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02.許してはならない



王城に向かう馬車に揺られながら、隣に座る父に視線をうつす。

アラフォーには見えない若々しい父は、若い頃『目を合わせたら男性でも孕む』だとか『精気が吸いとられる』だとか言われていた、とは屋敷の使用人談。魔性の妖怪みたいな言われようである。

母を見たことはないが、妖精のようだったそうだ。肖像画で見ても美しい女性だとは思うのだが、どこか他人事のような気がする。

しかしまぁその妖怪と妖精の子供は、中身がオッサンだというのだからカオスである。


「今回はデビュタントだから王家に挨拶せねばならん。仕方ないんだ。今回だけだ、次からはこんな婚約者を漁るような場には出なくていい」


父は苦い顔で言った。

なるほど、今まで舞踏会やパーティーに出席せず引きこもっていた理由が判明した。

母を早くに弔ったせいか父はずいぶん過保護だ。記憶が完全に戻ってから改めて考えてもやっぱり過保護だ。だが前世も会社と家の往復しかしない半分引きこもりのオタクだったので、特に不満はない。



* * *



父にエスコートされ、会場に入る。

なんだかジロジロ見られてるのはきっと気のせいではない。


(なんだろう、引きこもりの不登校児が珍しいのか? それとも魔性の妖怪である父のせいか?)


まずは王族に謁見するらしい。

貴族の令嬢達が16歳になったので今日から社交界デビューしますよヨロシク、ってご挨拶。

夜会会場奥に三組の王族男女がいた。

国王の子供は王子殿下が二人。

どちらもいい年した既婚のオッサンだ。

これでこの世界は乙女ゲームではないと確信した。乙ゲーにおいての王道ともいえる王子様ルートがないのだ。

逆ハーのオッサン姫なんて見たくない。


武装して冒険する年若い王女がいないのは残念だが、そもそも魔王や邪竜なんて物騒なものはおらず、王女に至ってはこの国には存在しないのだから仕方ない。

エルフも獣人もいない。美少女ゲームでもなさそうだ。




謁見を終えると、父は仕事上の付き合いだとか貴族の義務だとか、大人の事情があるのだと。

社交デビューしたばかりの使えないキャサリーンには「壁の華に徹しろ」「絶対に絶対に男と会話するな」と言いつけ、父は名残惜しそうに去っていく。


(誰が好き好んで野郎と話すかよ)


せっかく美少女(※推測)になったのだ、女の子とキャピキャピ(※死語)話したい。



鼻息荒く出陣、そのわずか30分後。


キャサリーンは自分のコミュ障に打ちひしがれていた。

「ごきげんよう」の挨拶だけで令嬢たちの顔色が悪くなってしまうのだ。


(令嬢たちの胸元のあいたドレスを凝視したのがいけないのか。でも見るだろ、目の前にあるんだもの、仕方なくない?)


気持ち悪いオッサンのオーラが滲み出ているのかもしれない。

しかもこちとら年季の入ったコミュ障。会話を弾ませつつ、ごく自然に「ちょっと乳を揉ませてくださるかしら」に持っていく流れが分からないのだ。




前世でもキャサリーンはナンパなんてしたことがない。

気持ち悪いと蔑まれ続けた年月が長すぎた。

電車で隣に座っただけでちょっと隙間を空けられるような人生だったのだ、だてに童貞守ってない。

こうなったらフォローしてくれる相方を探すしかない。まずはグループ交際でもいい。


(ただしイケメンはダメだ)


せっかく女の子と仲良くなっても全員奪われてしまう危険がある。

イケメンは全モテない男の敵である。許してはならない。

前世のキャサリーンと同レベルでないと劣等感に苛まれ、協力どころではない。

さらに話の合う男が望ましい。


(しかし流石は御貴族様というべきか……)


どいつもこいつも優雅である。

たとえ顔立ちはボンヤリしていても仕草が洗練されている。雰囲気イケメンというやつだ。

こういうヤツが実は一番モテるんだ。俺は知っている。


あのご令嬢はさっき俺には引きつった顔で挨拶しかしてくれなかったのに、あのチャラ男には頬を染めている。

解せぬ。



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