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19.用意周到予想外

 というわけで学園はパニックに陥った。そりゃそうだ、絶対に安全だと思っていた学園内に魔物が現れているのだから。

 人の背丈ぐらいはある巨大な獣型の魔物、肌が崩れている人のような形態のおぞましいアンデッド、空を飛ぶワイバーンなどなど、こうして主観で見ると窓の外にいるのに身がすくむほど怖い。

 ただ、漫画ほど阿鼻叫喚の騒ぎにはなっていなかった。なぜなら窓から見える先ではカッチリと騎士のような服を着こんだ方々が次々と魔物を屠っていたからだ。


「え、強すぎじゃね……」


 公爵家の警護だったら確かにそれぐらい強くてもおかしくはないのだけれども、まるで最初っから備えていたぐらいの勢いで魔物を消し飛ばしている。獣は切り裂かれ、アンデッドは消し飛び、ワイバーンは様々な魔法に撃ち抜かれ地に墜ちていった。


「おお、すげえっ!」

「あんな強そうなのに……なんてかっこいいのかしら」


 その様子に男子は興奮し女子はうっとりである。にしても一体どれだけの護衛を用意したのだろう。騒ぎがさっきより大きくなっていないのは恐らく魔物を片っ端から消しているに違いない。


「ここまでぴったりタイミングが合うとは思わなかったけど、何とかなりそうですわね」

「り、リーティアさん」

「やっぱり貴女の予言通りだったわね。何とか間に合ってよかったわ」

「いや、預言じゃないんですけど、確かにタイミングは最高……」


 もしも、彼女の母が来ていなかったら対応することはできず、漫画通り……しかも私が癒しの魔法を使えないからさらにひどいことになっていたはずだ。けっこうギリギリなラインであったことに気づいてゾッとした。


「いやぁ、本当に今回といい前回といいリーティアさんには本当に助けてもらってます。南無南無」

「なによそれ……まあ、このままなら何とか……」


 そして安堵の息。このままいけば無事にこの事件は終わりそうである。

 しかし、そんなにことがうまく進むはずはなかった。


「きゃああああっ!?」


 外を眺めていた私達の後ろから悲鳴が上がった。そこにはドロドロに溶けたような人型のアンデッドが3体立っていた。


「うわっ! 入り込んでたのか!?」

「お、おい! こっちくる!」


 動きは遅いけれどその淀んだ目には怯えている生徒の姿がしっかりと映っていた。そいつらの強烈な腐臭と肌からただれ落ちた謎の体液は床に落ちるとジュゥと嫌な音を立てた。それだけでクラスメイト皆は恐怖にかられた。

 たった一人を除いて。


「アイスアロー!!」


 すぐに動いたのは私の隣にいたリーティアさんだった。短い詠唱から鋭い氷を発生させ、それを勢いよく飛ばす。

 そして、それは一体のアンデッドに何本も刺さる。思わず「やった!」と叫んでしまったが、そんな生ぬるい相手ではなかった。


「う、うそ……」


 リーティアさんの驚く声で私も気づく。

 アンデッドの頭や胸、肩、足に氷が深く刺さっているのに動きが止まらない。足取りは遅いがそれでもまっすぐこちらに来ていた。


「くっ、だったらもっと強い魔法で……」


 すぐに我に返ったリーティアさんが唱え始めるがもう目の前まで来ている。教室の端に追い込まれたせいで皆に逃げ場はない。


「い、いやあああ!!」


 一番近くにいた女生徒に倒れ掛かるようにアンデッドがよろめきながら近づいてくる。その子は恐怖からか尻もちをついてしまい体が動かないようだ。


 な、何とかしないと。


「あ、れ……?」


 そう思った私は気が付いたらなぜかその生徒を庇うように間に入り込んでいた。


「なっ、ステラさん!?」


 私は思った以上に正義感の塊であったのだろうか。それとも主人公的精神が何故か働いたのか。そんなキャラじゃないのに。

 アンデッドに襲われるとどうなるんだろうか。歩いたところが腐食していたし、どんでもなく凄い痛みが来るのかもしれない。


「…………っ」


 どうしようもない。せめて庇ってしまった生徒まで被害が及ばないよう……そして半分は恐怖心から彼女に強く抱き着いて目を閉じた。


 瞬間、巨大な雷鳴が轟いた。


「ぴっ!!?」


 予想だにしない鼓膜が破れそうな程の音に身がすくむ。何が起きたのかわからない。しかし……その後は不思議と何も起きなかった。痛みも衝撃も感じないし、みんなの悲鳴も止まっている……?


「……あれ?」

「みんな無事か!?」


 流石におかしいと思い至りゆっくりと目を開けると同時に教室に響く声。何度か聞き覚えのあるその声の主は……


「あ、アルティス先生???」


 今、絶対にここにいるのはおかしい人であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ステラさん、案外に凄いお人好しですね〜 そしてまさかの犯人が別に居る。しかしあの後味悪いのゲーム事情が無くなるのは割と良い事かもしれない。
[一言] 一番いいところで止まった
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