28.里帰りの準備
「ふわぁ……」
次の日。連休初日の朝、私はゆっくりと起きた。大体昼前ぐらいだろうか。例え世界が違っても夏休み一日目は嬉しいものだ。
「何か食べるか」
伸びをしてのっそりと起きて食堂に向かう。残っている生徒もいるので働く人は少なくなっているがちゃんと機能しているのは嬉しい。
受付に行くといつもいる食堂の職員のおばちゃんがにこやかに出迎えてくれた。
「あら、ステラちゃん。今起きたの?」
「えへへ、まあそんなとこです。おはようございます」
「はは、もうお昼だよ!」
食堂はまばらだ。生徒はいるがその殆どがお茶をしている程度でどうやら食事の時間ではないらしい。
「朝食ってまだ出ます?」
「大丈夫だよ。準備するから待ってな」
「はーい」
基本的にこんなフランクな会話はしない。相手は私のような例外を除いて貴族だから当たり前だ。だけど、私がさぼっている間時間をずらして食堂に来ていた時にポツポツ話したりしていたらこうなっていた。
まあ、私は平民だし話しやすいんだろう。
まばらだったおかげですぐに食事が運ばれてきた。前も言ったと思うけどさすが貴族の学園、ご飯が美味しいのはありがたい。
そういえば、リーティアさんとの約束ってどうやって連絡とればいいんだろう。
「あ、いたいた。ステラちゃん」
「んぐっ?」
そう思っていたら声をかけられた。相手は寮の管理人さんのお姉さんだった。入寮する時に話したぐらいだが、気さくで話しやすい印象を持っている。
「食堂の人にね、もし起きてきたら教えてくれって言ってたのよ。ずいぶん遅かったのね」
「すいません、休みだったので……おはようございます」
「もうこんにちはだけどねぇ。これレイファール家から今朝届いたから渡しておくね」
「え? 今朝?」
話したのは昨日の夜である。仮に今朝早くに帰ったのだとしてもあまりにも早すぎじゃないだろうか。管理人さんから渡されたのは封筒である。しっかりレイファール家の家紋が押されているからまじっぽい。
「わざわざありがとうございます」
「いいのよー。ステラちゃんは学校に残るの?」
「いえ、一応帰る予定です」
「そうなのね。まあ、大丈夫だと思うけど怪我とかには注意するのよ。何かステラちゃんボーっとしてる時多いから」
「あはは……気を付けます」
もしかしたら攫われるかもしれないという冗談は言えなかった。とにかく管理人から手紙を受け取った私は朝食を済ませて部屋に戻って開けてみる。
そこには拝啓から始まり硬い文章が長々と続いていたので要約すると「色々と対策をするので明日の朝に学園前に集合するように」ということであった。
ということは……
「きょ、今日は寝て過ごせる……!」
最近学校とかめっちゃ頑張ってたし、これはご褒美である。ベッドに飛び込んだ私はすぐにスヤスヤ体制に移行する。食後? 知ったこっちゃないね。
「真昼間から寝るの……最高……」
そうして至福の一日を過ごした私は次の日の朝、何とか目を覚ますことが出来た。昨日たっぷり寝ていなかったら難しかっただろう。
荷物は既にまとめておいたのでそれを持って寮を出る。あの手紙の内容には詳しいことは書かれていなかったが一体どうするつもりなのだろうかと、考えながら入学する時に通った門に近づいていくとあることに気が付いた。
「なんか馬車多くない?」
普段の状態を知らないから何とも言えないけれど、連休二日目でこんなに複数台停車しているのはおかしくないだろうか。
(いや、まさかね……)
恐る恐る門を通って外に出る。そしてそこには見知った人が立っていた。
「……あれ? リーティアさんのメイドさん?」
「ステラ様、お待ちしておりました」
リーティアさんお付きのメイドである。そしてその後ろには武装した……兵士?
「あのー、誰かお出迎えですか……?」
一応……一応だけど聞いてみた。
「いえ、先程も言いましたがステラ様をお待ちしておりました」
「後ろの方々は……?」
「はい。このたびラティーナ様およびリーティアお嬢様より命じられ、ステラ様護衛の任に就いた方々です。私は、この旅の間ステラ様の身辺のお世話をすることになりました。どうぞよろしくお願いいたします」
「…………は?」
どうやらとんでもない里帰りになりそうである。昨日と打って変わって、私は頭を抱えることになった。
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また誤字脱字報告もいつもすみません、本当に助かっていますorz
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