36.家が立派過ぎる
数日間の滞在を終えてまた出発する日がやってきた。何だかんだゆっくりと過ごしてリフレッシュは出来たが護衛の方々はずっと残っていたのでそこだけは申し訳なかった。
「じゃあ、また次の休みに帰ってくるよ」
「はいよ。綺麗なお友達も出来たみたいだし、のんびり学んでおいで」
「追い出されないようにな」
両親ともまたしばらくお別れだ。行きでも乗っていた馬車の前にはスーラさんが立っている。
「さ、どうぞ。レイファール家までご案内いたします」
「う、うん、よろしく」
てっきりスーラさんはリーティアさんと一緒に帰るのかと思ったら彼女もまた残っていた。もしもの場合を想定しているとは言っていたがそこまで重要視されてもちょっと困る。
まあ、それももうすぐ終わりだ。
「行ってきまーす」
両親と野次馬の村人何人かに見送られて私は出発した。数ヶ月ぶりだったせいか懐かしさはなかったけどこうして離れていくとちょっと寂しい。
「大体行きと同じ日程を取ります。しっかり護衛するのでご安心ください」
「あ、ありがとう。ところでスーラさんはあの後リーティアさんに怒られなかったの?」
「それはもうたくさんお説教を頂きました」
「なんでちょっと嬉しそうな感じで……」
昔からお付きしているメイドだからこそ、そういう余裕があるんだろうか。
「ところで私って初めてリーティアさんの家に行くんだけど、何か気を付けることはありますかね」
「お嬢様のご友人という立場ですから、そう難しく考えなくても大丈夫ですよ。まあ、物を盗んだりとかはダメですけど」
「それはどこでもそうだよね???」
このメイドさん、冗談か本気かわからない。でも確かに彼女の言う通りリーティアさんの友人として訪ねるわけだしそこまで心配はいらないのかもしれない。
しかし、そんな甘い考えはあっさりと打ち破られたことになる。
「……わぁ」
道中一泊して、到着日。今回はまったく襲撃もなく安全安心の道中であった。そして、もうすぐ到着するとスーラさんに教えて貰って車窓から外を見た私は言葉を失った。
「…………でっか」
公爵家。国でも有数の貴族だからそりゃ立派な家だろうとは思ってたけど、これはもう……
「…………でっか」
同じことを繰り返す。洋館と一言で表すことが出来るのだがとにかくその規模が大きい。
「こんな大きいんですか?」
「はい。レイファール家は外交に関することが多いですから、他の国からお客様が訪ねてくることも多いため、このように立派な屋敷を構えております」
「な、なるほど」
そういえばそんな設定だったっけ。漫画ではそこら辺はまったく触れられていなかったからすっかり忘れていた。
馬車はそのまま進む。門のところで検査が入りそのまま中庭へ。しっかりと整理された庭園と大きな噴水。下手したら城と間違えてしまいそうなほどだ。
(こ、こんな家に入るの……!?)
「精一杯おもてなしさせて頂きますので、お楽しみに」
「…………」
早くも暗雲が立ち込め始める私の心であった。
いつも読んで頂きありがとうございます!
明日から所用のため次回の投稿はお盆明けになります!しばらく空きますがよろしくお願いします!