったからだ。
(敬語なのはやっぱり公爵家だからなのかな?)
「そういえば今日の講師は?」
「今日は私だけよ。講師の都合がつかなかったの。まあ、学園の茶会に関しては私の方が詳しいしね」
そんなわけで茶会のマナー講義が幕を開けた。とりあえず細かい作法は置いておくがそこまで複雑なものでもなさそうだ。
「前から思ってたけど村出身だけどある程度作法は身についているわよね」
「え?」
「スプーンとかフォークの使い方とか……まあ、その他諸々もだけど初めてとは思えないんだけど」
それはたぶん過去の記憶が影響しているのだろう。この世界ではやっぱり平民と貴族にはどうしたってそういう教養の差はあるようで、私の動作は不自然なのかもしれない。
「……まあ、雰囲気で?」
「雰囲気で出来るものでもないと思うけど……まぁいいわ。続けましょう」
茶会というのは順序がある。会話の楽しみ方もあるし立場もあり礼儀も必要だ。意外と格をはかるという意味では中々に奥が深い。
「だけど、楽しむことも重要ね。そういう余裕を見せることも必要なのよ」
「はぇぇ……」
そこら辺は流石公爵家令嬢である、動作の一つ一つが既に完成されているようだった。
「ねぇ、リーティアちゃん。クッキーはもう少し甘い方が私好みなんだけど」
「……お母様」
ただ、さっきからちょくちょく横槍が入っているせいで優雅な顔つきが何度か歪んでいる。
「あまり邪魔をしないで欲しいのですが」
「まあ、母親に向かって邪魔なんて。ひどいわよねぇステラちゃん」
「え?」
しかも私にキラーパスまでよこす始末である。
「お母様……本当に追い出しますよ」
「うふふ、まあいいじゃない。ステラちゃんは飲み込みも早いし、教えるよりは実践方式のほうが身につくんじゃない?」
「それは、そうかもしれませんが」
「それに学園の話も私は手紙でしか詳しく知らないんだもの。色々と教えて欲しいわ」
リーティアさんはラティーナ様のことになるとため息をつくことが多い気がする。しかし、ラティーナ様の案は理にかなったもののようで納得いかないような顔をしていたが、最終的に頷いていた。
私としてもお堅い授業形式よりは普通のお茶会の方がありがたかった。それに光魔法があるとはいえろくにまだ扱えないし私の身分は一般市民である。だから、誘われるとは思っていなかった。
「ねぇ、ステラちゃん。貴女からみてリーティアちゃんは学校でどんな感じかしら? 手紙でもらうのはリーティアちゃんの主観だから恥ずかしい話とかないのよー」
「うーん、そういうのありましたかねぇ……」
「ちょっと! 私変なことはなにもしてないわよ!」
それからしばらくは賑やかに談笑をして楽しい時間を過ごした。
今週が多忙のため申し訳ないのですが、月、水、金で投稿させて頂きます。
来週からはまた毎日投稿していきたいのでよろしくお願いします!




