智也と潤と明日香の日常5
容赦なく照り付ける太陽が一年で一番活発になる8月中旬。
入学して初めての試験も最初は波乱万丈で始まったが、その後は何とか自分のペースを取り戻し無事に終えた。
俺たちはそれぞれのサークル以外で学校に行く機会も無くなり、暇な時間の駄弁る場所は学食から俺の部屋へと移った。
とは言っても、3人共それぞれサークルとアルバイトをしているため必然的に会う回数は少なくなる。
今日はそんな真夏のある日の日常。
「クソ―!智也つえー!」
今日は午前中から潤が俺の家に来てゲームをしている。
俺と潤はどちらも空いてる日があれば必ずと言っていいほど会っていた。
「そういえば今日、明日香も来るんだっけ?」
「そうだな。もう少しで来ると思うけど。」
「そっか。」
「どうかしたか?」
「いや、別に。」
ゲーム中、区切りの良いタイミングで明日香の話題を始めた潤。
いつにもなく歯切れが悪い潤。
「何か変だぞ。どうした?」
「智也。お前明日香の事好きか?」
「え!?いやいやいや!」
潤の突然の言葉に動揺してしまう。
「新入生歓迎会の時に智也が明日香に一目惚れしたような気がしてさ。」
「…」
その言葉に動揺していた俺は追い打ちをかけられてしまう。
確かに出会って最初の頃は明日香の顔がまともに見られないくらいドキドキしていた。
次第に目を見て話すことにも慣れてきて、今ではこの3人で過ごす時間がとても大切に思うようになった。
もし俺が明日香に告白でもしてしまったらどうだろう。
明日香がそれを受け入れても、受け入れなかったとしても、俺たちの関係が崩れてしまうような気がする。
それならいっそ、何もせずこのままの3人の関係でいたい。
それに、潤も明日香とはかなり仲がいい。
たまに2人がカップルに思えるくらいだ。
もし2人が付き合うなら俺は全力で応援したいとも思う。
だからこそ、俺は明日香とはこのままの関係が良い。
「違ったら悪いけど、まあ聞いてくれ。」
黙ってしまった俺に潤が話始める。
「明日香ってさ、結局ボランティアにバドミントンに軽音のサークルに入ったじゃん?
しかも喫茶店でバイトも始めてさ。周りにはそこそこ男がいるんだ。
それで聞いたことあるんだよ。
明日香も可愛いし、あの明るい性格だから結構モテるみたいなんだよ。
もし、しつこく言い寄ってくる男がいたとしたら、押しに弱い明日香の事だからOKしちゃうと思う。」
「…」
いつになく真面目な話に何も言えなくなってしまう俺に、潤が続ける。
「だからさ、もし智也が明日香の事を好きなら応援したいと思ってさ。
もし振られた時のことを考えてるんなら大丈夫だ。
俺は何が何でもいつも通り3人で過ごす。これは絶対だ。」
まるで心を見透かされているようだった。
自分が誤魔化していた感情に、逃げていた気持ちに、俺の代わりに潤が向き合ってくれていた。
「潤はさ。明日香の事、好きじゃないのかよ。」
「好きだよ。友達としてな!
あ、それと、もし2人が付き合ってもこれは変わらないから覚悟しろよ!」
二かッと笑った潤の顔はいつもの潤だった。
「さあ、智也!続きやろうぜ!次は負けないぞ!」