11.悪役令嬢はどこに? そして私は預言者に
今週は激務のため、投稿時間が大体これぐらいになるかと思います・・・すみません!
そんなわけで針の筵を歩きながらとある部屋の前まで王子様とやってきた。
変な噂とか流れないように祈るばかりだ。
「さて、ここのはずだけど」
オルソン様が部屋をノックすると静かに開く。中から出てきたのは……メイドさんであった。
「やぁ、お見舞いに来たのだけど取り次いでもらえるかな」
「……少々お待ちください」
メイドさんは私達を見ても動揺せずに頭を下げると部屋に戻っていく。私はともかく王子を見てまったく驚かないのは凄い。メイドとしての嗜みなんだろうか。
そのメイドさんはすぐに戻ってきて扉を大きく開く。
「どうぞ、お入りください」
抑揚のない、しかしはっきりと聞こえる声だ。王子はそのまま、私はペコリと頭を下げて部屋に入った。
初めて入る彼女の部屋は思ったほど物は多くなく必要なものだけが揃っている感じであった。
「オルソン様……それに、ステラさん……貴女が一緒に来るのは予想外でしたけど」
彼女はベッドの上で上半身だけ起こしていた。少し元気がなさそうではあるが、辛くはなさそうだった。
「やあ、調子はどうかな。お見舞いに来たんだけど彼女とは偶然廊下であってね」
「まだちょっとふらつきますが大丈夫です。それよりステラさんが廊下に……? 信じられませんが」
ちょっと引きこもりすぎて訝しげな目線が飛んでくるが事実ではある。しかし、この二人の間で何か話すのも気が引ける。
漫画の中の登場人物が揃って二人いるというのも不思議な感覚である。先輩がVRを装着してはしゃいでいたのを思い出したが、確かにこれはちょっと感動するのもわかる気がする。
「彼女もお見舞いに行きたかったみたいでね……それにしても今日のことについては本当に素晴らしい動きだったよ。君のおかげで何人の生徒が助かったことか」
「そんな……私はするべきことをしたまでで……」
「謙遜することはない。まるでそういう事が起こるかわかっているかのような対応の速さ。私は離れた場所にいたからわからないが、君のように動けたかどうか」
そういう事が起こるかわかっているか、一瞬だけリーティア様と目が合った。そりゃそうだよなぁと心でため息をついた。
その後もオルソン様とリーティア様は親し気に話を続けていたが、どこかリーティア様に微妙な違和感を覚える。
なんだろう、彼女のこの様子はどこかで見てきたような強烈な既視感が──
「さて、とりあえず無事でよかった。あんまり女性の部屋に長くいるものではないから私はお暇するよ」
「わざわざ訪問して頂きありがとうございました」
「いや、これぐらい。それに未来の王妃かもしれないんだから心象ぐらいよくしておかないとね」
そうオルソン様が言った時、一瞬リーティア様の顔が固まって、すぐに柔らかい笑顔になった。
「そう言って頂けると、光栄です」
やっぱりどこかで見たような、感じたような……
「じゃあ、私は戻るけど……君はどうする?」
「えっ、あっ、残ります」
「え?」
「え?」
あ、別のことを考えていたせいで適当に答えてしまった! 普通に一緒に帰ればよかったのに。
「そうか。それじゃリーティア嬢、安静にね。ステラ嬢もまた今度」
「え、ええ、お気を付けて」
「お、お気をつけて~」
そんなわけで王子は退散してしまった。部屋に残るのは私とリーティア様だけ……あれ、そういえばメイドさんは?
「あのメイドはもう部屋に戻りましたわ。四六時中お世話してもらうわけではないもの」
話を聞いてみれば家から一人だけそういうお付きの人を連れてきていい校則らしい。彼女は色々と身の回りの世話なんかをするメイドさんらしいのだが……
「まあ、やってもらうことは最低限ですわね。今日は私がこんな状態ですから色々とお願いしたのですけど。自分のことは基本的に自分でするべきですから」
「…………」
「な、なんですの? そんなジッと見て」
やっぱり彼女はリーティアであってリーティアではない。漫画での彼女は身の回りの世話は使用人に任せっきりだったし、何ならメイドをもっと引き連れていたような気がする。確か文句を言って校則に例外を作ったとか設定があった気がするが……
「ちょ、ちょっと何か言ってくださいませんこと?」
悪役令嬢、ではないかもしれない。オルソン様に話しかけられても喜色満面という感じではなかったし、纏う雰囲気もどこか違う。一体どこで何がどう変わっているのだろうか……
「ステラさん? ちょっと……ステラさん!?」
「うぇっ! あ、え、な、なんですか?」
と思っていたらそのリーティア様に現実に呼び戻される。彼女は呆れたように私を見ていた。
「それはこちらの言葉ですわ……急に考え込むように黙りこくるものですから」
「す、すいません。ちょっと考え事を」
「はぁ、まあいいですわ。それより貴女……!」
彼女はそう言うとビシッと私を指さした。
「まさか貴女の光魔法は【予言】の力を持っているのではなくて!?」
「……はい?」
また何か面倒なことに巻き込まれそうな予感がしてきた私であった。
いつも読んで頂きありがとうございます!
そろそろタイトル通り「躾けたいリーティア様」が出てきたりし始める予定ですので、楽しんで頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします!




