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狂犬令嬢は悪魔になって救われたい~婚約破棄された令嬢に皇子様が迫ってくるけど、家門のほうが大事です~【完結です!】  作者: もちぱん太郎


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44 アンナと馬車で帝宮のパーティへ向かいますわ

 私はマッテオとヴォルフ、そして傭兵団のみんなに弟を探すことを頼んだ。

 そうすると私の護衛は誰もいなくなる。

 だがそれでも私は今夜のパーティが終わるまでは無事なはずなのだ。


 フェルナンドは彼に配下を私の婚約者にするため、今夜のパーティで彼の手の者とダンスを踊らせようとしている。

 だから私の護衛よりも、ルイの捜索をお願いしたのだ。


 私は今夜のパーティのために、マナーの勉強をし、衣装を整えたりなどした。

 しかし、ルイのことが心配でなかなか集中できなかった。

 それでもやらなければならない。


 そのうち吉報を持ってマッテオが来てくれるはずと信じていた。


 だが、それが来ることはなかった。


 だんだん夜が近づいてくる。


 そしてとうとう帝宮へ向かう時間となってしまったのだ。


「……間に合いませんでしたわね」

 私がそう呟くと、メイドのアンナが口を開く。

「ま、まだ、わかりませんよ、お嬢様。きっとマッテオさんがなんとかしてくれます」


 アンナは私を勇気づけようとした後、表情を暗くした

「……お嬢様。ルイ様のこと、本当に申し訳ございませんでした……」

 ルイは彼女といたときにさらわれたため、アンナはそれを気に病んでいるようなのだ。


「大丈夫ですわ。アンナ。アンナが悪いわけではないこと、私は知っていますから」


「でも、私がルイ様をお守りできれば……」


「アンナ。あなたは、メイドなの。戦闘訓練を受けたわけでもありませんわ。それに、賊は傭兵を何人も倒してルイをさらった。であれば、アンナが止めることは不可能だと思いますわ」


「お嬢様……」


「アンナ。馬車へ向かいますわよ。マナーの本を持ってね」


「お嬢様は強うございますね……」


「弱いですわ。だからルイも守れなかったんですの。マナーの勉強をしているのだって、この先のためですのよ」


「この先、ですか?」


「ええ。ルイが助かった後のためですわ」


「ルイ様が助かった後のため……」


「ええ。私の親族にろくなのがいないことはもちろんご存じですわよね」


「はい。あの、悪徳商人マルクと同じような人たちですよね」


「そうですわ。だからもし私が帝族やほかの貴族たちから爵位を受けるにはまだ早いと判断されたらどうなるかしらね。爵位継承ができなければ、親族が代理となって領主の仕事をすることになりますわね?」


「たしかに、そうなるかもしれません」


「一応、私とルイが成長して爵位を継ぐにたるようになるまでの繋ぎということになりますわ」


「実権がとられてしまう、ということですか?」


「それもありますけれど、親族が侯爵代理をしている間に、私とルイが消えればどうなるかしら。正当性のある血筋が消えた。そして、わずかにでも血を引いた人間が侯爵代理をしていたら?」


「……その方が次の侯爵になる、ですか?」


「そうですわ。だから、ほぼ間違いなく私とルイは消されるでしょう」


「でも、マッテオさんやヴォルフさん、傭兵団の方たちは、きっとお嬢様を見捨てないと思います」


「無理ですわ。今傭兵を雇えているのも賃金を支払えてるからですわ。彼らが私たちを害さないとは思いますけれど、無給で守ってくれるなんて甘い妄想はできませんの。彼らにも彼らの生活があり、生きていかねばなりませんからね。まぁ、マッテオは残ってくれそうに思いますけれど」


「では、傭兵の方たちを騎士にすれば……」


「いいえ。彼らが騎士になっても同じことですわ。領主代理が騎士を首したらいいだけですし、下手をすれば罪を捏造されて殺されるか追い出されるか。私の仲間はすべて切り崩され、守る人間を消した後で、私とルイを始末する。ほぼ確実にそうなりますわ」


「…………そう、ですか」


「だから私は、マッテオとヴォルフたちを信じますの。彼らがきっとなんとかしてくれる。そう信じて、こちらはこちらで頑張るしかないってだけですわ」


「では、マッテオさんがルイ様を救えなかったら……?」


「その場合は、フェルナンド推薦の婚約者殿がラヴァル家を率いるのではなくて? その場合はルイが邪魔になりますわね。婚約者殿を追い出して、成長したルイが後を継ぐルートが生まれますから。ルイはほぼ殺されると思いますわ」


「そんな……。じゃあ、お嬢様もマッテオさんも、両方失敗できないじゃないですか」


「そうですわ。私が失敗すれば私もルイもラヴァル家も終わりですし。マッテオが失敗すればルイが死にますわね。私は、微妙なところですわね……。生かされたとしても軟禁コースではなくて?」


「……ああ。そんな、ひどいことって」


「だから私はマッテオたちを信じて、やるだけですわ」


 そんな話をアンナとしてから、私は馬車へと乗った。

 馬車にアンナと二人きりは初めてだった。

 マッテオがいない。

 そのことが、やけに心細く感じられた。


 馬車はゆっくりと進みだす。

 窓の外が暗くなっていくのを見ながら、不安を押し殺した。

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