2.学園と編入性と噂
一話分が長くなりましたので、2話にわけて投稿しておりますのでお気を付けください
広大な大陸の中央からやや西に行ったところ、そこにリステラント王国という国がある。
一年を通して温暖な気候の地域であり自然豊かな地形にも恵まれ、さらに西に行けば海も臨める。
地理的にも様々な場所に道が伸びるため行商の行き来がさかんであり、街は常に活気に溢れており、栄えている国といってまず間違いはなかった。
昔には大きな戦争なども起こりはしたが、それももう記録が薄れるほど古い話だ。
もちろん他国との小競り合いや賊による被害などはなくなることはないが、国として今は平和な時を謳歌していた。
そんなリステラント王国には名物と言えるくらい多くの学園が存在していた。
「文字の読み書きや初歩的な計算」など、基礎教養を中心とした国民の子供向けの学園から始まり、「商業や流通」などに商人として学ぶことの出来る学園、「騎士や国の警護隊」として礼儀や武術を学ぶ学園から、果ては「冒険者」としてギルドに登録し生計を経てる者用の学園など、大陸に存在する国の中では珍しいほど多岐に渡っていた。
それら多くの学園が建てられたのはそこまで昔の話ではなく、ここ何十年かの間で行われたことだった。その創立に関してはとある貴族の女性が提唱したことが始まりという話は一般市民にも知れ渡っているが、それの確たる証拠はないため詩人の作り話であるとか女性の地位向上のため流された噂だとか憶測は様々な変化を取りながら広まっていた。
まだ完全に教育が行き渡っているわけではないが、基本的に誰にでも開かれていることや、基礎教育の部分に関しては国が教育費を負担するために概ね好評に受け入れられていた。
閑話休題。
そんな数あるうちの学園の一つ、クリティア学園という貴族階級の子息令嬢が通う学園があった。学ぶことは貴族としての振る舞いや責務をメインに、そこから領地経営や外交、治安維持や土地の整備などとにかく多様だ。
貴族と一括りにしてもその階級や立場によって役割に違いがあり、そのすべてを網羅するのは流石に無理なので実際のところは未来への人脈づくりであったり知見を広めることを主とする生徒もいた。
クリティア学園は全寮制であり13才から入学し、最長で5年の間学ぶことになる。最長というのは、生徒によっては家の事業引継ぎなどの事情によって少し早めに卒業する必要がある者もいるためで、そういう時は申告すれば早めに卒業することも認められていた。
そしてレイファール公爵家の長女リーティアも当たり前だがその学園の生徒であった。
レイファール公爵家は領地経営もあるが、その主たる仕事は王城全体の管理を行うことであった。流石に仕事全てを上げるとキリがないためここでは省くがレイファール家の長女としてリーティアは日々勉学に勤しむ日々を過ごしている。
そして今日は学園の始業式であった。リーティアは一つ学年を進めて今日から2年生、年齢は14才でまだ子供らしい顔つきをわずかに残しながらも、大人として成長しつつある美しい容姿と、公爵家という立場、そこに優れた魔力や教養が入り混じり、一言でいうとお近づきになりたい人はそれはそれはたくさん存在していた。
さらに人気を後押ししているわけではないが、同学年に王太子がいることもあり、周囲は将来の王妃になるのは彼女に違いないと思い、何とか繋がりを作ろうと必死ですらあった。
そんななんでも持っているように見える彼女を快く思わない生徒も当然いるが、公爵家という立場や彼女の堂々とした立ち振る舞いで出来ることは嫌味を言うぐらいしかできなかった。
リーティアは学園の広場に貼りだされたクラス表を見上げていた。クラスメイトは進学する際に大きく変わることはないが、成績などを含めて変わることもある。
確認してみればクラスメイトは一年の時とほぼ変わっておらず、見知った顔が多いことに少し安心しつつ、しかしとある名前が目に留まった。
「ステラ・フォールド……」
「ごきげんよう、リーティアさん。2年生でも一緒のクラスですね」
その名を見つめていたら後ろから声が掛けられる。振り向けば深い藍色の髪の女生徒がにこやかに微笑んでいた。
「あら、ごきげんよう。また1年よろしくお願いいたします」
リーティアに話しかけてきたのは1年の時クラスメイトだった女生徒で、穏やかで物静かな令嬢だった。
「また、一緒のクラスで嬉しいですわ。そういえば編入生の方についてはもうお聞きになりまして?」
「ええ。ステラさん……のことですよね。私達のクラスに編入されると聞いていますが」
「まあ、やはりそうなのですね。ステラ・フォールドさんって今まで聞いたことのない名前だったので恐らくそうじゃないかと……!」
物静かな彼女にしては珍しくちょっと興奮しているようだった。さらに周りに耳を傾けていれば他の生徒達もそのことに話の華を咲かせているようだった。
「なんでも突然「光」の魔法が覚醒したとか……本当でしょうか?」
「そういう嘘をわざわざ流すとは思えませんし、何より編入してくるのであれば事実かとは思いますけど」
「一体どのような方なのでしょうか……!」
「さ、さぁ……私も話だけしか聞いていないので容姿までは……」
リーティアが聞かされた内容はとある村に住んでいた少女がある日突然、「光」の魔法に目覚めたという話だ。
「魔法」……それはこの国では生活の根幹に大きく関わっているものだ。火や水、雷を生み出したり、風を起こしたり、土を耕すなど、大体の人が何かしらの属性を持ち、それを生かして生計を立てる人もいる。
そんな火や水など自然に関する魔法とは別に「光」や「闇」といったそれらにはあてはまらないものがあった。
まずこれらの魔法を持つ者は世界中を見てもかなり少ない。そのあまりの希少性の高さのため、国によっては神に選ばれた者に与えられるなどと言われ、神の使いとして崇めているところもあるぐらいだ。
リステラント王国は流石にそこまで過剰な反応はしないが、希少といえばその通りでそのまま放置するわけにはいかなかった。
他国に多額で売るために人攫いに狙われかねないし、最悪の場合その少女のいる村ごと襲撃を受ける可能性もなくはない。それだけの価値を見出すものは間違いなくいるのだから。
そういうわけで国はその少女を貴族の家に養子として迎えさせて、この学園に迎えることにした。全寮制でもあるし何より警備は厳重だ。しかも幸いにも年齢は14歳、編入という異例の形ではあるができないわけじゃない。
そんないきさつで今日からリーティアと同じ学年、さらに同じクラスに編入するという流れだった。
話していたクラスメイトは心配そうに口を開く。
「ですが、一般の方が突然通って大丈夫なのでしょうか? 勉学のこともですが礼儀作法も知らないことが多いでしょうし……」
「そのあたりは確かに苦労するでしょうけど、そこは私達が協力して支えていけば──」
「あら、そんな余裕にしていて大丈夫なのかしら?」
そうして話していたところ突然、横から高圧的な声が割って入ってきた。
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