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35.特に何もない村の中で

 夕食は何とか何事もなく終わってくれた。

 食事のメニューは焼き立てのパンに蒸かした芋、それと野菜の具沢山スープに、さらに肉!

 一応、学園に出発する前の日の食事はちょっと豪華だったけどここまでのレベルではなかった。


 どこにでもいそうな父と母。一応リーティアさんは貴族だけど公爵家だとは話しておらず、末端のしがない家だと説明したらしく両親の対応は割とフレンドリーで、知っている私だけが冷や冷やしっぱなしであった。


「うちの娘が迷惑をかけていませんか」

「学園でも寝てばっかりいるんじゃありませんか?」


 父も母も私への信頼が恐ろしいほどない。確かに昔からよく寝ていたし学園でも寝まくっているけど。


「いえいえ、迷惑なんてそんな。ステラさんには仲良くしてもらっています」


 リーティアさんは丁寧な対応で上手く誤魔化してくれたおかげで事なきを得たことは感謝したい。

 それからある程度談笑をして食事は終わる。


「ちなみに寝るところは……」

「もちろん宿屋を取ってあるわよ。こういう村に泊まるのは実は初めてだけどね」


 せっかくなので宿屋まで送ると言って一緒に家を出る。すでにあたりは真っ暗になっていたが他の家々からの明かりで村自体は明るい。


「そういえば、食事って普通に食べてたけど大丈夫なの?」

「毒見は当然行っているわよ。私は大丈夫だとは思っているけど一応ね」


 どうやら私が寝ている間にそういうことはあらかたやっていたらしいことを知る。


「ところでけっこううなされていたけど悪い夢でも見ていたの?」

「んん……まあ、そんなところ、ですかねぇ」


 前世の夢とは伝えられなかった。いつかは過去の記憶と預言についての話をして誤解を解かないといけないとは思っているのだが。


「もう明日には帰るの?」

「ええ。ゆっくりしたいけどまだやることがあってね。貴女もゆっくりしたらそのまま馬車で帰ってくればいいわよ」

「それも見越して馬車用意してくれたの?」

「ええ、まあ最終的な判断はお父様とお母様だけどね」


 そういえばリーティアさんの父とは会ってないなと気づく。勝手に厳格なイメージがあるがどういう人なんだろうか。


「お父様? うーん、そうね……自分に厳しくお母様と私に甘いっていう感じかしら」

「それは……親バカで愛妻家ってことかぁ」


 まあ、あの母とリーティアさんみたいな娘がいたら甘々になるのは頷ける。


「礼儀とかには厳しいけどね。でもステラさんなら大丈夫だと思うわ」

「…………」


 何をもって大丈夫だと言ったのだろうか彼女は。こちらはそういうのは最低限しか知らない人間であるというのに。


「私の友達って言ったら問題ないわよ」

「そういうもんかなぁ」


 そんな話をしていたら村にある唯一の宿の前についた。そこにはスーラさんが待っていた。


「お帰りなさいませお嬢様。それにステラさんも送って頂きありがとうございます」

「……貴女ね、ステラさんに私が来ることを伝えていなかったんですって?」

「いえ、お楽しみにとお伝えしておりました」

「それは伝えてないのと同義よ」


 相変わらずの無表情だが、この裏では意外とお茶目な面があるようだ。主の言伝をまともに伝えないのは問題だとは思うが。


「まったく……じゃあ、おやすみなさい。明日の朝には出ると思うから会えそうにもないし、家で待っているわね」

「……うん。おやすみなさい」


 別れの挨拶をしてリーティアさんは宿に入っていく。スーラさんもペコリと一礼をして入っていった。

 私も引き返して家に戻ることにした。実はこの時も護衛の方がバレないようについていたことは後から知ることになった。


 そして翌日。昼前に起きた私はとっくにリーティアさんが出発したことを両親から知る。何でも村の人で見送ったらしい。確かにこの村にそういうご身分の人は滅多に来ないから珍しかったんだろう。

 ただ、驚いたのはまだスーラさん率いる護衛の方は残っていたことだ。確かにレイファール家への送迎はあるがそのまま残るのは過剰な気がするが、これも念のためというやつなのだろうと深く考えないことにした。


 それから数日後。しっかり村でのんびりと過ごした私に遂に出発の日がやってきたのだった。

いつも読んで頂きありがとうございます!

次回からちょっとずつ物語が動き始めて、最後に向けて進む感じになる予定ですので、

よろしくお願いします!

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