智也と潤と明日香の日常3
春の心地良い空気が表情を変え、暖かく包んでくれていた風は、容赦なく照り付ける太陽の熱を運んでいる7月下旬。
多くの大学生はその暑さの汗と、試験とレポート提出期限の焦りの汗が出てくる。
俺も大学で初めての試験に向けて、必要以上に勉学に励んでいる。
潤と明日香もきっと同じくらい勉強していると思う。
明日は試験初日。
試験前日で学校が休みの今日、俺は初日の試験に向けて、家で一人で自分の家のテーブルに向かっていた。
午後からは潤と明日香が家にやってくる。
皆で集まって勉強した方がお互いの弱点を補い合えるとの潤の提案を受け、俺は一人での勉強にラストスパートをかけている。
ピンポーン
時刻は午前10時30分。
「ん?誰だ?まだ午前中だし二人はまだ来ないはずだ。」
「よお!智也!」
玄関を開けると潤が屈託のない笑顔で立っていた。
「え!?だいぶ早いな。」
「まあまあ!細かいことは気にしない!」
若干呆れつつも潤を部屋へ招き入れる。
「これ、差し入れ!」
潤はジュースやお菓子が満杯に入ったビニール袋を差し出してくる。
「こんなにいっぱい、いいのか?」
「当たり前だろ!今日は頑張ろうぜ!
…あと扇風機とコップ借りてもいい?暑すぎる!」
まあ抜けてるところはあるが、潤は本当に男気があるというか良い奴というか、カッコいいよな。
そんなことを思いながらキッチンにコップを取りに行きリビングへ戻ると...
ゲームソフトがしまってある棚を潤が凝視している。
「なあ智也。ちょっとだけ…」
「ダメだ。」
ピンポーン
時刻は13時20分
再び智也の家のインターホンが鳴る。
俺が玄関を開けると、急いで来たのか少しだけ息を切らした明日香が立っていた。
「ゴメン智也くん!少し遅れちゃった!」
「あ、ああ。き、気にするなよ。」
「待たせちゃったら悪いと思って急いじゃった!上がってもいい?」
「あー、ゴメン。今ちょっと散らかってて…。ちょっと掃除してきてもいい?」
「え?でもその靴って潤くんの靴じゃないの?」
玄関にある潤の靴を明日香が指さす。
「あ、あー、うん。そうなんだけどさ…。結構散らかってて…。」
「智也くん何か怪しい。潤くんといかがわしいことでもしてたの?」
「…!そんなこと絶対ない!」
突然の明日香の言葉に少し過剰気味に反応してしまう。
「それじゃあ大丈夫だよね!お邪魔しまーす!」
半ば強引に入った明日香はそのままの勢いでリビングの扉を開ける。
明日香の後ろにいた俺の目には明日香越しに、テレビゲームをやっていたであろう形跡、テーブルの上に雑に置かれたお菓子のごみがいくつか、ソファーに全身をゆだねスマホをいじりながら焦った顔でこちらを見る潤の姿、が見える。
「二人とも…」
俺と潤は明日香にちょっとだけ怒られた。
16時ちょうど。
「ウノストップ!!!やったー!これで私の4連勝だね!次は何する!?」
俺たち3人は似た者同士らしい。