37.お出迎えは自室で
まあ、前世も今も一般市民の私である。正直こういう貴族の館みたいなところに憧れというか、一度でいいから来てみたいなぁという願望があった。
「おぉぉ……」
なんというかいい意味で想像通りの造りだ。汚れ一つない大理石の床やいかにも高そうな装飾品の数々、よくわからないけど高そうな絵画やら、歩いているだけでそういうのが目についた。
「レイファール家の役割は外交ですから、よく来客があるのです」
「だから、こんな色々と置いているんですか?」
「ええ。こういうところで国が豊かなことをアピールするのです。まあ、来客する方によっては片付けることもありますが」
「へぇ……」
引き続き案内をしてくれているスーラさんからレイファール家についての説明を受けながら館を歩く。流石に大きい屋敷なだけあって使用人がたくさんいるようで執事っぽい人からメイドさんまでたくさんの人とすれ違う。その大体の人がスーラさんに頭を下げているところを見ると彼女はその中でもけっこうな地位にいる人のようだった。
「お嬢様は現在自室で勉強中ですので、そこまでご案内いたします」
「えっと、リーティアさんのお母さ……じゃなくてラティーナ様とかご当主様とかは……?」
作法とかよくわかっていない私でもこういうところに来たのならまず挨拶をすることぐらいは知っているつもりだ。
「ご当主様は現在は隣国を訪問中でして、ラティーナ様は本日お茶会に参加しておりまして夜には戻られる予定です」
「あ、そうなんですね。もしかしていつもこんな感じだったり?」
その問いにスーラさんは首を横に振る。
「いえ、今回は偶然都合がつかなかっただけで、いつもお嬢様が帰ってくると皆様で仲睦まじく過ごすのが普通なんですよ」
「…………」
漫画では特別仲の良い描写はなかったリーティアさん一家である。そもそもそんなに仲が良ければ帝国に力を貸すような非行には走らないと思うのはちょっと楽観しすぎだろうか。
「ですので、本日は夜までは自由に過ごしてもらって構いませんとのことでした。流石に入ってはいけない部屋などはありますので何でも好きに……というわけにはいきませんが」
「いやいや、そんな動き回るつもりはないですって! そもそも、そういえばなんで私ってお呼ばれしたんですかね……?」
「……それはお嬢様が誘ったからでは?」
「んえ? いや、まあそうですけど」
「お嬢様も今まで中々誰かを誘うということができませんでしたから、楽しみにしておりましたよ」
なんというかリーティアさんなら呼べば誰でも来そうだと思ったのだが、やっぱり公爵家ともなると誰かを個人的に呼ぶのは難しいらしい。なんでも個人的に呼んだだけで繋がりの意味合いが出来てしまうため安易に出来ることじゃないというのだ。貴族は難しい。
そういう意味ではどこの家とも繋がりがなく、一般市民の私は呼ぶのにノーリスクなのかもしれない。
一応、光魔法の適性があるため王家にちょこっと目をつけられてはいるものの特に問題はないだろう。
「さ、到着しました」
そんなこんなで話をしていたら何やら大きな扉の前にいた。
スーラさんがドアをノックする。
「お嬢様、ステラ様をお連れしました」
「入っていいわよ」
すぐに返事が来て扉が開かれた。大きくて広くて綺麗な部屋の中、彼女は椅子に座ってこちらを見ていた。
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