3.編入生との邂逅
本日2話目の更新です。お気を付けください
いきなり横から声をかけるなど褒められたことではないが、リーティアは突然現れた彼女たちを見て姿勢を整えた。
「お姉さま方、ごきげんよう」
「ごきげんよう。無事に進級できて何よりだわ。公爵令嬢なのですから当たり前だけど」
現れたのは学園が上の令嬢達であった。その先頭に立っている令嬢も中々大きな地位を持つ貴族の娘であり、この学園に入学してから何かと嫌味と同時にリーティアに突っかかってくる相手だ。もちろんあまり関わりたくないことは言うまでもない。
しかし、上級生に対して敬意を表するのがこの学園の習わしであり無下には当然扱えない。
こういう相手は強く出れば出るほどギャンギャン騒ぐことをリーティアは知っていた。
話していたクラスメイトはそんな相手がいきなり威圧的に話しかけてきたものだから怖気づき小さく震えている。リーティアはそんな彼女を自然と後ろに回して、彼女らと向かい合った。
「お姉さま方も進級おめでとうございます。今年1年もご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「ふん、相変わらずむかつく態度ね。でもいつまでそんな風に余裕を保っていられるかしら?」
「それは……どういう意味ですか?」
勝ち誇ったような笑みで彼女が答える。
「貴女も編入生については知っているんでしょう? なんといっても光魔法が使えるみたいだし、王家が囲い込むために編入させたに違いないじゃない。ふふ、私が言っている意味がわかるわよね?」
「王家が考えもなしにそんなことをするとは……」
「わざわざ村に住んでいた平民をここに入れるなんてそうとしか思えないじゃない。王太子殿下と年も同じのようだしねぇ? 今から貴女の焦る顔が目に浮かぶようだわ」
つまるところ彼女は王妃候補筆頭のリーティアに嫉妬しているのであった。今回、それを脅かす存在が編入してくると知ってこうして煽りにきたのだろう。
しかしリーティアは表情を変えず応える。
「ご忠告ありがとうございます。王妃になるかどうかまだ決まってもいませんが、どのような状況が変わろうともただ私はレイファール家の長女として恥ずかしくないよう精進します。では、そろそろ教室へ向かわないといけませんので、無礼は承知ですが失礼致します」
一息にすらすらと言葉を並べて会話を断った。その態度が気に入らなかったのだろう対峙していた令嬢はキッと睨みつけてきたが、それすら軽く流すと後ろでオロオロしていたクラスメイトを促してその場を後にした。
「チッ、気に入らないわ。地位が高いだけで調子にのって」
盛大に聞こえた舌打ちと暴言は聞かなかったことにして。
「……ご、ごめんなさい。私、後ろで震えるばかりで」
そんな彼女たちの視界から姿を消して、今日から通う教室に近づいたところでさっき庇った彼女が申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいえ、元はと言えば私に用があったみたいですし、巻き込んでしまいました。謝るのは私のほうですわ」
「そんな……! リーティアさんが謝る必要なんて……っ」
「とにかく今は教室に行きましょう。 流石に初日からホームルームに遅れるのは心証がよろしくないでしょうし」
「リーティアさん……ありがとうございます」
リーティアからすれば貴族として当たり前の対応をしただけだ。それでも感謝されることは嬉しいことだった。気にしないでくださいと微笑み彼女と共に教室に向かった。
しかし、何だかんだ彼女も「光魔法に目覚めた少女」がずっと気にはなってはいた。
(本当にどのような方なのかしら。野蛮ではなくて、あとは悪口も言わない……せめて普通の方だといいのだけれど)
どちらにせよ、今日のホームルームで全て明らかになる。今は落ち着いてただその時を待つだけだった。
そして、ホームルームが始まった。担任の先生も一年の頃と変わらない女性の先生で、開口一番編入生のことに触れる。
「えー、皆さんの中には既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、編入生としてステラさんがこのクラスで皆さんと学ぶことになります」
静かに、しかし教室内が僅かにざわつく。
いよいよ、邂逅することになる。流石にリーティアも周りの雰囲気にちょっと呑まれて緊張の面持ちでクラスの入り口に目を向けた。
そして……
「あ、えっとですね……皆さん気になっていたでしょうけどステラさんは体調を崩しているらしく、本日はお休みとのことでした」
「た、体調不良……?」
まだ会うことは叶わなかったのだった。
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