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狂犬令嬢は悪魔になって救われたい~婚約破棄された令嬢に皇子様が迫ってくるけど、家門のほうが大事です~【完結です!】  作者: もちぱん太郎


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ヘンリー・ド・ノーサンバーランド

 俺、ヘンリー・ド・ノーサンバーランドはこの世の春を謳歌していた。

 アデライードと婚約破棄をしてからは、人目をはばかることなく遊ぶことができた。


 アデライードは公爵家の婚約者として失格だった。

 あいつは俺を楽しませようという心づかいが足りない。


 それは知能がなく、性格が低劣であり、付き合う価値がないということだ。

 顔は悪くはないかもしれないが俺の好みではないし、胸もない。

 出来損ないの女にかかづらってる時間がもったいない。


 そんな折にアデライードの父親が死んだという連絡があった。


 ああ、俺は天に愛されている。


 これで婚約破棄したとしても、面倒な文句を言ってくる存在はいない。


 俺はすぐに手紙を出して、アデライードを呼び出して婚約破棄をした。


 これでカロリーヌと公の場でデートできる。

 婚約者がいるのにそのようなことをしたら、外聞が悪いからだ。


 カロリーヌの艶やかな笑顔と華麗なスタイル。

 隣に連れているだけで、羨望の目でみられる。

 そのことすべてが誇らしかった。


 そんな彼女のためなら、男は金など気にするべきではない。

 俺は自分に与えられた小遣いをすべて彼女のためにはたいた。

 公爵である両親に無心をして、金をもらって様々なものを買い与えた。


 国にいくつもないほど大きな宝石や、他国で有名な高級ドレス。

 足りなかったから父親の部屋からいくばくかもらったこともある。

 だが、あんな愛らしい嫁がくるのだ。

 お金くらい出すべきだと思う。


 有名な劇団を呼び、演劇を彼女のためだけに披露させたこともある。

 そんなことをしているうちに、金をくすねていることが父親にバレた。

 頭を下げて許してもらったが、父親は許せなかった。

 将来の公爵に頭を下げさせるなんて。

 俺の父親は公爵失格だなと思った。


 逆にカロリーヌは最高だった。

 こんな最高な嫁が公爵夫人になるのなら、父親はいくらでも金を払うべきだと思った。


 そしてカロリーヌとのデートは、彼女の見た目以上に優越感があった。

 俺は親に無理やり結ばされた結婚を、真実の愛によって破棄した勇気ある公爵令息だ。

 カロリーヌとともにそのことを伝えると、若い連中はみんな俺をほめたたえるのだ。


 頭の固い父親世代は険しい顔をするが、あいつらの時代はそのうち終わる。

 なぜか少し派手な夫人は俺たちに好意的だった。

 やはり歳をとると男はおろかになるのだろう。


 カロリーヌもまた、楽しそうだった。

 鼻につく上位貴族の侯爵令嬢から、公爵令息を真実の愛で射止めた女性という扱いだったからだ。


 カロリーヌは二度は同じ服は着ない。アクセサリーも、靴も、バッグも二度は使わない。

 彼女なりの美意識なのだろう。

 俺をいつも楽しませるためといっていたが、そんなこと気にしなくてもいいのにとは思う。


 しかし、父親に小遣いを止められ、屋敷でも警備が厳しくなった。

 カロリーヌに買い与えるための金がなくて俺は困っていた。


 そこに、フェルナンドという男が現れた。

 彼は惜しげもなく金を立て替えてくれた。

 見た目は不吉だが、悪い男ではない。

 いつか取り立ててやる、と伝えたら苦笑いをされた。


 フェルナンドの金で豪遊するのもすぐにできなくなった。

 フェルナンドが金を出し渋ったからだ。

 公爵家が信用ならんのか! と叱りつけてやると、彼がすぐに素直になった。


 彼は「形式だけですから」と言って、俺に契約書を書くように迫った。

 俺の借金は公爵家が返すというものだ。

 まあ、いずれ公爵家は俺が継ぐから、書く必要すらない書類だと思った。


 初めから出せばいいのに。


 それと同時に、気分がリラックスするポーションをくれた。

 薄汚いゴミだと思った。


 ある日そのポーションを使ってみると、最高だった。


 俺はカロリーヌにもそのポーションを使わせた。

 ポーションを使ってからは最高だった。


 すぐに俺もカロリーヌもそのポーションの虜になった。

 しかしフェルナンドはすぐに代金を取り始めた。


 このころから彼は俺に対して、威圧的な態度をとるようになった。

 公爵様に逆らうなんてと怒りは沸き上がったが、だが彼に逆らうとポーションが手に入らなくなる。


 俺は、俺のことを『真実の愛を見つけた公爵令息』と扱う若い貴族たちに、ポーションを配り始めた。

 これを広めたら、その分のポーションをもらえるのだ。


 そしてある日、俺とカロリーヌはフェルナンドに呼び出された。

 彼は言う。

「あなたにはアデライード・ド・ラヴァルと再び婚約してもらいます」


 ふざけるな、と思った。

 カロリーヌも悲鳴のような怒声をあげた。


 だが、彼の話を聞くと、アデライードと婚約をすればポーションをたくさん貰えるらしい。


 ああ、そうだ。

 一応婚約だけすればいい。

 それで婚約破棄をすればいい。

 最悪結婚することになっても、形だけでいいだろう。

 俺が愛してるのはカロリーヌだけだから、彼女も一緒に住ませよう。

 アデライードは女中のようなことでもさせればいいか。


 俺はアデライードと婚約を試みる代わりに、ポーションをくれといった。

 俺とカロリーヌは数日分のポーションをもらったのだった。


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