30.勝手に解決されてもそれはそれで困る
今更ですが、この物語では悪役っぽい相手はいますが、大体めちゃくちゃ強い味方によって粉砕されますので、よろしくお願いします(?)
攫われるイベントは村に向かう途中で発生する。乗っていた馬車が謎の集団に襲われてステラは連れ去られてしまうのだ。
そのまま監禁されてしまったところを王子に助けられて、そのまま何故か一緒に村に戻るまでが一連の流れである。村に戻った後、王子という身分を隠した彼とステラは一緒に過ごすことでお互いをやっと意識し始めるわけである。
つまり、襲われるなら村に戻っている今のタイミングのはず……だった。
ガタン、とスムーズに動いていた馬車が停まる。
「しばらくお待ちください」
「…………」
しばらく馬車の周りで人が動く音がする。この場から離れて遠くに行くのは何となくわかるけど、それからしばらくするとその音が戻ってくる。そして私の乗っていない馬車が動き出す音がした。
これがさっきから2回起きている。今回の件を含めれば三回目。
「あの、さっきから停まった時なにを……?」
「気になりますか?」
「ええ、まぁ」
気にするなという話が無理である。例えば魔物とかだったら多少なりとも戦う音が聞こえるはずなのにそういうものは一切聞こえていない。音としてわかるのはさっきも言ったけど私の乗ってない馬車が離れていく音である。
「ステラ様は光魔法の保有者ですから、ラティーナ様からはただ護衛をするようにと言われましたが守るだけでは意味がないと思いまして」
「思いまして?」
「物資に関しては一任されました。ですので馬車をたくさん用意しまして」
「しまして……?」
メイドさんはニッコリと笑って言った。
「賊は全て捕えて送ってしまえばいいと結論付けました」
「えぇ……」
色々と予想はしていたが、その中でもあまりにも力技過ぎる。
「いや、大丈夫なんですか? そんな危ない事……」
「今回護衛についているのは精鋭の方なので心配はいりませんよ。それに捕縛してしまえばこちらのものですから。必ず無事に村まで送りますからね」
再び馬車が動き出した。今ので3台目であり、最初5台あった馬車は私の乗っているのを含めてあと2台だけになった。馬車に襲撃者を詰めて送るにしても護衛の兵士を割かないといけないだろうし、そこら辺は大丈夫なのだろうか。
「ちなみに馬車が足りなくなったらどうするんですか?」
「その際はお気の毒ですが……いなかったことになりますね」
無表情で言われると逆に怖い。
「あー、やっぱりそうなるんですね……じゃあ護衛の数は大丈夫なんですか?」
「そこは心配なさらなくても大丈夫です。足りるようにちゃんと考えて配置してありますので」
「は、はぁ……うわっ」
また、ガタンと馬車が停まった。
「今日泊まる予定の村は近いので、これが最後であることを祈りましょう」
「…………」
まったく心配する様子のない彼女に最早何も言うまいと私は思考を放棄した。たぶん、襲って来ようとしているのは原作通りの帝国の者達だろう。そして、それらは今のところうまく対処されているようだった。
結局のところ、私は一度もその襲撃者たちの姿や声を聞くことなく、宿泊する村に着いたのであった。
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