そして最後に
「ガブリエル皇子。あなたの誠意と真心を受け取りましたわ。――ですが、ごめんなさい。私にとっては、家門のほうが大事なのです」
私がそういうと、ガブリエル皇子は僅かに悲しげな笑みを浮かべた。
結局、私はガブリエル皇子からの告白を断ったのだ。
彼が本心で話してくれたと思ったから、私もまた本心で話した。
「……そうか。だが、わかるよ。俺はその家門を大事にして、俺には思いつかないような判断をする君が好きだからね」
彼の言葉には少なからず寂しさが滲んでいたが、その中には深い理解と敬意が込められていた。
「だから、君の判断を尊重しよう」
その後の私の人生は、一筋縄ではいかない戦いの連続だった。
私はその後、迎えにきたマッテオと合流した。
マッテオは私のドレスのあちこちが焦げているのを見て、大層慌てていた。
そして目が覚めたフェルナンドをつれ、ルイを助けた。ルイはフェルナンドの屋敷の、隠された地下室に囚われていた。
その後魔法契約で、敵対者だったフェルナンドを縛り、彼を死んだことにした。その際に、彼の組織の救いようのない人間をたくさん処断した。
事実上、闇ギルド『黒鴉の巣』は粛清された。
わかるものには、ラヴァルに敵対したからだということがわかるように。
――さあ。悪魔になりますわよ!
◆ ◆ ◆
それからの時間は、何とも言えない緊張感をもって流れていった。
様々な事件が起きた。
原作主人公との関わりや、他の攻略キャラとのトラブル。
それらを私は乗り越えていった。
私の家門を狙う人間を、私は徹底的に潰していったのだ。
あまりにも苛烈なその方法は、マッテオやヴォルフ、逆らえなくなったフェルナンドなどの配下によって行われた。
私の力は日毎に増し、ラヴァル領の外では「悪魔」と呼ばれるようになった。
その名声は恐怖と尊敬をもって語られ、誰もが私を避けるようになった。
しかし、その中で一人だけ、ガブリエル皇子は変わらず私を支え続けた。
ガブリエル皇子だけは、いつもと変わらず私を見つめていた。
彼は静かに私を見守り続け、私の力を認め、手助けを惜しまなかった。
彼は私に尊敬と愛情をもって接し、私が必要とする時には必ず助けてくれた。
それでも、彼は再び私に求愛することはなかった。
彼は私の決定を尊重し、自身の感情を控えめに抑えていた。
私の意志を無理に破るようなことは決してしなかった。
彼はまるで影のように私を見守り、私の道を照らし続けていた。
彼は私の存在を支え、私の生きる世界に寄り添っていた。
もはやラヴァル侯爵家の戦力は強大で、誰もが私達に挑戦する勇気を失っていた。
他国の王子から狙われた事件をきっかけとして、私は国外でも『悪魔』と呼ばれるようになった。
もはやラヴァル侯爵家の戦力は強く増し、誰もが表立って戦いを挑んでくることはなくなった。
格上の公爵家や、帝家、そして皇帝ですらラヴァルをぞんざいには扱えなくなった。
そんなある日、彼は再び私に求愛してきた。
「アデライード。俺は未だに君が好きだ。君がどんなに強くなって、どれほど恐れられるようになっても。俺から見る君は、ずっと気高いままだ。俺の心は変わらない。俺は君を愛している」
彼の言葉は深い愛情と誠意に満ちており、私の心を打った。
そして彼の瞳には、いつもと変わらない温かさと優しさがあり、私への誠実な愛情が感じられた。
「だからもう一度だけ、最後に一度だけ、言わせてほしい。俺と結婚してくれませんか、アデライード」
彼の声は静かで、しかし確固とした意志を感じさせた。
私は彼の求婚に驚き、心が揺れ動いた。
しかし、不思議と平穏な心境にもなっていた。
「ガブリエル皇子……」
私は彼の眼差しを見つめ返し、言葉を探した。
しかし、その答えはすでに私の中にあった。
彼の愛情に感謝しつつ、私は自分の道を選ぶことを決めていた。
私はずっと、心のどこかで決めていたことを、彼に伝えようと思った。
――私は、今目の前で片膝をついた銀髪紅眼の貴公子に向かって、答えを告げる準備をした。
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これにてアデライードの物語は終了になります。
約二か月、約15万字ほど、お付き合いいただきありがとうございました。
少しでも楽しめましたら、ブックマーク、評価を頂けるととても嬉しいです!
これからもよろしくお願いします!!
またそのうち新しい小説を書くと思いますので、その時もぜひよろしくお願いいたします。
この後は、書け次第、エピローグなどを投稿していくつもりです。
皆様、本当にありがとうございました。




