31.最強の護衛達
私の村まではおよそ一日かかる。それは途中の村で一泊するのも含めての時間である。一応休みなしでいけばつけないこともないが、夜は色々と危ないので可能であれば宿泊するのが普通である。
「それではステラ様はこちらでお休みくださいませ」
途中にある村。本日の宿泊地なのだが、ここから色んなところに道が伸びているため村の中でもかなり発展しており、宿屋が多い。
ただ、これは設定上だけで知っている話だった。本来なら私は今頃攫われて監禁されているはずだからだ。
「えっと、スーラさん達は?」
「交代で見張りを行います。恐らくもう大丈夫かとは思うのですが」
「は、はぁ……」
どれだけ襲撃者がいたのかはわからない。だけど、馬車は私の乗っている一台だけになっていたから、きっと襲撃者は悲惨な目にあったに違いない。
だけど、そう考えると原作のステラが攫われるのもわかる。ここまで用意するのはやりすぎな気もするが何にせよ初めて原作の展開をぶち壊したことになる。
「残党がいる可能性もありますので、私たちは警備につきますがステラ様はゆっくりお休みください」
「スーラさんも警備するの?」
「ええ、私もそこそこ戦えるので、一応備えとして」
「そうなんだ……」
私自身戦うことは出来ないから、スーラさんが強いかどうかわからない。だけど、今日一日まったく慌てる様子もなかったし、淡々としているから肝は据わっているのだろう。
「明日の朝も早いですからお休みください。虫すらも通しませんので」
「そこまで厳重には……いや、ありがとうございます。おやすみなさい」
「良い夜を」
ここまでやってくれて文句を言う資格なんかない。ここは大人しく要望に沿って寝るのが正しい。
「うばぁー」
用意されていた部屋に入ってベッドにすぐ突っ伏す。滅茶苦茶綺麗で広い部屋……というわけはなく至って一般的な普通の部屋である。
「でも、結局何が起こってたのかはわからず仕舞いだったなぁ」
漫画では王子含め兵士と帝国兵がバチバチに戦って、ステラは回復魔法でひたすら援護していた。まあ、その話では死傷者も出てたわけだし、だからこそ怪我人が少ないことは良いことに違いない。
ただ、私の見えないところで戦っている人はいるわけだから、今はその人達が怪我をしないことを祈るばかりだった。
*****
「襲撃は全て失敗しました……!」
「そんなバカな! ありえん!」
月も隠れそうな夜。隠れ家にしていた拠点で二人の男は焦っていた。
「隙を見てかかれと言っていただろう!? なぜ成果が一つも上がらない!?」
「そ、それが、なぜか襲撃する前に向こうの護衛にこちらが襲われてしまい、ほとんどが捕縛されてしまい……」
「……それも預言の力なのか? こちらが襲うために潜伏している場所もわかるというのか……?」
「恐らく……」
勘違いをしている男達だったが、この状況はそう思わないとやっていられなかった。
「ど、どうしましょうか?」
「どうしようもないだろう! まさかあれだけ用意したのに壊滅とは……一度帝国に戻り作戦の練り直しだ……」
「こっちに残っている者達は?」
「何か事件でも起こすように指示だけ出して後は捨ておけ。奴らも帝国の為に働けるなら喜んでやるだろう」
「はっ、かしこまりました!」
男は慌ただしく部屋から出て行く。指示を出していた男もこの拠点を捨てる必要があるため荷物をまとめようとした。
その時だった。
「た、たた、大変です!!」
さっき出て行ったはずの男が大慌てで戻ってきた。何かと騒がしい彼に夜逃げの準備をしていた男は舌打ちする。
「なんだ、また悪い知らせか?」
しかし、その顔も慌てた男の報告により青くなることになる。
「か、囲まれています! いつのまにか兵士が周りに……!!」
「……バカな」
その男が最後にちゃんと聞いたのは大勢の足音が詰め寄ってくる音であった。
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