「はじまりのはじまり」
【なんで?】【ごめん。何が悪かった?】
彼女、いや元彼女からの返事はない。
携帯画面には自分が送信したメッセージしか写っていない。
『なんでだよ! 神さま! 俺なんにも悪いことしてねえだろ!!!』
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「いるよ。君の目の前にいるよ〜。神さま。」
「ふざけてないで、次にいきますよ。モヒ。」
1Kの間取りの部屋に男が3人。しかし嘆いていた男には目の前にいる2人が見えていない。
「こいつで今回は達成か。」
「僕は恋を叶える“運命”を見つけて達成したいですよ。」
「そんな“運命”胸糞悪いだろ。ロング。」
2人は部屋を出ていき、玄関の扉を開けるのではなく、すり抜けて外へ出た。
「今日は新人くんにルール説明だったな。」
「はい。それをするだけ、一回分の“運命”を達成できますから。」
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「ここはどこだろうか? 交差点の真ん中?」
「ん、うわああああああああああ。」
車に轢かれた。が、転けただけで何も起こっていない。
「体をすり抜けてる?」
夢を見ているのか、もしくは幽霊にもでもなったのだろうか。
周りには普通に人が往来しており、現実の世界には違いない。
頭の整理ができず、呆然としていると目の前に男が2人立っていた。
「おう、新人!天国へようこそ!!!」
「天国ではないですよ。ここは。」
「そうだな。どちらかというと地獄だな。いや、その狭間か。」
「初めまして。新人さん。さっそくですが、ここについて簡単に説明すると、現実の世界で生きている人間の“運命”のお手伝いをする場所です。例えば恋人との出会いや、何も無いところで転けたり、事故に遭ってしまったり、大方この世界の人々が関与しています。」
「で、ルールが一応この世界にはある。オレらもまだ詳しくはわかっていないが、とりあえずこれを守らねえと”消える”ってことは覚えとけ。」
「ルールは簡単です。左手に描かれている時計が一周するまでに、右手に描かれている数字のカウントを達成する。ただそれだけです。」
自身の両手に目をやると、言われた通り左手には数字のない長針のみの時計、右手には(0/3)と描かれている。
「まあ、あとはやりながら覚えていきな。ここでは腹も減らねえし、眠らなくてもいい。そのルールさえ守っとけば、そこそこ楽しめるだろうよ。」
頭が追いついていない。何よりここに来る前の記憶が曖昧だ。
「あとは頑張れ。じゃあな。」
男2人の右手のカウントが(11/10)になるのが見えた。
「待ってください!」
「あー、オレらの名前だけ教えといてやるよ。こいつは”ロング”、そしてオレが”モヒ”。てめぇは”ネグセ”だな!」
この世界ではそれぞれの髪型で読んでいるのだろうか。
”モヒ”と”ロング”は気づいたら見えなくなっていた。