16.協力要請難航中?
協力者が必要だ。先生を止めるか、それとも魔物が出た際に対応できるようにするか。
「はぁ、なんでこんな色々考えないといけないんだろう」
初登校したその日の夜、ベッドの上でスライムのように溶けながら考えていた。普通に何も知らなければ気楽に過ごせていたのになまじ知っているから、放置することが出来ない。
「とりあえず書いたけど、書いたところでどうすんだこれ……」
同じくベッドの上に放り出されている今日色々と書いたノートを見た。とりあえず魔物乱入事件についてわかることを書いてみたが、いまだにどうしようか悩んでいる。
「せんぱ~い……なんでこんなことになったんすかねぇ」
先輩は本当に面倒見がよかった。家もけっこう裕福で友達もたくさんいるのにどうしようもない私をよく構ってくれて、家に帰りたくない私をよく部屋に置いてくれていた。
『懐いた野良猫みたいに思ってるから気にしないでくつろいでよ』
冗談混じりにそう言われたことは覚えている。確かに学校でも先輩の家でもよく寝ていたっけ。今となっては薄れた記憶だけど先輩の部屋は当時の私にとって唯一心安らぐ場所だった。
「……はぁぁ」
構ってくるという意味では先輩とリーティアの姿は重なる。容姿はまったく違うけど、何だかんだ気を許してしまうのはそういうところに懐かしさを感じているからだろうか。
……っと、今はそういうことを考えている場合じゃなかった。とにかくまず協力者……『学園に魔物が召喚されて暴れるんです!』という言葉を信じてくれる相手。
(……………………いなくね?)
私はスヤスヤタイムに入った。
*****
「ふぅ……」
今日学んだことの復習を終えて、私は大きく伸びをする。
「お疲れ様です。こちらハーブティーをどうぞ」
「ありがとう。もう夜だから戻っていいわよ?」
「はい。それでは本日は失礼致します」
お付きのメイドの淹れてくれたお茶に口をつけてそう言うと、彼女は一礼して退室した。昔からお世話係として付いてくれている彼女だが、いつも無表情で感情はあまり出ない。長い付き合いだから実際よく気を使ってくれているのも知っているのだが、もう少し愛想よくてもと思わなくもない。
「まだ寝るような時間ではないですし、本でも読もうかしら」
今日はやっとステラさんが登校してくれた日。相変わらず怠そうにしていたが何とか一日終えてくれて何よりだった。明日からも来てくれることを願うばかりだが──
(昼食の時……どうして急にアルティス先生のことを聞いたのかしら……)
彼女はあまりにも突然にそんなことをマリーシアさんに尋ねていた。あまりにも不自然で違和感しかなかった。
しかもその後彼女は意味深に私を見つめていた。あれには何かメッセージはあったのではないかと考えてしまう。
「…………気になりますわね」
彼女の光魔法による「預言」。あれが何かを察知したのではないかとどうしても思ってしまう。今のところあれを知っているのは恐らく私だけだし、もしかしたら何か助けを求めていたのではないだろうか。
「まだ起きているかしら……」
寝るにはまだ早い。しかしこの時間に尋ねるのはちょっと不作法過ぎる気もする。
だけどどうしても気になる。
「反応がなかったら戻ってくればいいだけだもの」
部屋着の上から一枚羽織って部屋を出る。この時間はあまり出歩く生徒はおらず何人かとすれ違った程度で彼女の部屋についた。
とりあえずノックをしてみるが予想通り反応はない。
「流石に寝てますわね。しょうがないですから帰りましょうか……」
と、そこでドアノブに目がつく。そういえば前は不用心にも鍵が開いていた。流石に今回は……
「ステラさんあなたは本当に……」
素直に開いていれたドアに大きなため息が出た。そんな疲れていたのだろうか、それとも反応しなかっただけでまだ起きているのだろうか、どちらにせよ鍵は閉めさせないといけない。
「ステラさーん? まだ起きていらっしゃい……」
そうして部屋に入った私の視界にはベッドの上で寝息を立てる彼女の姿が入ってきた。本当に無防備でまたため息がでた。
「ステラさん……ちょっと起きて、せめて鍵は閉めてもらわないと」
「う~ん……」
軽く揺さぶってみるがゴロゴロ動くだけで起きる気配がない。ここまで寝入ることが出来るのは最早才能かもしれない。
「はぁ、どうしたものかしら……ん?」
どうにかして起こしたい私はそこで、彼女の横に広げられたノートを見つけた。
意外と綺麗な字で書かれているその文字は私の目にしっかりと映し出された。
「魔物乱入……事件……?」
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