25.夏休み(?)の始まり
この学園、一年の中で二回長期休暇がある。
簡単に言えば夏休みと冬休みである。日本製のゲームだと言ってしまうとアレだが、やはりそういう文化は似通っているものだ。
ただ、お盆などの文化はなくこの世界ではただの連休になっている。この学園の生徒は大体実家に帰ったりするのが殆どで、その例に倣って私も一度帰るつもりであった。
「というわけで皆さんもこの学園の生徒であることを忘れず、休みを有意義に過ごしてくださいね。あと、羽目を外しやすい時期ですが決して悪事に身を染めない様に自分を律してくださいね」
ウェール先生による挨拶が終わればいよいよ連休スタートだ。当たり前だけど皆どこかソワソワとしている。解放感のせいだろうし、何となくその気持ちはわかる。
「では、皆さん。またちゃんと全員そろって次の学期を迎えましょうね!」
先生のその言葉で一斉に席を立ち教室が騒がしくなった。何だかんだ私も初登校した日から何とか頑張って登校できた。まあ、別に前世もさぼっていたわけではないし、授業はあんまりまともに聞いていなかったかもしれないが、それでも頑張ったのである!
「ステラさん」
「あ、マリーシアさん」
他の生徒と同じく浮足立っていたところに来たのは相変わらず藍色の髪が綺麗な彼女だった。あれから長い時間がたったわけではないけれど、それとなく話す機会が多くそれなりに仲良くなっていた。
割と貴族ムーブする人もいる中で彼女は物静かながら私含む誰にでも丁寧に話してくれるから変に緊張しないですむ。
「何だかんだ登校するようになってよかったです。魔法も無事に少しずつ使えるようになってるみたいですし」
「その節はどうも」
そう。私とて授業中安眠を貪っているわけではない。なんと、遂に魔法を使えるようになったのだ。これは割と自分でも驚いたのだが学んだ通り力を込めたら出たのだ、光の玉が!
いや、本当に光るだけの玉が浮いているだけなんだけど……それでも前世を知っている分凄いと感動してしまった。
「ステラさんはこのお休みは実家に?」
「うん。一応顔だけ見せとこうかなと」
「そのほうがいいですね。ご両親も寂しく思っているでしょうし」
「うーん、どうかなぁ」
こっちの世界の両親は優しいけど、甘くもない。学園に行くのが決まった時も喜んで少し食事が豪華になったけど、割りとあっさり見送られた。まあ、普通の村だし美味しいものを食べさせてくれただけでも嬉しかった。
「ところで……その、リーティア様、じゃなくてリーティアさんのことなんですけども……」
彼女がチラリと目線をソチラに向ける。
「うーん……そうなんだよねぇ」
マリーシアさんはリーティアさん大好きである。それはなんというか、アイドルをおっかける好きというか、ファンクラブとかあったら会長とかそういう感じの好きだと思う。
だから、よく一緒にいるところを見たり、もしくは3人で話したり食事をしたりすることも多いわけだが、とにかくこの前から彼女はおかしい。
「………………っ」
私が目を向けると絶対に逸らす。明らかに「何かありますよ」という雰囲気だというのに結局今日までその理由は判明していなかった。何か悩んでいるのかわからないけど、間違いなく私が絡んでいるのだけは明確だ。
「はぁ、憂いのある表情も素敵……」
マリーシアさんが変な方向にときめいているけど、これを放置して里帰りするのは精神上よろしくない。
(しょうがない……夜、行くか)
幸いにして部屋は知っている。出発は明日なので今日の夜に私は彼女の元を訪れることにした。
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